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神谷圭介(テニスコート)×穴迫信一(ブルーエゴナク) 対談

11月26日(火)より開幕する新作『たしかめようのない』横浜公演に向けて、ブルーエゴナクの作品について神谷圭介さんとお話しました。観劇のご参考にぜひ!


神谷圭介さん

コントグループ・テニスコートのメンバーで、ソロプロジェクト・画餅の主宰。玉田企画、ブルー&スカイ、犬飼勝哉、東葛スポーツの作品や、NHK大河ドラマ「青天を衝け」などに俳優として出演するほか、マレビトの会の「福島を上演する」に作家として参加。ダウ90000の蓮見翔を作・演出に迎えた公演「夜衝」を玉田企画の玉田真也と共同企画した。


穴迫  簡単に自己紹介をさせて頂きます。普段は福岡県の北九州市に生活拠点を置いているんですが、劇団の拠点は北九州市、京都府京都市としていてます。神谷さんにご観劇いただいた『波間』という作品は、京都市東九条の劇場 THEATRE E9 KYOTOのアソシエイトアーティストとして初演した戯曲を、東京・森下スタジオにて東京の俳優さんと一緒にリクリエーションしたものでした。今作はそのE9のアソシエイトとして3作目、最終年度の作品となっておりまして、横浜市とのツアー公演としてスタジオHIKARIでの公演を控えております。なかなか関東圏のお客さんに直接宣伝できる機会がないので、今回は神谷さんの前作『波間』のご感想をXにて拝見しまして、それがとてもありがたい内容だったので、神谷さんのお話やお言葉が少しでもSNSなどを通して広がったらと思い、お声掛けさせていただきました。

神谷  微力ながら何かお手伝いできれば。

穴迫  ありがとうございます!神谷さんにも自己紹介をお願いしてもいいでしょうか?

神谷  僕は、テニスコートという名前の3人組のユニットでコントをやらせてもらっています。コントと言ってもお笑い芸人さんのようなスタイルではなくて、不条理やナンセンスコメディを下地にやってきたので小劇場の舞台をされている方々と割と近しい形で活動してきました。2016年くらいに「マレビトの会」の松田正隆さんに声をかけていただいて作家として参加したり、その時期から他の舞台に客演という形で出演したりだとかいうことが増え始めました。2022年からは自分のソロプロジェクト「画餅」という屋号で、客演さんを招き自分の作品を上演する活動をやってきています。

穴迫  ありがとうございます。テニスコートの時は主に神谷さんが台本を書かれているのでしょうか?

神谷  いえ、テニスコートは3人とも何か考えたり作りたいという人たちなので、芸人さんみたいな形というよりかはユニットというか。

穴迫  3人で作る。

神谷  そうですね。

穴迫  コントをずっと続けてこられて、そこで松田正隆さんの演劇論、手法みたいなものと合流していくのはどういった感覚でしたか。

神谷  初めてマレビトの会の『長崎を上演する』を名古屋で見たとき、これはブルーエゴナクの『波間』を見たときも感じたことですけど、何もない空間に何か風景を立ち上げていく作業、僕も自分が舞台をやる時もコントをやる時にもすごく感じていたことなんですけど、何かを立て込まなくても衣装を着込まなくてもその場に風景が立ち上がっていくっていう見え方の面白さっていうのが僕はすごく好きだったんですね。その純度が高いものを見たという感覚がマレビトの会を見たときにすごくあって。たまたま終わった後にお話させてもらう機会があって、松田さんがコントにすごく興味があると言っていた時期だったんですよね。

穴迫  へえ、なるほど!

神谷  そして、立教大学の授業に呼ばれてテニスコートのコントを流して色々話したりするというような機会があった後に「マレビトの会で書いてみませんか?」とお話をいただき参加する形になりました。

穴迫  なるほど、例えばお笑い芸人さんのコントは基本的には特に舞台セットがあるわけじゃなくて、衣装を凝ったりもしていない、体とアイディアだけっていうある意味でのプリミティブさが感じられる。そういうのとちょっと近い感じなんですかね。

神谷  そうですね。

穴迫  テニスコートのコントにも当初から演劇的な手法が取り入れられていたんでしょうか?

神谷  どうですかね、テニスコートに関してはそんなこともないのかな、もちろんあんまり舞台を組まなかったりとかはあるんですけど、どちらかというと不条理劇とかナンセンスコメディとかそういった舞台で行われていた笑いのエッセンスに影響を受けてやっていたという感じはあります。

穴迫  ありがとうございます。今のお話だけでも親和性を感じてくださった理由が少し分かった気がします。ちょっと具体的に『波間』のお話をできればと思うんですが。

ブルーエゴナク『波間』@森下スタジオ
(撮影:金子愛帆)

神谷  はい。

穴迫  『波間』を見に来てくださったきっかけは何だったんでしょうか。

神谷  出演されている深澤しほさん、音響の栗田カオスさんなど、僕が知っている方が関わっていたり、あとヌトミックの額田君もSNSであげてたのを見てそれも信頼できた理由かも。SNS上でビジュアルだったり公演情報だったりが結構入ってきたんですよね。それで本当に感覚的なんですけど、マレビトの会のときのような「これは自分が好きなタイプの舞台な気がする」と思って。「これは自分にとってすごく当たりな気がする」っていう勘でした。スケジュール的にもなかなか難しい日程だったんですがこれは無理してでも行こうって。

穴迫  ありがとうございます…(笑)

神谷  いえいえ(笑)マレビトの時もそうでしたけど、その時はまさか地方公演だとは知らなくて、無理矢理行ったんですよね名古屋に。それもちょっと似てたというか。でもすごく観に行けてよかったですね。

穴迫  ありがとうございます。

神谷  アフタートークでもお話されていましたが、初演とは上演のスタイルとか演出は結構変えられているんですか?

穴迫  結構変わっています。

神谷  へえ〜。

穴迫  初演の劇場は最大でも60人くらいのキャパの、いわゆるブラックボックスでした。そのため、もうちょっと演劇っぽかったいうか、あくまでスタンダードな空間演出だったかと思います。森下スタジオでの公演は初演時より会場全体もアクティングも開けていて、文字通りスタジオなので壁にドアやカーテンがあったり、この情報量をどう活かすかという演出をとても意識しました。結果としてあの空間の雰囲気が作品の抜け感を作ってくれた部分があるなと思います。

ブルーエゴナク『波間』@森下スタジオ
(撮影:金子愛帆)

神谷  それがとても好きでした。実際の空間が作品の中で語られている風景に移り変わっていくっていう、その想像の余地というか行間というか余白が僕はすごく好きでした。

穴迫  空間に個性がある方がむしろ別の景色が見えてきた時にギャップがあるというか。

神谷  そうですね。

穴迫  今回の作品『たしかめようのない』は『波間』と継続したテーマで作っているんですが、今回独自のキーワードとして実は「コント」を少しだけ意識しています。『たしかめようのない』は、人間がもはや虚実を区別することをせずに共存してしまっているような感覚が制作の出発地点になっていて、それはSNSをはじめ様々なシリアスな問題を抱えていると思うんですけど。そういった人間のナンセンスさとかそういうところに着目したときに、シリアスさだけでは語りきれない、というか、虚実が混沌とする時代において「この上演そのものは嘘である」ということに、健全さというか、もっと意味がある気がしてきていて。なので演劇なんだけどもっと軽やかなもの、コントではないけど、そのあわいのようなものを目指したいと思っています。

神谷  なるほど。僕はナンセンスや不条理を発端としたコントのようなスタイルがあって、やっぱり何かそこには存在しない風景が立ち上がっていく様とかそういうのが好きなんだけど、自分で表現する時にはそれまでのことはできないんです。今「画餅」でやっているものはどうにかその間を見つけるような作品にしているんですけど。笑いっていうものが介在しなくても好きで観られるものは全然あるので。そっか、ナンセンスというルーツがあるんですね?

穴迫  そうですね、僕もお笑いとか舞台のコメディがすごく好きなので、最初に作っていたのはそういうものだったんですけど現在に至るにつれてどんどん薄暗くなってきたという感じで(笑)

神谷  いやでもあの薄暗さがすごく僕は好きでした。最後カーテンを開けた時に差し込んでくるあの光だったりとかをそこはかとなく演出で使っている感じも含めて、こちらが想像を掻き立てるものを提示してもらっている状況がすごく楽しかったです。あとXにも書きましたが、僕は演劇のモノローグがあまり得意じゃないんです。だけど『波間』のモノローグはスッと入ってきて、なんでだろうって。『波間』はモノローグで展開していくんだけど、客席に向けるモノローグではなくて、何か別の対象を据えてモノローグが語られていたからその形がスッと入ってきました。必然性もあって、夢だったりとか自分の犯した罪に対する自戒みたいなものも含めてどんどんそのスタイルがはまって繋がっていくのですごく聞きやすかったというのが不思議な体感でした。

ブルーエゴナク『波間』@森下スタジオ
(撮影:金子愛帆)

穴迫  すごく光栄です。モノローグをずっと書いている時期があって今おっしゃってもらったようなことは書くときにいつも考えることですね。誰に向けられてるのかという疑わしさというか。神谷さんがあまり得意じゃないとされるモノローグのニュアンスもなんとなく想像できます。確かに客席に直接語られるものってこちら(観客)の心構えがまだできてないのに始まっちゃったりとか。

神谷  はい。

穴迫  なんとか押し付けないように発話をしたい、そのときにどうやってモノローグを組み立ててもらうかについては考えることが多かったのでありがたいです。

神谷  会話というよりはモノローグが多い作品だったと思うんですけど、客席に向けて何かを説明しているんじゃなくて、誰かの記憶としてあったメモ書きみたいなものを覗き見ているような見え方になるモノローグだったんですよね。だから説明じゃなくて、逆に聞いててどんどんその言葉をこっちが紡がなきゃいけない。紡いでいってしまう。よくあるモノローグの使われ方って複雑なシーンだったり設定を理解させながら進めなきゃいけない時に苦肉の策で使われている印象があったんですけど『波間』はログを点在させながらその見え方が変わるようなことがあって「ああこういう使い方ができるのか」って思わされました。

穴迫  ありがとうございます。

神谷  すごいなと思って。今回もぜひ観に行きたいと思っています!

穴迫  ありがとうございます。当日会場でご挨拶させてください!

ブルーエゴナク
THEATRE E9 KYOTO アソシエイト・アーティスト公演
シリーズ「ここは彼方(Here Is Beyond)」

『たしかめようのない』横浜公演

日時 2024年
11月26日(火)19:30
11月27日(水)13:00 / 19:30
11月28日(木)13:00
[上演予定時間 約75分]

会場
神奈川県立青少年センタースタジオHIKARI
(〒220-0044 神奈川県横浜市西区紅葉ケ丘9-1)
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料金
一般前売 3,500円※
U30前売 2,500円
[ 一般・U30当日料金500円増 ]
U22 1,000円

チケット取り扱い
teket <事前精算>
R7 TICKET SERVICE <当日精算>

アフタートーク
11月26日(火) 19:30 [ゲスト]佐々木敦氏(批評家)
11月27日(水) 13:00 [ゲスト]山本卓卓氏(範宙遊泳代表、劇作家、俳優)
11月27日(水) 19:30 [ゲスト]市原佐都子氏(劇作家、演出家、小説家、城崎国際アートセンター芸術監督)



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