Vol.17 縫い代始末のお話し
今回は洋服の全く見えない部分である裏の縫い代始末の話をしたいと思います。
皆さん洋服の裏側ってあまり気にして見ないですよね?
正直デザイン上あまり目につかないところなので、私もデザインしてて毎回どこまで拘るか悩む点でもあります。
しかも見えない癖に処理の仕方によっては製造コストが大きく変わってしまう箇所なんです。
上代がいくらになってもいい、
というのであれば徹底的に拘りたいんですが、皆さん洋服買う時に
″こちらは裏の処理が完璧にしてあるので10万です”
″こちらは裏の処理がそこまでしっかりとしていないので5万です”
と言われた場合どちらを選びますか?
多分ほとんどの人が5万の方を選ぶと思います。
きっと私でも5万の方を選ぶと思いますね。
こういった事でデザインする時私を毎回悩ませます。
じゃあどういう判断で決定するかというと、ひたすら皆さんの視点になって自分が買う時どっちを選ぶかを考え、ひたすら悩みまくります。
まぁこんな極端に価格の差が出る事は少ないので、基本見える箇所、自分が気になる箇所はしっかりと処理する様にしています。
裏側まで拘るのは昔からの男の文化ですからね!
日本の伝統ある着物を見ても女性の着物は見た目から華やかですよね?
男性はというと、見た目は女性ほど派手なモノはなかなかありませんよね?
マツケンサンバは特別ですけど…。
その代わりと言って良いかわかりませんが男性は着物の上に着る羽織りというものがあるんですが、その裏はメチャクチャ派手なものが多いんです。
多分この流れから学生の時に着ていた学ランの派手派手裏地もきているのではないかと思いますね。
見えない部分への拘りは昔からの男の文化みたいなところがあるんですね。
少し脱線してしまいましたがEGOTRIPPINGにおいては極力見えない裏側まで拘っていくモノ作りを心掛けています。
もちろん価格とのバランスを意識しながらですけど…。
裏の処理の種類は大まかに、総裏、総パイピング、伏せ縫い、環縫い、テープ処理、パンツではマーベルトによる処理などがあります。
スポーツウェアなどは特殊な処理をしてある場合もありますが、洋服においては殆どがこの処理のどれかだと思います。
因みに何も処理していない状態をオーバーといい、言わばロックミシンで生地端を処理しただけの状態です。
総裏というのは裏側全体に裏地が付いた状態で秋冬の洋服によく見られます。
総裏とパイピング処理のハイブリッドな処理を背抜きといい、こちらは春夏の軽アウターや春夏のスーツ等でよく見られます。
仕事でスーツを着られる方などは聞いた事があるんではないでしょうか。
次にパイピング処理ですが、コレはパイピングに使用する生地を特殊なミシンのアタッチメントを使用し縫い代を包んでいく方法です。
伏せ縫いは縫製の工程で縫い代を隠して縫製する手法で、表にシングルステッチが一本入ってくるのが特徴です。比較的薄地のシャツや軽アウターに用いられます。
環縫いというのは正確には二本針環縫いミシンを使用し、縫製しながら縫い代を包んで隠しながら縫う縫製方法で、縫う人の技術も必要になってきます。
主にアーミーやワークウェアに見られる縫製方法で、日本国内では近年ミシンも少なく技術者も減ってきており、ほとんどが岡山県の児島での生産になります。
表に二本のステッチと裏側のミシン目がチェーン状になっているのが特徴で、これにより着用していくと独特な縫い代のアタリが出てきます。
この様に裏の処理でも様々な手法と特徴があります。
当然製品の仕上がり具合もこれによって変わってきます。
ただ最初にも記しましたがやればやるだけコストにも影響してくるので
どの箇所をやるのか、どの手法でやるのか、など毎回悩ましい部分です。
ただ男である以上、敢えて見えない“裏”にも拘っていきたい部分です。
こういったことを頭に入れて洋服を見るとまた見え方も変わってくると思います。
一度お手持ちの服を裏返してチェックしてみて下さい。
裏側は男の文化、裏側にも拘ろう!!!というお話しでした。
ではでは
JUN