自由は難しい 〜 コタキ兄弟と四苦八苦 「十一、生苦」
「コタキ兄弟と四苦八苦」はテレビ東京で3月まで放送されていたドラマです。そのやりとりが印象に残ったので、書き起こしました。
コタキ兄弟が、ひょんなことから 「レンタル親父」を始めることになります。ひょんなことから、行きつけの喫茶店で働く「さっちゃん」が 父が同じ義理の妹であることを知ります。さっちゃんはその事を知りません。
その背景があっての今回の話です。年齢が離れてることもあり、一路が父親、二路が母親の様な役回りをしてる様に見えました。
いきなり、娘から 「女の子」が好きなんだって言われたら混乱して 「一路」のようになるよねと・・。
娘を思うからこそ、きちんとした結婚をして欲しい。でも、「きちんと」から外れた人はどうやって生きれば良いのか・・。
人に惑わされず生きることは本当に難しいです。
「あ、あのぉ ミチルです。私が同棲していた元カノ」
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一路「え〜と 確認して良いだろうか。」
二路「ダメ。本人が望んでいないセクシャリティな話はするべきではない。」
さっちゃん「あの、自分で元カノって言っちゃたし、私はオープンなんで大丈夫です。」
- 一路を睨みながら
二路「そっか、それでも他の人に勝手に言うのはアウトだかんな。」
- さっちゃんの方を向いて
二路「良いの? 一人で帰らしちゃって。向こうの両親認めてくれてないの?」
さっちゃん「娘がレズビアンだってこと受け入れられないみたいで」
二路「それで、さっちゃんはひどいことを言われた?」
- うなずく
さっちゃん「同棲していた部屋、みちる の親が借りていた部屋で、私が住み着いちゃった形で…諸々バレて激怒されて、働いてたカフェに乗り込まれて」
二路 「うわぁ・・・」
さっちゃん「私が みちる を「変な道に引き込んだんだ」って」
二路「ああ、はい はい はい。 大体把握。で、さっきの国家試験つーのは。」
さっちゃん「ああ、あの歯科医です。歯の。みちる 歯学部の6年で親も開業医で、その試験がもうすぐなんです」
一路「ちょ、ちょっと良いか。つまり え〜っと〜、つまりさっちゃんは女の子が好きということ?」
二路 「まだ、そこかよ。」
一路「だって、さっちゃんは女性の格好をしてて、さっきの子も女性の格好で」
さっちゃん 「性自認が女性同士のカップルです。」
一路 「性自認・・・」
さっちゃん 「あの・・性別の自己認識。」
二路「だからな、性自認が男だったらな、男の格好をしたり、性別を変えたりする人もいるけど、性自認が女だったらそのまんまなんだよ」
一路 「なんで、すいすい理解してるんだよ。二路のくせに」
二路 「だって予習済みだもん。前に ユカとさぁ リッカ がそういうこと言い出したらどうするとなって 「はじめて学ぶLGBT」を読んで話し合った」
さっちゃん「ま、まぁうちのお母さんも、最初は驚いたみたいで」
二路 「母ちゃん知ってんだ」
さ「はい。17の時にカミングアウトしました。「私、そうなんだぁ」って伝えたら 「ああそう、良いんじゃない」って言いながら、タバコを逆さにして火を付けたから逆だよって言って 「あら、やだぁ」って言って二人で大爆笑」
二路「へえ〜〜」
一路 「だけど、だけど その気になれば男とも付き合えるんだよね」
二路 「いやあ・・そういう人もいなくはないけど・・そういうことじゃないんだって。」
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二路 「なんで ミチルちゃんを追っ払ったの? ガチで嫌いになっちゃたの」
さっちゃん 「歯学部の学費知ってます? 彼女は私立で大体3000万。一浪しててその時通っていた医学系の予備校は何百万もするそうです」
二路「こえぇぇ」
一路 「まぁ高いところはそんなもんだ」
さっちゃん 「歯科医になれたとして、勤務医だったら500万前後。だけど、開業医だったら年収1000万とか2000万とか。人生イージーモードです。開業するのも大変だけど、でも ミチルの家には資金があって親の後を継いだって良い。もし私はと付き合うなら、「娘とは縁を切る」って両親に言われました。私は親に認めてもらってるし、こうやって好きに生きてるからそういう家もあるって考えたこともなくて。だから ミチルだけ親との縁を切って、全部捨てて苦労しろなんて私に言う権利ないですよ。だからミチルには「もう付き合えない」って言って部屋を出ました。」
二路「でもさあ、ミチルちゃんの気持ちは」
さっちゃん 「あの子世間知らずだから分かってないんです。親が払った学費がどれだけ大金で、稼ぐのがどれだけ大変か」
二路「だけどさぁ」
さっちゃん「レズビアンの中には、男性との結婚を選ぶ人もいる。その人と子供を作って暮らしている人もいる。だったらわざわざ苦労をする方を選ばなくても良いじゃないですか」
一路「そうなの。はははは、ほっとした。」
二路 「おい」
一路「やっぱりね。男と女というのが自然な姿でその方が良いに決まってる。さっちゃんも良い人を・・あっバール君だって良い。彼は良い人だ。男性の良い人を見つけて添い遂げた方が幸せになれる。」
二路 「最悪」
- さっちゃんがお金(500円玉 二枚)を机に置く
さっちゃん「ありがとうございました」
一路「お、俺たちはレンタルのつもりじゃぁ・・」
二路 「毎度あり。リピートしなくて良いよ。」
さっちゃん 「はい」
二路 「兄貴最悪。マジデリ」
一路 「マジデリ?」
二路 「マジデリバリー」
一路 「何も運んでない?」
二路 「兄貴マジで デリカシーない。当分この店出入り禁止な。さっちゃん 兄貴の顔見たくないと思うから。帰るぞ。俺が会計する。早く店出ろ。」
一路 「さっちゃんに謝った方が良い? 良いの・・」
二路「謝るたって何が悪いか分かってねぇんだろ。形だけ謝られても良い迷惑なんだよ。」
- 何かに気づいたように
二路 「あ、それおいつもの俺だ。だから ユカに怒られるんだな。よく気づいた。俺、成長期来てるわ~」
一路 「何納得してんだ。俺に教えろ」
二路 「さっちゃん、いくら」
さっちゃん 「はーい。紅茶代は自分で払うんで、コーヒーとオレスカで850円」
- 二路 先ほどのお金を渡す。
二路「ほい」
さっちゃん「150円のお返しです。ありがとうございました」
二路「さっき飲めなかったね」
ミチル 「ありがとうございます」
二路 「すげぇよなぁ。毎日勉強して、受かったら受かったらで毎日勉強するんだろ。俺には無理だな」
ミチル 「サツキも同じこと言ってた。なんか似てる」
二路 「はっ」(笑)
ミチル 「サツキは私を助けてくれたんです。最初は電車の中で、私が痴漢にあったの気づいてくれて、怖くて動けなかったのを痴漢の腕を捕まえて引きずり下ろして」
二路 「ほう」
ミチル 「私 そういうのしょっちゅうあって、いつも何も出来なくて我慢するしかないって諦めてたんですけど、そうじゃないって・・中学の時から自分は人と違うんじゃないかって思い始めてでもそれも・・・諦めてた。怖かったんですよね。自分が人と違うって認めるの。サツキはそんなの気にしないんです。ああ、そっか・・良いんだって思えました。好きに生きて良いんだ。自由になれるんだ。私たちは自由だ。そしたら不思議なんですよ。白黒だった部屋が朝起きて眠るだけの何にも面白くない部屋がカラーになった。どうして一緒にいられないんだろう。」
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さっちゃん「まだ開店前なんですけど。何でサングラス。」
二路 「ええ、兄貴がさっちゃんにひどいことを言ってしまい顔向けが出来ない。自分の顔を見たくないだろうということでこうなった。俺は付き合い。バランス?」
さっちゃん「いや、そんなことを気にしないでください。え・・これを言いにこんな早く?」
二路 「俺たちは、さっちゃんを誘拐しに来た。悪いんだけどさ、これで手を縛って表に出てくんない。」
さっちゃん 「えっ」
二路 「兄貴が無理強いは良くないし、乱暴もダメだって」
さっちゃん 「えっ、いやそれどんな誘拐ですか?」
二路 「気持ちの上での誘拐」
さっちゃん 「あ、あの すみません。 まっったく 意味が分かりません」
- 二路 サングラスを外す
二路 「ミチルちゃんの試験今日じゃん。送り出してやらなくて良いの? 二人一緒に幸せになる方法があんのか、俺らにも分かんねぇけど、ミチルちゃんは二人のことを親に認めてもらうために受かりたいんだって。応援してやらなくて良いのかよ。自分が消えていなくなれば良いなんて考えんなよ。」
さっちゃん 「ミチルが前に言ったんです。どうして私たちは祝福されないんだろう。どうしてこんな風に生まれて来ちゃったんだろうって。」
一路 「それでも、産まれちゃったんだよ。俺たちは。出ちゃったものは戻せない。この身体でこの心で産まれて来てしまった。けれども、その先は 好きにさしてもらうぞ〜〜 神様・・・か仏様かも分かんないけど。あなたが、あなた達があなたとして生きていくことを俺は祝福する。」
さっちゃん 「店長 出かけて来ます」
店長 「いってらっしゃい」
さっちゃん 「いってきます」
一路・二路 「いってらっしゃい」
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