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書くことへの不安。

自分が文字を紡ぐときに生じる不安がどこからきているのか、

それは今も完全にはわかっていない。

ただ、わかるようになったことは「文字を書く」ことは空想と現実が衝突する瞬間の1つだということ。

私の中にあるものが、文字になった瞬間に現実のものになる。

それを目にすることで幻滅することもあれば、その美しさに酔いしれることもある。

私にとって自分の中の空想は、甘美で居心地が良く、この上なく快楽が得られるものになっている一方で、突然追い立てられる恐怖心や誰かを壊してしまうような攻撃性も持ち合わせている。

文字にする瞬間にその全てが境目になる、そうキーボードであれば親指を除いた4本の指先の皮膚がそれらの感情を受け止める入り口になる。

恐怖心や攻撃性が先立てば指先は動きを止め、甘く柔らかな感覚が先立てば滑るように指先が動き始める。

キーボードを打つ動きはどこかピアノを弾くイメージに重なって、私はどこかで諦めていた音楽家になりたかった自分に気付かされる。

形を変えて空想を実現しようとする飽くなき衝動は、私の中で少しずつ形を持ち始め、コントロールできなくなる不安をなんとか和らげようとする。

いつまでもこの甘い響きに浸ろうとする自分自身にどこかでブレーキをかけ、そっと現実の自分に戻り、そこで許される別なメロディーを奏でる準備をする。

ただ流れ続けるメロディーは心地よさはあってもすぐに退屈なものになる。

休符とリズムが新しい響きを生み出すように、時間と空間という制限があることで、また新しいものが生まれる。

私の中の空想と現実が、もっと美しい調べを作り出せるように流れていくように少しだけ、意識の方向を変えてみる。

止まるための記号がもっとうまく使えるようになるには、醜いものもたくさん見て、「終わらせること」になれる必要があるみたい。

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