水中に逆さま状態で人は何秒まで耐えられるのか?
お盆休みの最終日前日、カヌー協会のメンバー
で京都府綾部市にある由良川へ行く。
メンバーは何度か行っている現場だが、私には
初の川となる。
約3時間の川下りだが、全くカヌー経験のない
素人の一般参加は危険という事でメンバーだけ
で行ったもの。私以外はベテラン中のベテラン
4名が参加、私を含め5名。
ここ迄の写真は穏やかなエリアであるが、この
先は、岩もあちこちにあり、流れも激しさを増し
そこで私は沈(チン=沈没のこと)をした。
岩場からカヌーで落差ある高さから降りた際に
そこの濁流を躱わし切る事が出来ないまま濁流
に巻き込まれて、艇(カヌー)が真下を向いて
転覆をしてしまった。
勿論だが、これまでに私は何度かの沈は経験を
しているのだが、川面に対し完全に真下を向く
状態になったが、パドル(カヌーを漕ぐ道具)
を持った両腕が水の勢いで万歳している状態に
なってしまい、何もできぬ状態となっていた。
また、激流下りをする際に船体に水が入らぬ為
に着用するスカートがある為、逆にこれゆえに
脱出が困難になっている。
パドルに水の圧が掛かり、両腕が下ろせない。
撮影する時にパドルが流されない様にと船体
とパドルとを繋いだスリングがまた邪魔をし
手が下ろせない。それと着用しているライフ
ジャケットの浮力がある為にカヌーに上体が
張り付いて身動きが取れない。色んな要因が
重なってこんな風にして人は死んでしまうの
だな。昨年もカヌーで溺死した人の事故の話
を聞いていたが、こんな風に身動きが取れぬ
ままに水の中に頭が浸かって呼吸困難により
溺死してしまったのだろう。
いや、マズイ、本当にこんな状態のまま続けば
コレはマジで死んでしまうなと、冷静に考える
事にした。パニックになるのが一番悪いのだ。
頭を整理する。
・カヌー船体は逆さまで私は上体が水没の状態
・ライジャケの浮力でカヌーに上体が磔の状態
・水流の強さでパドルを持つ私の両腕は万歳状態
・パドルと船体を繋ぐワイヤーが邪魔な状態
・呼吸を止められる限界時間90秒中60秒経過
・スカートを外して脱出するのが先ずは必要!
整理した内容から、やるべき事を実行に移す。
・パドルを片手だけで持つ事にする
・片手持パドルを水流抵抗を受流位置にする
・上半身を艇の後に流されるのを屈曲させる
・スカートロックを解除する
ザボンッ!
スカートのロックが抜けた。脱出成功である。
痛っ、流された右脚が岩にぶつかり激痛が走る。
出血してるのが見えたがコレは然程の問題では
ないと判断。
水面に顔を出すと、やっと呼吸が出来た。息が
出来ることの素晴らしさである。ここに至って
実は大量に水を飲んでたのに気付いた。綺麗な
水だったのは良かった。
『パドルからも、艇からも手を離せ』の指示が
私に飛ぶ。かつては『パドルだけは手放すな』
がセオリーだが、艇とワイヤーで繋いでたのが
良くないのだという。私は両方から手を離す。
ライフジャケット着用なので、仰向けの状態を
キープして川の流れに乗りながら、近場の岩へ
到着する。右脚の膝がズキズキ痛む。それより
右目が霞んでいる。さっきの凄い水圧によって
右目のコンタクトレンズだけが流されたのだ。
左目はコンタクトレンズ着用で1.5なのだが
右目はコンタクトレンズを失い0.1以下ゆえ
ガチャ目状態である。
岩の上に乗ると、IPHONEを繋いでいたネック
ローブがない!マジか!と思ったら私の真後ろ
にあった。見るとケースのところにギリギリの
状態でストラップホルダーが変形していたので
あのままの水圧の中にいたら、このIPHONEも
外れ、永久にオサラバとなっていたのだ。
岩場に上がりへたり込む。何とか生き延びた。
IPHONEも無事で何よりである。だが、こんな
片目の状態でこの先の同じ様な難所を下るのを
考えるとゾッとした。それでなくとも岩場から
落差のある下へとカヌーが落ちた後に待構える
濁流を的確に処理しなければならないのをこの
目でどうクリアするかの課題がある。
この日、私を含めたベテラン4人のうち、3人
がこの落差を落ちた際に沈をしている。唯一、
一人だけ沈していない猛者の後にピッタリ付き
そのラインをトレースするしかない。
ガチャ目の両方を開けていると距離感すらもが
分からないので、片目だけを開けて前を進んで
行くベテランの艇をトレースして漕いでいく。
その先の10以上の難所は全てこの作戦をもち
コンプリート出来た。
最後の三枚の写真は全く余裕のない私の写真を
撮ってもらってたものである。
水の中で艇に仰け反って張り付いている場面は
何かの記憶にあったなと、後々に考えてみたら
『天空の城ラピュタ』のワンシーンだった。
シータ救出のために出撃したフラップターにて
女盗賊団のドーラが顔面に煉瓦が当たって気絶
しているシーンである。
この状態でパドルを持ち水中に逆さまになって
たのである。ちょっと死を予見させた経験にも
なったが、経験から学んだ良い機会となった。
濁流の辺りでの私は撮影する余裕はゼロだった
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