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エキストラ SAT隊TVドラマ出演


私がサバイバルゲームに興じていた事は過去記事
にも書いた通りであり、今も私は48丁の銃を
所持している。もちろん、プラスチック弾を撃つ
トイガンである。そしてチームのスタイルとして
SWATの本物の装備、タクティカルベストから
ハイテック社のブーツまで本物を所持している。
オールブラックの装備が我々SURESポリシー
だったのである。

少し、いや、だいぶ前の事を記載する事となる。


ちょうど、20年前の夏の終り頃のこと。
私が所属していたサバイバルゲームチームの一人
がカスタマイズ銃にハマっていて、エイリアンや
ブレードランナーに出てくる銃などを創作をして
ネットに掲載しており、それが映画関係の人から
好評を得た。実際にものとしてよく出来ている。
(*銃の写真はその映画の中の写真となる)


ALIENS : PULSE  RIFLE



ノストロモ号の唯一の生存者であるリプリー、
ウェイランド湯谷社の地球外生命を武器活用にの
目論見を暴き、ニュートを助ける為に危険な地の
エイリアンクイーンと対決する時に使用した銃。
パルスライフル (PULSE  RIFLE)である。
グレネードランチャーも備えたパルスレーザー銃
ターミネーターで一躍有名になるキャメロン監督
の記念すべき二作目となる。

BLADE RUNNER  :  DECKARD'S BLASTER



植民地惑星の労働の為に作られたネクサス6型の
レプリカント、タイレルコーポレーションの天才
の手による人工生命体で、人間よりも知能、体力
共に上の存在。それらが反乱を起こしたのを討伐
の為にブレードランナーが彼等と対決する話。
小説『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』と
フィリップKディックの原作の映画化作品。監督
は私が大好きでしょうがないリドリースコット。
グラディエーター、悪の法則、エイリアンなどの
作品のメガホンをとった監督。元々はCMを弟の
トニースコット(トップガン)とやっていてあの
アップル社の当時のCMが高く評価されて映画界
に引き込まれたのである。

と、これらの改造銃をチームの一人が手先が器用
で、映画も銃も好き。これが縁となったことから
お互いにコンタクトを取る様になりある日の事、
衣装のオファーが来たのである。


サントリーミステリー大賞を獲った脚本がTVの
2時間枠ドラマで放映される事になったらしいが
その中にはSAT(日本の特殊急襲部隊)の隊員
が何人も出てくると言う。京都は太秦には松竹の
衣装部屋があるそうだがその様な衣装はないぞと
急遽、装備を貸して欲しいとのオファーだった。
日本にはSATやSITなど対テロ組織はあるが
その姿は公には晒されていない。彼等は隠密組織
ゆえに、その装備や姿などを世間に見せてない。
彼等は家族にすらもその仕事内容を一切口外して
いけない特別な存在なのである。


我々サバゲーチームの装備は、米国特殊急襲部隊
のSWATの実物装備、それでも良いかの問いに
それで構わぬ、貸して欲しい、いや、もしも望む
のならば特殊急襲部隊隊員として、TVドラマに
出演もして構わないのオファーだった。そして、
それに我々は面白そうと快諾をしたのである。


当日、我々のタクティカルベストには、大きく
SATのロゴのワッペンが付けられた。何分にも
これも実物がどうかは分からない、誰も知らない
ものなのだから。いつものサバゲースタイルへと
我々はは着替える。さすが松竹の衣装部屋であり
各種衣装がズラリと並んでいて圧巻であった。


SAT装備を付けて小さな取調室みたいな部屋に
招かれ助監督から一枚の紙を渡される。SATを
率いる責任者が、山崎邦正さんの名が上がってて
えっ、これは『ガキ使いの笑ってはいけない』の
ギャグ設定なのかと目を疑うが、間違いない。
そう書いてある。サントリーのミステリー大賞を
受賞した作品の撮影ではないのか…とガッカリ。


その下の出演者の部分を見ると、これまた驚く。
え、京本政樹、渡辺徹、芦屋雁之助、有森也実、
藤田まこと、柄本明、と日本を代表する俳優名が
ズラリと並んでいるではないか。マジ良かった、
コメディ関連でここまで重装備はあり得ない。

説明は簡潔、シーンごとの動きを指示するので
その通り動いてくれればいいと、ただそれだけ。
我々も自主制作映画を作っている仲間たちゆえ、
そこら辺は全くもって、気楽なものである。
台詞は一切なし、顔出しも殆どない。


「出番まではお時間がありますので、先ずお昼を
済ませます、ささ、こちらへどうぞ」


エキストラの分際でありながら助監督から手厚い
案内なのは、この衣装のお陰、確かにこれら装備
だけでも7、8万円はする。こんな豪華キャスト
なら出演料だけでもバカにはならないだろうし、
こんな特殊部隊装備には予算を割けたくなかった
のかも知れない。トコトコと部屋を出て、松竹の
衣装部屋の窓際のテーブルに侍姿に扮して座って
おられたのは、なんとあの及川光博さんである。
台本を読んでは頭を上げては台詞を小声で発して
おられる。つい先月、同氏の出演している映画を
観たばかりなのだが、今、この目の前にいるのが
信じられない。クールダンディそのまま一生懸命
に台詞を読む姿に男ながら一目惚れしてしまった。
邪魔をしてはいけない。トコトコと松竹の食堂へ
向かい、その情景にまたビックリ。食堂テーブル
にはナース、忍者、お代官様、警官、ヤクザ衆、
ドクター、侍などのありとあらゆる姿の俳優達が
お膳を前に食事をしている。衣装を着替えた時に
デジカメを置いてきたのをメチャクチャ悔やむ。
ナースとヤクザと侍が同じテーブルでご飯してる
情景などはそうは見られない。


昼食を終わらせて、衣装部屋へ戻ると、及川さん
は台本を置いて何かを飲まれている。会釈すると
丁寧に会釈を返してくれ「おはようございます」
何と向こうから言葉を掛けてくれた。そう、この
世界では朝昼晩の全てがこれだと思い出した私も
「おはようございます」と挨拶して、先月に観た
映画がとても面白く良かったですと言葉にする。
「おっ、どうだった。もし時間が良ければ詳しく
感想等を聞きたいね。良ければ前にどうぞ!」と
「では、遠慮なく」と私は及川光博氏の真正面に
座って映画「漂流街」の映画感想を端的に話す。
私はこの当時、映画サークルに入っていて月には
15本も劇場に足を運び、それらの感想リポート
をまとめる作業を常にしていたので、簡潔に感想
を述べるスキルが備わっていたのである。真正面
に座る日本を代表する俳優界のスターを前にして
私なりの解釈と、好きだったシーンの話をすると
及川さんは映画撮影時の裏話などを私に聞かせて
くれた。そして二人で笑いながら会話も出来て
とても良かったのである。


「貴方の感想は、簡潔でとても面白いし、独自の
視点での解釈もとてもいいと思う。君はいい俳優
さんになれると思うよ。いつかどこかの現場でも
こんな風に逢えたらその時は宜しくね!」




なんて素晴らしい俳優さんだろう。握手を交わし
サインも頂いた。優しくも私に手を振ってくれて
私はこの時を機に及川光博さんのファンになった。
私はエキストラですとは流石に言えなかったのだ。
相棒シリーズでの活躍を見て、その時の及川さん
の魅力を思い出す。真摯で真っ直ぐな人である。


先程の取調室(待機部屋)に戻ると大物俳優と
話が出来るなんて凄いなと、仲間から言われる。
その当時私は劇場公開映画は片っ端から見てたし
映画俳優と話すのは全然、問題がない。湯布院の
映画祭で竹中直人氏、津川雅彦氏、永島敏行氏と
有吉久美子氏と普通に映画会話も弾ませられる。
香川照之さんとでも色んな会話で盛り上がった。
俳優さんにとり自分の出演作で自分が好きだった
シーンなどの話をするのが、多分一番なのである。
監督や脚本家も物おじせずに話せるのはそれだけ
大量に映画作品などを見ていなければ会話には
ならない。一遍通りのお世辞は彼等は聞き飽きて
いる。そんな会話の事は忘れられて意味がない。


さて、昼前に集まり、夕方からの撮影。山崎邦正
さんは、TVでのイジメられ役があってか周りに
誰も寄り付かない。私はいつも大変ですねと声を
かけると『ヘッチャラだよ』と微笑んでくれた。
が、瞳の奥に本当はそうでないのを強く感じた。
あのゴボウでの殴り合いなど、ゴボウにも対して
も失礼だし彼も痛く辛いだろうとTVを見ながら
心痛めた事もある。TVがイジメ等を増幅させる
ネタになるのは私は否定的な考えを持っている。


しかし、他のエキストラメンバーは黒軍服は一緒
だが銃がメチャクチャ。ウージー、イングラム、
AK47、絶対に日本の警察が使用しないゲリラ
やテロリストが使う極悪な銃を待たされている。
まあ、銃がドアップで映ることもなく、それでも
いいのならいい。私はエキストラSAT隊員の役
を指示通り演じるだけのこと。私はSAT装備を
知らないがSWATが使用するH&K社の装備を
持っていったのである。急襲する警察や軍隊など
採用される素晴らしい銃である。


京本政樹さんが現場入りする。うわっ、これまた
オーラを持っている。及川光博さんとは違う種類
のオーラである。渡辺徹も現れた。京本政樹さん
は屈託なく話をしててムードメーカーな雰囲気。
対して渡辺徹さんは意外にも寡黙な印象。忙しく
疲れているのか…。亡くなられて残念である。

撮影が始まる。ここからあそこまでを全員で一気
に駆け抜けて下さい。カメラを床固定させ、それ
を正面から銃を構えたままでSAT隊員に扮した
我々は交互に左右に分かれ走り抜ける。なるほど
TV撮影の見た目の派手さや小気味良さなどとは
これらのシーンを後でカット割で編集して映像に
するのか。にしてもほぼワンカットワンテイク、
私達の自主制作の映画では同じシーンだけなのに
色んなアングルで何テイクも撮影する。効率重視
の撮り方をここで学ぶ。カチンコには後の編集の
為のシーンナンバーがマーカーで記載されていて
シーンごとに書き換えられる。なるほどホワイト
ボードマーカーで直ぐに書き換えるのね。昔のは
チョークだったのを記憶している。


このTVドラマの話は、赤ん坊の時に取り違えが
あり、裕福な家庭に育った者を、ドン底生活の中
育った者が復讐をするというストーリーだった。
そしてナイフを持った京本政樹氏演じる犯人へと
ビルの屋上でSATが銃を構えてにじり寄る。
うむ、SATはこんな事件で絶対に出動しないが
エキストラの身ゆえそれを考えない様にして演技。


屋上から飛び降りた京本政樹さんの犯人のその姿
を確認の為に我々SAT隊員がそれを見下ろして
そこに私を押しのけて有森也実さんが私の横で下
を見下ろす。このシーンだけ何テイクも撮られる。
その度に私の背中に有森也実さんのお胸がボイン
と背中に当たる。役得、いや役者徳みたいなもの
である。これはそういう演出だから仕方がない。


夜10時過ぎに撮影が終了。この時の録画ビデオ
はどこかにある筈であるが、今となってはVHS
デッキなどは壊れてて見る事はもうないであろう。
オモシロ体験ではあった。何となく不思議の国の
アリス並みのオモシロワンダーランドなお話。


20年と前の話だが、及川光博さんは今もさほど
には見た目が変わらない。なので同氏のほぼ現在
の画像を載せた。


この時の体験のきっかけを作ったガンマニアには
心より感謝である。


サバゲーって、一体何なのさ!?という方には
その詳細を載せているハウツー情報が載るこれを
読まれたし。装備などもまとめてある。

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