CD3
やはり今考えても、この日がエッグドナーのサイクルの中で最も緊張していた日ではないだろうか。採卵の時よりも緊張していたと思う。午後までは普段通りだったが、薬の時間が近づくにつれ、お昼過ぎからなんとなく気持ちが落ち着かないのだ。この日はずっと家に引きこもり、空き時間に何度もフォリスティムの注射の仕方をビデオで見ては、失敗や痛み、副作用の心配ばかりしていた。私は投薬時間が午後8時だった。この日は7時前に全て家のことを終わらせ、シャワーを浴び、投薬後すぐに就寝できる準備をしていた。フォリスティムは冷蔵保存の薬である。注射30分くらい前に常温に戻さなければならないものだ。
ついに7時半になりフォリスティムを常温に戻した。それから注射に必要な準備や、注射のビデオを何度も確認してるうちに、あっという間に30分経ってしまった。徐々に手に汗が滲むのを感じながら、針を注射器につけたときの緊張はマックスだっただろう。そして右側の下腹部の脂肪を掴み、アルコールワイプで注射をする部分を拭く。何度も刺そうと思っては戻しての繰り返しで、気付けば5分過ぎていた。その途端、時間に遅れたことで我に返り、思い切り刺してみたらあれ拍子抜け。シャープペンシルで軽く突いたのような感覚で、痛みとは程遠かった。出血もないので注射の跡も全く分からない。緊張して体温が上がっていたからだろうか。その後すぐに片付けをし、クロミッドを飲んだ。意外と大き目で水を多めに飲んだ気がする。おそらくクロミッドの副作用だろうが、薬の後10分後に少しだけ血の気が引いてクラっとする感覚があったが、すぐに治りいつも通り就寝。その日の緊張が一気に解けてぐっすり眠れた。