短歌ネプリ「月九」第8回感想
9人の歌人による短歌ネプリ月九、第8回の配信が無事終了しました!
出していただいた方、ありがとうございます。感想のタイミングを逃したので、今回は引用ありでnoteを書くことにしました。。
今回の主演(テーマを決める人)はシリウスさん、お題は「恋」。
これが個人的にはめちゃくちゃ難しかったです。。
でもちゃんと連作は完成したので、よかったよかった!
星が終わる前にウォータースライダー最上段で結婚式を/シリウスさん
シリウスさんらしいロマンチック。パリピとはまた違う、もうすこし幼い若者らしさ。でもその幼さは人生において一時期しかないものだから、貴重な瞬間を切り取ってる歌だと思う。形式とか常識とかはどうでもよくて、本人たちが結婚式だと信じてれば、いつでもどこでも結婚式は挙げれる。
窮屈に膝を抱える僕たちに罠のように落ちてくる花火だ/池田明日香さん
罠のように落ちてくる花火って表現が素敵。
かろうじて確保できたスペースも狭いせいで、二の腕とかはきっと触れ合ってて。物理的にも心理的にも身動きが取れない感じがします。このまま身動き取れなくなって恋が始まっちゃうんですね!わかります!!
簡単に泣いたりしない音姫の止まるボタンを強めに押して/近江瞬さん
トイレで泣いたことがないひとって、どれくらいいるんだろう?少なくとも、私はある。一度ならず何度も。トイレなんかで泣いたら誰かが入ってきたときに気づかれるかもしれないから悪手だってわかってはいるけど、どうにも我慢できないときはあって、そのたびに音姫を押す。泣くことで問題は解決しないけど、少なくとも気持ちの切り替えにはなるので。
次に動き出すための涙だってあるのだ。そんな強い気持ちの片鱗が感じられる主体だと思う。
見てしまいふられたきみの部屋じゅうの恋からいいにおいがしているよ/御殿山みなみさん
まず「なにを見ちゃったの!?」っていうフックがあって、そこから更に部屋じゅうの恋っていう意味深な謎を重ねてくるワンツーパンチ!森見登美彦の小説みたいな、現実と独特なファンタジーが自然に混ざり合ってるバランスの歌だなぁと思いました。
部屋じゅうの恋、ほんとになんなんだろ?手作りクッキーとか考えたけど、部屋じゅうにあるのはおかしいし…。気になってずっと考え続けてしまいそう。
こい、と打つつもりが「そい」と打っていたこれはそいだよ異論ならそい/西村曜さん
今回の月九で、声に出して読みたい短歌No. 1です。後半でたたみかけてくるような「そい」!めちゃ楽しい!!打ち間違えの「こい」をちょっと意地になって「そい」って言い切ろうとする感じ、いいと思います!友達なら半笑いで「おっけー、今日はそのまま『そい』でいこう」っていじりながら話を聞きたい。
言葉とは聞くものでなくわかるものだから愛を囁きあえた日々/平出奔さん
最後に動物的な印象が残ったのは、「言葉=他者になにかを伝えるもの」っていう役割を否定され、「言葉=ある事象の後付けの名称」と定義されたあとだからだと思う。小鳥がさえずりあってるような、猫がじゃれあいながら遊んでいるような、そんなイメージが恋人たちの上に重なって見えた。
言葉として愛を理解してから伝えるよりも、「好き」とかそんなストレートなフレーズを使わない会話でだって愛を伝えることは可能ってことなのかなぁ。これはさすがに曲解がすぎるかなぁ。
さとう・しお・す・セックスに至る前にごちそうさまを聞かせてほしい/若枝あらうさん
セックスってストレートな単語を使ってるのに、雰囲気が下品じゃないのすごいですよね。「おなかが満たされたら、次はもちろんセックス!」って身も蓋もない感じになってもおかしくないシチュエーションなのに、なんとなく品とか知性を感じる。
あと「ごちそうさま」に食事の区切りの挨拶と、料理のさしすせその最後のそが隠されててダブルミーニングになってるの、あらうさんっぽいオシャレエロだなー!!って思いました。
キラキラとなにもかもが輝いて鏡の中のぼくさえかわいくて/若紫音佳さん
ピュアかわいい!!
感想はその一言に凝縮されるのですが、もっとちゃんと言語化がんばります。恋してる時の初期のほうとか、こんな気持ちになりませんでしたか?好きな人がいるおかげで、世界はこんなにも輝いている!みたいなテンションはオタクの推しに対するものだけではなくて、恋する少年少女にも芽生えてもおかしくない感情だと思う。
恋してる人は目の輝きが違うし、心なしか肌の調子もいい。鏡に映る自分を見てその差がわかるくらいなら、それはもう完全に恋しちゃってて、なおかつ調子がいい証拠です。もう少し恋が深刻化するとメンタルが不安定になったりするかもしれないけど、それは個人差がある話ですし!いまのところ、良い恋をしていると言えるでしょう。…ほらね?こんなのもうピュアかわいい!としか言えないですよね!!
以上!読んでいただいて、ありがとうございましたー!