月下美人のごとき学生ブランド
月下美人と言う花(サボテン)をご存知だろうか?
この花は一年にたった一晩しか開花することがないそうだ。
この花の話を聞いた時、ぼくは似たものを思い出した。
「大学生のうちに遊んでおこう!」
「大学生のうちに恋を楽しもう!」
「大学生でしか出来ないことをしよう!」
そんなことを言う大学生や社会人の先輩たちを思い出した。
みんな、一時のみ開花する「学生ブランド」に魅せられているんだろう。
同じ大学生の友達には、「学生のうちに」とこのコロナ禍で留学に飛び出した人がいる。また、「バイトなんか意味ない、今しか出来ないことやりたい」と言ってた人もいる。
そして社会人になり、学生ブランドを失うとそのブランドを持つ人を羨ましがる。
先輩でOBOGとしてサークルに来て、「あの時はよかった」「お前らも今のうちにやっておけよ」と言う人がいる。
こういう人たちの心理背景には、「今しか出来ない」「社会に出たら出来なくなる」という恐怖心があるのではと思っている。もはや、強迫観念にかられているようにも見えていた。
ぼく自身にその強迫観念が全くないと言えば嘘になる。
「大学生だからこそってこともあるよなぁ」とは思いこそすれど、変に焦ってはいない。いや、良い意味で諦めをつけているのかもしれないし、「学生ブランド」にそんなに魅せられていないのかもしれない。
大学生のうちに海外留学に行っておけば、社会に出た時にその経験が大きな力になるだろう。けど、今のぼくはそんなに重要とは思っていないから行かなかった。
大学生のうちにたくさんのコミュニティを経験しておけば、人脈などとなって助けてくれるだろう。けど、今のぼくはコミュニティには少し辟易しているから数を絞って、出来る範囲での参加に留めている。
「学生ブランド」を、今の自分を犠牲にしてまで使い倒す必要はないと思っている。代わりに、ぼくはその先の人生を軽く見据えるようにしている。
例えば、バイト先でミスをした時には「こう考えてこうしたらミスった。多分これは自分の癖やろうから、社会出て気をつけなあかんな」と考えたりする。
また、バイト先のシステムに不満を感じた時、「こうやってアルバイトの視点での不満は社会人になれば見えなくなりがちみたいやから、こういう考えは大事にせな」と思うようにしたりしている。
こんな感じで、ほんの些細な出来事から小さな「将来のため」を拾いあげるようにしている。これを社会に出て生かせたら、この努力は無駄にはならない。
この考えと気づきは、先の人生において海外留学や学生コミュニティでの経験にも負けないものになると、ぼくは思っている。
こんな考えに至れたのは、皮肉にもコロナのおかげかもしれない。
月下美人の花の美しさに魅せられて、その一瞬を必死に愛でて、しぼんだ後に茫然としているには、人生はあまりにも長い。
だからぼくは、月下美人の花を愛でるだけではなく、しぼんでいる月下美人の魅せ方を探している。そして、月下美人の育て方や魅せ方を他の花にも応用している。長い人生でより多くの色とりどりの花を愛でるために。
そして今、しぼんでいく月下美人を見つめながら、次の花の世話に向けて準備を始めている。
花の色は選べないが、どんな花でも育てられるように、魅せられるようにしたい。
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