風三等星″らしい″芝居を

と言ってはいるが、恥ずかしながら風三等星の芝居は二度しか見たことないのである。



5年。
それは人が変わるには十分過ぎる時間で、
人が変わらないままでいられる絶妙な時間だった。

実際、この後5年の間に二度引っ越しをしたし、
普通自動車の免許も取得したし、
正社員として就職もしたし、猫と暮らし始めた。

だからこそ、芝居への気持ちや熱が冷めているのではないかという不安がもちろんあった。
「単調な生活」が体に定着してきていた。

【幸せというのはな、君が忌み嫌ったその単調な生活のなかで探していくものなんだ。】

劇中の銀行員の言葉だ。

まさに、それだった。
単調な生活のなかで幸せを見つけた真っ最中だった。

朝9時に起きて、10時に出勤。
決まって昼にコンビニ飯。
夜19時に仕事を終えて帰宅。
あとは夕飯を食べてゲームをして夜の1時に就寝。

こんな単調な生活が幸せだったのだ。


5年振りの公演が決まり、台本をいただいた時。
「男女比が合わない………………」
まずそう思った。
だから、自分がどの配役になるのか検討がつかなかった。
なんとなく銀行員3(柳田)かなぁ、と思いつつ、なんとなくセリフも入れて読み合わせに行くと、告げられた配役は女(ジュンコ)。

完全にノーマークだった。(全然セリフ入ってないよ…!)

配役を知らされた時は、こんなに一人一人が個性的で爆発的なお芝居が完成するとは思っていなかった。
この配役が【正解】であり、【風三等星】といえるものだったのでは、と私は思う。

高校入学したら演劇部に入るつもりだった私だが、
入学した時には廃部になっていたので
専門学校に入学して演劇講師をしていた広瀬さんとの出会いから
私の演劇人生は始まった。

オンラインパンフレットにて、
➖「許せないもの」が似ている気がする。➖
と広瀬さんよりお言葉をいただいている。

近しいものがあると思っていただけているのが純粋に嬉しく、
そういえば学生時代は「リトル広瀬」なんて呼ばれていたなぁと思いながらも、
なぜなら私の演劇論は広瀬さんから授かった物なので
私にとってはそれが正解だと思っていただけの話である。


だから、風三等星だった。


この5年間で色々世間を見てきた結果が、ここだった。

風三等星に入りたいです、と広瀬さんへ相談し、
急遽客演として出させていただいたのが
2018年「カプセル」。
1年後、正式に風三等星に入団して初めての舞台が
2019年「ディアフレンズ・ジェントルハーツ」。
2020年の台本をもらった後に、風三等星は止まってしまった。

今回、5年ぶりの公演。

「バンク・バン・レッスン」は、心の底から楽かった。
こういうお芝居が私は好きで、こういうことをやりたくて。
たくさんの人が笑いながら泣いてくれる。
役者も、面白くするために知恵を使って全力でバカなことをやる。
同じ方向を向いた大先輩たちに囲まれて、居心地の良い稽古場だった。

この5年間で、芝居への気持ちは変わらないまま、
芝居の技量はいい方向に変われていたのかな、と思いたい。

「風三等星の女優の2人」
と、広瀬さんに言ってもらえることが本当に嬉しかった。


またこれから、「単調な生活」に戻る。

でも、単調な生活も悪くないものだ。
特別な生活があるから、単調な生活のありがたみを感じ、
単調な生活があるから、特別な生活のありがたみを感じる。

一般人として世に紛れている時間があるから、
舞台上に立つときには特別な自分に成ることができる。


また風三等星が動くまで単調な生活の中で幸せを見つけるとしよう。



それでは、締めの挨拶はもちろんこれで。



ばいちゃ。






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