No197 パソコンの正しい捨て方

PC(パソコン)に限らず機械には寿命があります。
PCには機械的な問題だけでなく、使いたくても使い続けるわけ
にはいかない点もあります。

古き機器は基本的には捨てることになりますが、その際にもいくつ
か注意すべき点があります。

今回は、そんなPCの正しい捨て方を解説します。


1. なぜ捨てないといけないのか?

PC(パソコン)は通常の電化製品と違い、壊れるまで使えない
事情が二つあります。

一つは性能の不足、もう一つはソフトウェアのサポート終了(更新
終了)によるものです。

性能不足というのは、あくまで相対的なものです。
購入した時点で流通しているソフトウェアを動かすには十分でも、
世の中のソフトウェアはどんどん進歩し、それにつれて動かすのに
必要な性能も高くなっていきます。
PCそのものの能力が落ちたわけではないのに、十分な速度で動か
ないと感じるのはそのためです。

ただ、最近は以前に比べてソフトウェアの機能向上のペースは落ち
着いており、筆者自身も同じPCが現役である期間が長くなって
います。

ですが、それでも2点目のソフトウェアのサポート終了による買い
換えは避けられません。
ソフトウェアは機械と違い磨耗も劣化もしませんが、バグや脆弱性
がつきものです。

まだ、バグはいいのです。脆弱性が見つかっても修正プログラム
(パッチ)が提供されなくなることの方が大きな問題です。

余談
 「パッチ」はpatchと書き、服の破れ補修のあて布や壁などの穴
 を塞ぐ板などのことを指します。
 パッチワークで使うはぎれもこの単語ですね。
 ソフトウェアの世界でも同じように補修をするプグラムのこと
 を「パッチプログラム」や「修正パッチ」などと呼びます。

 さらに余談ですが、「バッチ」というコンピュータ用語もあり
 ますが、こちらはbatch という全く別の単語で「パンを大量に
 まとめ焼きする」から転じて、一回の操作でまとめて処理する
 という意味になりました。コンピュータ用語としては、特定の
 処理を後でまとめて行うことを指します。毎日行うなら「日次
 バッチ」、夜間に行うなら「夜間バッチ」などと呼びます。

最近では2020年1月にWindows7がサポート終了となりましたので、
覚えておられる方も多いと思います。

サポート終了を機にPCの買い換えをされた方も多いと思います。
こういった場合、安全にPCを廃棄しなければなりません。


2. どうしてそのまま捨てちゃダメなのか?

PC(パソコン)はそのままゴミ箱に捨ててはいけません。

いえ、「燃えないゴミだから」とか「リサイクルマークが」とか
いった話ではありません。

PCは情報機器です。
情報機器には情報が含まれています。
特に業務に使う機器ではそのほとんどが秘密情報です。

個人の機器だって、パスワードマネージャにパスワードを覚え
させていたり、家族の写真や確定申告の申請書だとか他人に知られ
たくない情報が入っているのが普通です。

ですから、情報をキチンと消去してから捨てないとダメなのです。

あ、話をまぜっかえしますが、情報を消したからといってそのまま
ゴミ箱にポイはやっぱりダメですよ。
お住まいの市町村のルールに乗っとって処分してくださいね。
その手続きが面倒なら中古屋さんに売るというのも一手ですね。


3. パソコン内の情報をホントに消していいのか?

PC(パソコン)のデータを消す前に消えると困るファイルがない
ことを確認しましょう。

例えば、ソフトウェアのライセンスファイル、ChromeやFirefox
ブラウザのブックマークとパスワード、過去のバックアップファイ
ルなどは、事前にコピーを取っておきましょう。

また、使用ライセンスがそのPCに限定されているソフトは使え
なくなります。代表的なのがノートPCに添付されているOSや
オフィスソフトの類です。

もし新しいPCでそのライセンスを再利用したいのであれば、事前
にメーカにライセンス移行が可能かどうか確認しましょう。

こういった確認はファイル削除する前に済ませておいてください。


4. パソコン内の情報を消す

いよいよ、PC(パソコン)のデータを消す方法について解説し
ます。
ファイルの消し方といってもいろんな方法があります。

1)ファイルをゴミ箱に入れた後に削除する
2)ファイル削除ツールを実行する
3)フルフォーマットする
4)物理破壊する


5. ゴミ箱に入れて削除、ではファイルの内容は消えない

最初のゴミ箱に入れた後でゴミ箱の中味を削除するのはごく普通の
ファイル削除方法で、どなたでもご存知のやり方です。
ですが、この方法で削除したファイルは簡単に復活できてしまい
ます。

そもそも、「ゴミ箱を空にする」によってファイル削除をしても
実のところファイルの内容は消さず「ファイルの内容を記録装置の
どこに記録しているか」の情報だけを消すのです。
ファイル削除は記録装置の空き領域を増やすものであり、内容を
抹消することを目的としていないのですから、それはそれで正しい
動作と言えます。

以上より、PCを廃棄する時の削除方法としては通常の削除は
オススメできません。


6. ファイル削除ツールは素晴らしいが、そこまで要る?

さて、その問題をクリアしてくれるのが「ファイル削除ツール」
です。
これにもいろいろなものがありますが、中でも老舗と言えるのは
Eraser というツールでしょう。筆者も使ったことがあります。

このテのツールはどんなことをしてもファイルが復活できないよう
に、かなり徹底的に処理を行います。
具体的には、ファイルの全領域をゼロにするだけでなく、ランダム
な値を書く、特定の値を書く、などと複数回の書き込みを行います。

こんな方法を採るのは、1回ゼロを書き込んだ程度では、微細な
磁気が残ったまま(残留磁気)となり、特殊な機器を使えば、その
信号から元の値を復活できる可能性が残っているためです。

とはいえ、そんな機器は民間にはほとんど出回っていませんので、
国家レベルの機密情報を取り扱っている方でもない限り心配には
及びません。

このテのツールには丁寧な仕事をするが故に処理に時間がかかる
という問題もあります。PCを廃棄したい時は全ファイルを消し
たいのですから、ものすごく時間がかかってしまいます。


7. 完全フォーマットがオススメ

以上を踏まえて、筆者のオススメは「3)完全フォーマットする」
です。

フォーマットというのは、記録装置全体を空とみなして使えるよう
にしてくれるプログラムのことです。

Windowsも含めて多くのOSでは標準プログラムとなっています。

その中にも完全フォーマットと簡易フォーマットの2つがあります。
ます。完全フォーマットというのは文字通り記録装置全体を全面的
にフォーマットするもので、記録装置の全領域の読み書きテストを
含みます。

一方で簡易フォーマットというのは、記録装置の読み書きテストを
最少限にして、フォーマットに時間をかけずにすませる方式です。

勘の良い方は既にお気付きでしょうが、完全フォーマットすれば、
全領域の読み書きのテストを行うわけですから、既存のデータも
上書きされ、きれいさっぱりなくなるのです。

完全フォーマットでは上述の残留磁気までは消えませんが、それを
気にしなければいけない方はごく少数ですので、通常は完全フォー
マットまでやれば十分でしょう。

余談
 完全フォーマットというのは大昔(おおむね1980年以前)には
 ハードディスク装置を買ったらまず行うものでした。
 当時は不良セクタ(出荷時点から読み書きエラーとなる領域)が
 あるのが普通だったため、それを検出して使わないようにするのに、
 必須の作業だったそうです。(筆者もその時代はよくは知りません)

完全フォーマットを行う場合、いくつか注意点があります。

まずは上述の通り時間がかかること。
完全フォーマットは数時間は普通にかかりますので、気長に待ち
ましょう。

もう一つ、誤って簡易フォーマットを行わないことです。
簡易フォーマットでは全領域がエラーなしを前提とし不良セクタの
チェックを行いません。
つまり、データ領域の上書きを行いません。
その分フォーマットに要する時間は少なくて済みますので、便利の
良いオプションなのですが、廃棄する場合には意味がないので避け
てください。
なお、簡易フォーマットは数分もかからずに終わりますので、時間
が短かい場合は、要注意です。

最後に、フォーマットしたディスクは全くの空っぽになります。
ですので、起動させてもWindowsは起動してくれません。別に故障
しているわけではなく、それは正しい動作です。


8. 物理破壊は最強だが、面倒臭い

最後の物理破壊は、専用の機器でハードディスクという部品に
大きな穴を空けて二度と読めなくする方法で、一番強力な廃棄方法
です。

ただし、これもいくつか問題があります。

まず、破壊するのが存外難しい点です。
特にハードディスクはかなりの厚さのアルミ板でおおわれていて
鋭い道具を使っても、人力ではそう簡単に貫通できません。
そんなのでケガをするのもばかばかしい話です。

中古買い取りを行ってくれているお店では、ハードディスクの破砕
機を置いているところもありますが、普及しているとは言えません。
(無料で利用できるところが多いようです)

次の問題はPCから記録装置を取り外すのが難しい点です。
特にノートPCはハードディスクの取り出すのがパズルのように
なっているものが多く、取り出すのにかなりの知識が要ります。

この2点があるため、筆者としては物理破壊はあまりオススメでき
ません。


9. まとめ

多くの場合、PC(パソコン)は使える状態で廃棄することになり
ます。これは相対的な性能の問題に加えて、OSなどのサポート
終了があるためです。

ですが、PCには情報が入っているため、そのまま捨てるわけには
いきません。

そこで廃棄に向けたファイル削除の方法が必要となるわけですが、
筆者のオススメは「完全フォーマット」の実施です。

これには数時間が必要ですが、間違いなく全ての情報を消してくれ
ます。

他にもツールを使う方法や物理破壊を行う方法もありますが、積極
的におすすめできるものではありません。

PCの廃棄というのは面倒ですが、大事な作業です。
廃棄が必要となった時のご参考になさってください。

次回もお楽しみに。

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