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No142 バックアップとリストア その3

このNoteは私が主宰しているメルマガ「がんばりすぎないセキュリティ」のバックナンバーです。
このNoteは2020年1月20日に配信した内容です。

サーバのバックアップについての続きとなります。

前回までにサーバの種類によってバックアップの目的や手順が
異なることを解説しました。

今回は前回も予告しました通り、最も一般的なファイルサーバの
バックアップについて解説します。

目次

1. 個人用パソコンとサーバのバックアップは違うの?
2. バックアップ対象のファイル数の違い
3. サーバのバックアップは毎日必要
4. バックアップソフトの活用
5. フルバックアップと差分バックアップ
6. 夜間実行(スケジュール実行)機能

1. 個人用パソコンとサーバのバックアップは違うの?

前回も少し書きましたが、ファイルサーバの場合は大事なファイル
を安全に保管しておくことが目的です。

とすれば、個人用パソコン(PC)のバックアップと何が違うの
でしょうか?

『「完全性」とか「可用性」とか難しいこと言うけど、ファイルを
コピーして保管するだけなら個人用PCといっしょでしょ』と思い
ませんか?

それは間違っていないのですが、ファイルサーバでは個人用PCと
大きく異なる点がいくつかあり、注意が必要です。


2. バックアップ対象のファイル数の違い

まず、個人用PCに比べてバックアップすべきファイルが圧倒的に
多い点があげられます。

個人用PCの場合は、USBメモリやCDやDVD(書き込み可能な
もの)にコピーをとることで、いざ機器が壊れた時にバックアップ
を使い、他のPCで作業を続けることが可能です。

ですが、ファイルサーバはみんなのファイルが入っているわけです
から、USBメモリやDVDでは全員のデータがバックアップでき
ません。容量が足りないためです。

コピー先の機器としては、外付けのハードディスクが単純明快で
わかりやすいでしょう。

余談になりますが、LTO(磁気テープ装置)は長期保存に非常に
強いため、今もバックアップ用途ではよく利用されています。
磁気テープというと古臭いイメージですが、今も新製品が登場する
現役の機器です。
ただ、最新の規格の装置はかなり高価ですので、よほどの理由が
なければ外付けのハードディスクの方が現実的です。

話を戻します。
ファイルが多いということは、バックアップにもリストア(復元
すること)にも時間がかかるということでもあります。

例えば、一人分のファイルのバックアップが1時間かかるとしま
しょう。
個人用PCなら1時間くらいは何とでもなりますが、ファイル
サーバにはみんなのデータが入っていますから、その分バック
アップ時間も増えます。12人が使うファイルサーバなら12
時間かかることになります。

一般にバックアップはサーバを使っていない時に行いますので、
夜の9時に始めると翌朝9時まで終わらないことになります。
さらに24人が使うファイルサーバだとバックアップに丸一日
かかりますから、全く現実味がありません。


3. サーバのバックアップは毎日必要

さらに、サーバは毎日バックアップをとらなければいけません。

個人用PCなら、1時間で終わる作業ですから、自分の業務の
空き時間を見つけて実行できます。
また「今日は外出しててファイル更新してないから、バックアップ
はいいや」という判断も可能です。

みんなが使うサーバでは毎日全員に聞いて回るわけにもいきません。
どうしても、バックアップは毎日取らざるを得ません。

となると、上で書いたように人数が増えるにつれてバックアップ
自体にひどく時間がかかるようになってしまいます。

ここまでは、手作業でファイルをコピーすることを前提としてきま
したが、ファイルサーバではどうも成立させることが難しそうです。

まず、コピーに時間がかかりすぎますし、毎日誰かが夜まで残って
手作業でコピーというのもあり得ませんから。


4. バックアップソフトの活用

手作業が無理となれば、バックアップソフトを活用しましょう。

ここまでで問題になったのは、大きく2つ。
1)コピーに必要な時間が長すぎる
2)毎日夜間に手作業で実施などできない

この2点はいずれも、バックアップソフトで解決できます。

ここで解説する範囲であれば、Windows Serverにタダでついてくる
もので十分に働いてくれますので、ご安心を。

ここでは、バックアップソフトの2つの機能を解説します。

1)フルバックアップと差分バックアップ
2)夜間実行(スケジュール実行)機能


5. フルバックアップと差分バックアップ

フルバックアップというのは、ことばの通り、現データの全ての
写しをコピーすることです。

一方、差分バックアップというのは、前回のバックアップした後
で変更されたファイルだけをバックアップするやり方です。

紙の書類で考えてみましょう。

100枚でワンセットの書類(契約書をイメージしてください)が
あるとします。

書類が完成したので複写を作っておくのが、フルバックアップです。

その後に、原紙が1枚だけ差し替えになったとします。

さて、もう一度100枚の複写を取ったとすれば、それはフルバック
アップです。
一方、変更した1枚だけを複写し「○月△日、□ページを差し替え」
というメモを張り付けて前回のフルバックアップと両方を保管する
方法を、差分バックアップと呼びます。

この差分バックアップは、前回のフルバックアップとの違い分だけ
をコピーし直すのですから、フルバックアップより、ずっと少ない
容量/時間でバックアップできるのが最大のメリットです。

最初に多人数のバックアップを作成しようとすると一晩かかると
いう例を示しましたが、これは常にフルバックアップを行おうと
するためです。

一日の作業で変更するファイルは全体のほんの一部です。
フルバックアップなら何時間もかかる作業であっても、差分バック
アップなら、数分から数十分で全員分のバックアップが終わります。


6. 夜間実行(スケジュール実行)機能

バックアップソフトでは、どのタイミングでどんなバックアップを
させるかを細かく指定できます。

フルバックアップと差分バックアップを組み合わせて、次のような
1週間1サイクルとするスケジュールがよく使われます。
 日曜日:(0時開始、自動)フルバックアップ
 月曜日:(0時開始、自動)差分バックアップ(1)
 火曜日:(0時開始、自動)差分バックアップ(2)
 水曜日:(0時開始、自動)差分バックアップ(3)
 木曜日:(0時開始、自動)差分バックアップ(4)
 金曜日:(0時開始、自動)差分バックアップ(5)
 土曜日:スケジュールなし

このように最初に登録しておけば、後はソフトがバックアップを
作成してくれますから安心です。

このようにフルバックアップと差分バックアップを組み合わせる
のは、どちらにもメリットとデメリットがあるためです。

フルバックアップは作るのに時間がかかりますが、フルバック
アップがあれば、どんなファイルも間違いなく元に戻せます。

ですが、差分バックアップの場合、それだけがあっても全体を
元に戻すことはできません。変更があったファイルしかないから
です。

先ほどの100ページの書類の例に出したように「○月△日、
□ページを差し替え」というメモが付いた差分だけがあっても
どうにもなりませんものね。

バックアップというのは簡単そうに見えて実に奥が深いです。

今回の内容はバックアップのほんの入り口に過ぎません。
興味のある方は、ソフトメーカが提供しているユーザ事例などを
ご覧になってください。

次回は、バックアップについてもう少し話を続けます。
次回もお楽しみに。


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