No304 意外に知らないネットワークケーブルのこと
先日、とあるサイトで「ネットワークケーブルに種類があるって知ってた?」という内容の記事を見つけました。
確かに日頃はケーブルの種類なんて気にしませんから、知らない方も多いかもしれません。
今回はそんなネットワークケーブルのお話をしたいと思います。
ネットワークケーブルの種類?
ネットワークケーブルって何?ってところから。
有線でコンピュータをネットワーク接続する方法はいくつかあります。
最もポピュラーなのはネットワークケーブルやLANケーブル(ランケーブル)と呼ばれるもので、両端には四角いコネクタ(透明のものが多いが白や黒いものもある)が付いています。
この見た目は筆者がネットワークを使い始めた1990年代から変わっていませんので、もう30年以上使われていることになります。
さて、ネットワークケーブルの見た目は昔から変わっていないと書きましたが、その中に流す信号は高速化のために、随分と変わってきています。
実際、量販店などの店頭でネットワークケーブルを見ますと、最大100Mbps、1Gbps、10Gbpsといった最大通信速度が商品に記載されています。
どう見ても同じにしか見えないケーブルなのに、何が違っているのでしょう?
実はいろいろあるネットワークケーブル
最初に書いたように、筆者がネットワークを使い出したころは10Mbpsでした。
今となってはDVDの動画も見られない程度の速度ですが、当時はデータの主流が文字データでしたので10Mbpsでもそれほど困りませんでした。
さて、時代が流れると、Web、動画、といった大量のデータを必要とするコンテンツが増えてきますので、それに合わせてネットワーク規格も進化します。
当初は10Mbpsだった、10Base-Tは、100Mbps対応の100Base-TX、1Gbps対応の1000Base-T、さらには10Gbps対応の10GBase-Tといった具合に規格の刷新が行われていきます。
それぞれの通信規格の要求に合わせてネットワークケーブルの規格(カテゴリ)も進化します。
10Base-T時代にはカテゴリ3から始まった規格ですが、現在はCAT5e(カテゴリ5エンハンスド)やCAT6がよく使われるようになっています。
一覧にするとこんな感じ。
通信規格 : ネットワークケーブル規格
10Base-T : CAT3、CAT4
100Base-TX : CAT5、CAT5e
1000Base-T : CAT5e、CAT6、CAT6A
10GBase-T : CAT6A、CAT7、CAT8
とはいえ、この表にない組み合わせでも、結構使えたりするのが面白いところです。
例えば、古いCAT3やCAT4のケーブルでも100Base-TXで通信でき、CAT5のケーブルで1000Base-Tで使えたりします。
この理由はカンタンで、上記の表は100メートル(最大長)のケーブルでも相手とエラーなく通信できることを保障しているものだからです。
ケーブル長が十分に短かければ信号が劣化する前に相手に届くため、100メートルだとエラーになるようなケーブルでも使えちゃう、という話です。
逆に言えば、広いフロアを使っている場合やサーバを別室に置くなど離れた場所に設置することがわかっている場合は、規格に合ったケーブルを使うのが無難ということになります。
ちなみに、ケーブルの品質が悪いなどで通信エラーが多発する場合は、ハブ(HUB)やパソコン(PC)が使用する通信方式を古いものに変更します。このため、通信速度は落ちますが通信できなくなるわけではありません。
で、実際にナニが違うのよ
では、実際にケーブルの何が違っているのでしょうか?
そもそも通信品質はなぜ劣化するのでしょうか?
主な要因は、1) 線材の抵抗、2) 周辺のノイズ、の二つです。
線材の抵抗というのは、電気を流す電線の抵抗値のことです。
抵抗値が大きければ大きいほど、電気が流れにくくなります。
電気が流れにくいとそれだけ信号が崩れて伝わることになります。
抵抗値は、線が細いと大きくなり、線が長くても大きくなります。
また、電線の素材によっても抵抗値は大きく変わります。
つまり、抵抗値を減らすには線を太く短かくし、良い素材にすれば良い理屈です。
実際、CAT5eに対して、CAT6では線材が少し(2割程度)太くなっているようです。(このあたりはメーカによっても異なります)
とはいえ、線を太くするには材料がたくさん要りますからお高くなります。
また、短かいケーブルしか売ってなければ、利用者が困ります。
また、電線を金(Gold)にすれば抵抗値はかなり下がりますが、コストがえらいことになります。
結局、線材についてはメーカ側でできることはあまりないのが現実です。
ノイズ対策がケーブルの違い
というわけで、ノイズ対策の違いが実のところネットワークケーブルのカテゴリの違いということになります。
ネットワークケーブルには内部に八本の線が入っています。
なぜ八本なのか?とについてはいろいろあるのですが、細かい話になるのでここでは割愛します。
その八本の線はバラバラのままではなく、二本ずつペアにして撚(よ)っています。
しかもその撚る回数も厳密に規定されていて、ペアによって回数を違えています。
というのは、ペアになった撚り線はコイルの一種ですので、(わずかですが)周辺にノイズ(電磁波)をばらまきます。そのため、撚る回数を変えて発生ノイズを一部の周波数帯を偏らないようにしています。
この撚る回数はCAT5eよりCAT6の方が多くなっています。それによって対ノイズ耐性を増やしているのです。
余談
撚り対線(ツイステッドペア)にするのは、ノイズを検出しやすくするための工夫です。
ペアにした二本の線には同じ信号を逆相で送り込みます。
逆相は信号のプラスマイナスを逆にした信号のことです。
この信号を受ける方は、受信後に二つの信号を合成(足し算)します。
逆相の信号を合成すれば、相殺し合って常にゼロになるはずです。
ゼロでなければ、即ちノイズの影響です。
こうすればノイズの影響を補正して正しい信号が再現できるというわけです。
見た目がそっくりなCAT5eとCAT6のケーブルですが、両者を並べて見るとCAT6の方がわずかに太いことがわかります。
また、CAT5eよりCAT6の方が明らかに固く曲げにくくなっています。
これはCAT6には内部に十文字のセパレータ(撚り対線を1組ずつ分けるためのプラ部品)が入っているためです。
このセパレータを入れておけば撚り対線の間隔をあけられますから、ノイズの影響を受けにくくなるということです。
なお、カテゴリ6のケーブルにはCAT6とCAT6Aという二種類があります。
CAT6Aは、CAT6にさらに外部シールド(外部からのノイズを吸収する金属皮膜)を加えたもので、さらにノイズ耐性が高くなります。
そのため、外部シールドのないCAT5eやCAT6をUTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブル、CAT6Aなどのシールド付きをSTP(Unshielded Twisted Pair)ケーブルと呼びます。
家庭や普通の事務所(テナントビルなど)ではCAT6で十分と思いますが、高電力の装置(電気溶接とか)を使う工場などではCAT6Aやさらにノイズに強いCAT7などを用いることも多いようです。
まとめ
2023年時点はGbE(ギガビットイーサネット)は一般化しましたが、その上の10GbE(10ギガビットイーサネット)となると、まだまだ普及しているとは言いづらい状況です。
ネットワークケーブルは、見た目に違いがわからないものが多いのですが、産まれた時代によって、中の構造はそれなりに進化しています。
現在はCAT5e(カテゴリ5エンハンスド)やCAT6(カテゴリ6)を使う場合が多いと思いますが、少し古いものであれば、CAT5(カテゴリ5)のケーブルもまだまだ現役というとことも多いことでしょう。
古いケーブルだからといって通信ができなくなることはまずありませんし、十分な速度で通信できることも多いようです。
これはケーブルのカテゴリ規格は、最大長である100メートルのケーブルでも最高速度で通信できる前提だからです。
同じ仕様で作られている10メートルや20メートルのケーブルは、その意味でオーバスペックなんですね。(だからといって低い仕様で作られても困りますが)
ケーブルを購入する場合、家庭や事務所ではCAT5eかCAT6を選択することになると思います。通常利用ではどちらでも困ることはないと思いますが、新たに買うのであれば、CAT6が一般的なオススメとなります。
もっとも、CAT6ケーブルは固くて取り回しがしにくいので、あえてCAT5eを購入するという選択肢もあると思います。
ちなみに、筆者は今もCAT5eケーブルを愛用しています。
今回は、ネットワークケーブルについてのお話でした。
次回もお楽しみに。
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