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ギガって何?(379号)

前回、前々回と組織論の話が続きましたので、今回は軽い目の話題として「ギガ」についてお話をします。

「それくらい知ってるよ」という方も多いと思いますが、いろいろとネタを盛ってます。
好気心の旺盛な皆様ならきっとお楽しみいただけると思います。


「ギガが足りない」

2024年現在も現役なのかは知りませんが、「ギガが足りない」という表現は2016年あたりから使われているようです。

ここでいう「ギガ」は、キロメートルのキロ(K)やデシリットルのデシと同じく接頭語(接頭辞とも)と呼ばれるもので、本来は単位(メートルやリットル)の補助記号です。

ちなみにキロが1000を示す接頭語なのに対して、ギガは1,000,000,000(10億)を示す接頭語です。

つまり、「ギガが足りない」のギガとはギガバイトのことを示します。

さて、バイト(byte)はデータ容量を示す単位で、1バイトは1文字の英数字が表現できるくらいの小さな単位です。

あまりに小さな単位ですので、まとまったデータとなると、すぐに何万、何百万というケタ数になりますので、単体ではなく接頭語を付けて表現することの方が多いでしょう。
いくつか例を挙げましょう。
 数十行のメール  :数百バイト
 ガラケー時代の写真:数十~数百キロバイト(KB)、
 スマホの写真   :数メガバイト(MB)、
 DVDの映画   :数ギガバイト(GB)、
 ブルーレイの映画 :20~30ギガバイト(GB)

このギガバイトという表記が定着したので、ギガと略されるようになったわけです。
10キロメートルを10キロと言ったり、60キログラムを60キロと略すのと同じですね。

バイトとビット

バイト(byte)自体、上で書いた通り小さな単位なのですが、さらに小さな単位があります。

ビット(bit)です。これは二進数の1ケタ分で0と1しか表現できません。正に最少サイズと言える小さな単位です。

bitという英単語はすごく古く12世紀には使われていたそうです。意味は「ごく僅かな量」で、今も"a bit of"といった言い回しで使われています。
単位のbitの方はと言うと BInary digiT(二進数の1ケタ)の先頭と末尾を抜き出して作った造語で、1948年に登場しました。最初のコンピュータと呼ばれるENIAC(エニアック)が1945年ですから、その直後には使われていたそうです。

バイトはビット8つ分の単位で、こちらは少し遅れて1962年の登場です。1ビットが0と1しか表せないのに対して、1バイトでは0~255までの値や文字を表現できます。

どうでもいい話ですが、学生バイトなどの「バイト」はドイツ語のarbeiten(アルバイテン:働く)という動詞が語源ですので、全く関係ありません。

キロ~ミリ以外の接頭語

さて、単位がバイトだとわかったところで、話をギガに戻します。

ギガというのは接頭語だと書きました。
接頭語などというといかにも難しそうですが、皆さんも使っているキロやミリも接頭語なんです。

キロ、センチ、ミリを知らない人はいないでしょうし、デシ(デシリットル、デシベル)やヘクト(ヘクトパスカル、ヘクタール)もほとんどの方はご存知だと思います。

この接頭語を覚えるための語呂合わせもあります。(筆者は昭和8年生まれの父から聞いた)
「キロキロとヘクト出か(デカ)けたメートルが弟子(デシ)に追われてセンチ、ミリミリ」
ちなみに、センチというのは雪隠(せっちん:トイレ)のことです。
この語呂合わせには、キロからミリまでの接頭語が順に全て出てきます。

キロ=1000
ヘクト=100
デカ=10
(メートル)
デシ=1/10
センチ=1/100
ミリ=1/1000

このうちデカだけは使ったことないですが、オリンピックなどで10種競技のことデカスロンなんていいますから、全く消えたわけでもなさそうです。

ですが、この中に肝心のギガは出てきません。

昔はキロからミリまでで十分だったんですね。

キロやミリとともにギガも、国際度量衡総会という団体が1960年に規定しました。
この時に規定されたのは以下の通りです。

D=デカ=10
H=ヘクト=100
K=キロ=千(1,000)
M=メガ(メグ)=百万(1,000,000)
G=ギガ=10億(1,000,000,000)
T=テラ=1兆(1,000,000,000)

ところが、これでは足りなくなるケースが出てきます。
そのため、1975年、1991年、2022年と次々とより大きな単位が規定されていきます。

P=ペタ=1,000,000,000,000
E=エクサ=1,000,000,000,000,000
Z=ゼタ=1,000,000,000,000,000,000
Y=ヨタ=1,000,000,000,000,000,000,000
R=ロナ=1,000,000,000,000,000,000,000,000
Q=クエタ=1,000,000,000,000,000,000,000,000,000

こんなの使うのかよ?というくらい巨大な接頭語まで決まってますが、ペタやエクサは「全世界の1年間のメモリ需要」などの統計情報では常連です。今後はもっと大きな単位も使われることでしょう。

いろんなギガバイト

次に、ギガバイトと言っても、いくつかの意味がある点についてお話しておきます。

最初に書いた「ギガが足りない」のギガバイトは通信容量のことを示します。
一般に、キャリア(ドコモやAUなどのこと)との契約では、インターネット上の通信量によって料金が異なります。

当然、使える容量が少ないほど安いわけですが、あまり安いプランだと規定の容量に達した時点で通信ができないor極端に速度が落ちることになります。

だから、自身の使い方を踏まえて、必要な通信容量の契約をしましょう、ということになります。

この「ギガバイト」が通信容量の意味だけで使われるのであれば、これで解決なのですが、ギガバイト(GB)は他にもいくつかの意味で使われているから話がややこしくなります。

その一つは、スマホやパソコン自身の持つ容量(ストレージ)の大きさを示すのに使われています。

スマホの容量(内部に保管できるデータ量)を示す単位はギガバイトですし、パソコンの容量(SSDやHDDと呼ばれる装置の容量)もギガバイトやテラバイトを使います。

2024年現在では、最少でも64GB、大きなものでは1TBのスマホも登場しています。

こちらも、もちろん大きな方が高くなります。この容量は通信速度などとは全く関係なく、保管できるデータの最大量を示しますので、これを越えてデータを保管することはできません。

さらに、ややこしい話ですが、スマホやパソコンで内部計算に用いるメモリの容量もギガバイトを使います。
コンピュータでは、プログラムを実行するには、メモリ(RAM:ラム)と呼ばれる場所にプログラムをコピーしておかないといけません。これはパソコンやスマホを含む全てのコンピュータで共通です。(厳密には1945年のENIACなどは違う方式だったりしますが...)

いくらストレージに空き容量があっても、メモリに空きがないとプログラムは実行できません。
パソコンの宣伝などでメモリ16GBなどと書かれているのがソレです。
(スマホやタブレットでは混乱を避けるためか、メモリ容量は明記されないようです)

通信速度のギガはまた別

実は「ギガ」はまだあります。
今度は通信容量ではなく、通信速度を示す時に使われるものです。

例えば、NTTのフレッツ光では「フレッツ光クロス 10ギガ(Gbps)」という宣伝文句が踊っています。

この10ギガというのが2つの意味で誤解を招く表現になっています。
一つは、10ギガが10ギガバイトではないという点、もう一つは10ギガが容量のことではなく通信速度を示しているという点です。

最初の10ギガが10ギガバイトではないというのは、通信速度だけは「ビット」を単位として使うのが慣習となっている点です。

上でも書いたように、バイトとビットは違います。
1バイト=8ビットです。バイトに換算するなら、1/8にしないといけません。
つまり、通信速度の10ギガ=10ギガビット=1.25ギガバイトとなります。

なんだか詐欺に合った気分でしょうが、通信というものは基本的にシリアル(1本の線でデータ送信する)の仕組みです。
1本の線に1秒にどれだけのデータを送信できるかを示すにはビットの方が好都合で、バイトで表記する方が混乱を招くからです。

ですので、上で書いたNTTの売り文句も最後には「(Gbps)」とカッコ書きで補足してありますよね。
このGbpsという略語は「Giga bits per second:ギガビット毎秒」の略です。

容量と速度という異なる指標が同じ表記となるのに異和感を持つ方もおられるでしょうが、これも我々が日常的にやっていることです。

クルマで「この車種は120キロでも非常に静かだ」と言えば「時速120キロで走っても」の意味だと誰でもわかります。同時に「試乗は120キロに及んだが問題はなかった」とあれば120キロメートルを試乗したことがわかります。

とはいえ、ギガなんて多くの方にとっては慣れない単位なのです。
販売側が混乱しない表記を心がけることが好ましいのは言うまでもありません。

関係ないはずの5Gも...

ギガとは違うもので、ギガと間違われやすいものがあります。
ケイタイの通信規格の世代(Generation)を示す5Gとか4Gの表記です。

これ、5Gというのは5th Generatiuonつまり第5世代を、4Gは 4th Generataionで第4世代を示すのですが、年配の方はもちろん、若者の間でもこれをギガと間違っている方がおられます。

4Gから5Gになることで、通信方式が改善されることで速度も向上はするのですが、別に4ギガから5ギガになったわけではありません。

実際、5Gになると理論上は4Gの最大20倍もの速度になるようです。

2020年に鳴りもの入りで始まった5Gですが、なかなか普及率は上がらず、開始から4年経った2024年3月時点でも40%程度の普及率と言います。

スマホはバッテリ劣化もありますので、2~3年で買い換える人が多いでしょう。
ということは、わざわざ4G端末を選ぶ人がかなり多いわけです。

4Gと5Gの"G"をギガと思い込み「大して速度は早くならないんだ」という誤解している人が多いとすると、えらい誤解が拡がったものだと思います。(そんなことはないと思いたいところですが)

ちなみに、5Gは「ファイブ=ジー」「ごジー」などと読みます。この点でもギガではないことがわかります。

まとめ

今回は、ギガという言葉についていろいろとお話をしました。

これは接頭語と呼ばれる単位の補助記号で、国際度量衡総会という団体が規定しています。ギガはその中でも最古参の一つで、1960年には制定されたようですから、その先見の明には驚かされます。

ギガというのは10億を示す接頭語で、バイトという情報量を示す単位に付けてギガバイトと書くのが本来です。

ギガバイトという情報量は様々なシーンで使われます。スマホなどの契約時の最大容量、スマホやパソコンの保管領域(ストレージ)の容量、コンピュータのメモリ(RAM)容量などいずれもギガバイトという単位が用いられます。

ちょっと毛色の違うところでは、インターネットの接続業者(ISP)との契約に使われる回線速度でもギガが使われますが、こちらはギガバイトではなく、ギガビット毎秒という通信速度を示す指標になります。

ギガといってもいろいろあるのですね。

また、ケイタイの通信規格である4Gと5Gの"G"は Generation(世代)の略号で、「ジー」とそのまま読みますが、これをギガと誤解している方もそこそこおられるようです。

余談ですが、ロバート=ゼメキス監督の映画"Back To The Future"の中で「ジゴワット(jigo watts)」という謎の接頭語が出てきます。
これは脚本家がギガワット(giga watts)のつもりでジゴワット(jigo watts)と書いてしまい、それに誰も気付かず最終稿まで残った結果だそうです。
当時はギガなんていう単位が全く認知されていませんでしたし、英語圏ではギガのことを「ジゴ」と発音する地方もあるそうですから、やむを得なかったのでしょう。

今回は「ギガ」についてのお話でした。
次回もお楽しみに。

(この記事は2024年11月に執筆しました)

このNoteは私が主宰するメルマガ「がんばりすぎないセキュリティ」からの転載です。
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