No223 メールが届く仕組み

電子メールは、コンピュータによるコミュニケーション手段としては最古参ですが、今も多くの方に利用されています。

このメルマガもメールですしね。

ですが、メールの送受信の仕組みについては意外に知られていない
ようです。

今回は、このメールサービスの仕組みについて解説します。


1. メールは相手に直接送っているわけではない

「メールは送付先に直接送ってない」なんて言われると面食らい
ますよね。

だって、メールは「送信」ボタンを押せば相手に届きますし、受信
する時だって、先方が送ってくれたらちゃんと自分のパソコン(PC)
やスマホに届きます。直接送っているようにしか見えません。

ですが、ちょっと考えると妙な点に気付きます。

あなたがPCやスマホの電源を落としていてもメールはちゃんと
届いています。逆にあなたがいつメールを送ろうと「送信先のスマホ
は電源が入っていません」なんてエラーは出ません。

どうなっているのでしょうか?


2. 24時間いつでも動いているメールサーバ

実は、メールの送受信は、メール受取&配布専用のメールサーバと
呼ばれるコンピュータが行っています。

メールサーバはそれぞれのドメインごとに存在しており、そのドメ
イン向けのメールは全て受け取ります。いつメールが届いても大丈夫
なように、メールサーバは24時間365日働き続けています。

PCやスマホの電源が落ちていようが、電波が届かない場所にいよう
が、メールサーバはいつでもメールを受け取ってくれます。

PCやスマホの電源を入れ、メールソフトを起動すると、そのソフト
はメールサーバに「新しいメール来てない?」と聞くのです。
メールサーバが「ああ、新着が来てるよ」と返すと、メールソフトは
メールサーバからメールを受け取り、それを利用者に「新着メールが
あります」などと表示するわけです。

利用者からは今届いたかのように見えても、送った人とっては、何
日も前に送ったメールで、メールサーバの中でずっと受信を待って
いたのかもしれないわけです。

言ってみれば、メールサーバは下宿屋のおばちゃんが宅配便を代理で
受け取ってくれるのと同じで、メールを全て受け取ってくれるのです。


3. POP3とIMAP4

この「新着メールある?」「うん、来てるよ」といったやりとりは
利用者が知らないうちに裏方の仕事として行います。こういったコン
ピュータ間での情報のやりとりをプロトコルといいます。

メールの到着を知るためのプロトコルにはPOP3(Post Office Proto-
col version3)とIMAP4(Internet Mail Access Protocol version4)
の2種がよく使われます。

このPOP3(ポップ=スリー)とIMAP4(アイマップ=フォー)という
コトバはメールソフトの設定で必ず出てきますので、「見た覚えが
ある」という方もおられることでしょう。

そう、POP3とかIMAP4とかいうのはメールが届いてるかどうかを知る
ためのプロトコルなんですね。
もっとも、メール到着を知るだけでなく、届いたメールの情報(誰が
いつ送ったか、その内容は何か)を全て得ることができます。

なお、POP3とIMAP4では、おおむねできることは同じです。
敢えて言えばIMAP4の方が軽い動作と感じるかもね、程度のものです
ので、どちらを選択していただいても大きな違いはありません。

余談
 繰り返しになりますが、POP3はPost Office Protocolの略です。
 これは直訳すれば「郵便局プロトコル」となります。
 これは郵便局の私書箱をイメージした名称なんだそうです。
 私書箱では、郵便物が届いても受け取り人への通知は行いません。
 受け取り人が郵便局に行き「郵便物届いてます?」と聞いた時に
 やっと郵便物が届いていたと知ることになります。
 POP3もメールサーバに「メール来てる?」と確認して初めて
 メール到着がわかるのですから、郵便局(の私書箱)と同じです。
 これを「郵便局プロトコル」とするセンスはすごいと思います。


4. メールを送る時は?

さて、メールを受け取る時はPOP3やIMAP4を使いますが、メールを
送る時はどうするのでしょうか?

ここでもメールサーバが登場します。
メールサーバはメールを受信するだけでなく、送信する時にも
使われるのですね。メールを送りたい時にはメールソフトとメール
サーバが通信をしているわけです。

このメールを送る時には、POP3でもIMAP4でもない別のプロトコル
を使います。
これはSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)と言い、POP3やIMAP4
がメール受信専用なのに対し、メール送信専用のプロトコルです。

このSMTPもメールソフトの設定を行う時には登場しますので、聞い
たことがある方もおられるでしょう。

メールを送る時とメールを受け取る時で別々の通信方式を使うなん
て無駄ではないのでしょうか?送信時と受信時にメールサーバに
伝える情報を比べてみましょう。

○送信時にメールサーバに伝える情報
 ・送信元のメールアドレス
 ・送り先のメールアドレス
 ・タイトル
 ・メール本文

○受信時にメールサーバに伝える情報
 ・受信したいメールアドレス
 ・そのメールアドレスのパスワード
 ※上記での認証後、メールサーバは届いているメール情報を
  教えてくれる。

いかがでしょうか。
両者では必要な情報がまるで違います。だから、送信時と受信時で
利用するプロトコルも違っているのです。

ところで、このSMTPという方式はインターネットの中でも最古参の
プロトコルのひとつで、悪意を持った利用などは一切考慮ができて
いないプロトコルです。(それだけインターネットが使える人が
少数だったということです)

このあたりの事情については、次回に解説したいと思います。

5. まとめ

メールは、送る人から受け取る人に直接送っているわけではなく、
メールサーバという専用のコンピュータが中継を行っています。

もっとも、メールサーバは裏方さんで、ほとんど表には出てこず、
メールソフトとだけ通信をしています。

そのメールソフトとメールサーバの間では、送信時にはSMTP
(Simple Mail Transfer Protocol)を、受信時にはPOP3(Post
Office Protocol version3)やIMAP4(Internet Mail Access
Protocol version4)が使われます。

なお、セキュリティ視点では特にSMTPはいろいろと問題を抱えて
いるプロトコルです。
次回は、その対策について解説をしたいと思います。

次回もお楽しみに。

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