見出し画像

食品レジ係~消えゆくピッピたち~

レジの仕事

スーパーでは売場ごとに部門分けされていて、食品レジ係は「食レジさん」とか「チェッカーさん」と呼ばれている。
子連れのお母さんはこどもに、「ピッピしてもらおうね」と言っているので、「ピッピ」でもあるかもしれない。

現代においてこの「ピッピ」は、もはや用無しの存在でもある。10年後にはもう存在してないだろう。

主な仕事は、「商品のバーコードをスキャナーで読み会計をする」ただそれだけなのだけど、意外と奥が深いのである。


警戒心を解く


まずは序章。「いらっしゃいませ~」でお客さんの警戒心を解く。特に女性は警戒している人が多いので、警戒心を解くことで後々自分に降りかかるストレスを回避することができる。このストレスについては、あとで書こう。


スピード命


ちんたらやっているとお客さんがイライラしてしまうので、暇なときでもある程度の速さでやらなければならない。
遅いとイライラされて「適当でいいから」と言われ、早いと「ありがとう」と言ってくれる。
(どうせ数秒しか変わらないのに…)
(どうせ家に帰ってもゴロゴロ時間を過ごしているだろうに…)
(適当でやったら怒るじゃん‼‼)

(((((すみません、心の声が漏れました…)))))


カゴ入れ


これがレジの醍醐味かもしれない。あらゆる商品をカゴの中にきれいに収納するのだ。
長いものも、重いものも、細々したものも、お客さんの購入品を傷つけないように、尚且つ取り出しやすいように丁寧に収納する。

半玉のキャベツとバナナを組み合わせたり、牛乳の口とカゴの端が平行になるようにすると卵が置けたり、人生において役に立たない技術を習得した。
もはやパズルゲームなのだ。

ちなみにわたしのモットーは「基本重い飲み物は横に入れない」だ。横に入れるとお客さんが取り出しにくくなってしまうので、マイカゴでのみやるようにしている。(マイカゴはそのまま持ち帰るので不安定だと危ないため横にしている)


会計


そして、最後に会計をするのだが、ここで最もやってはいけないミスがある。テレコだ。

最近の地方のスーパーは、商品登録だけしてあとは会計機にデータを転送するところが多い。1つのレジに2つの会計機があるところは、案内ミスでテレコが発生することがある。

つまり、他人の会計を自分がするということだ。
店員として考えただけでもゾッとする。

なので、わたしたちピッピはどんなに忙しくても、会計のミスだけはないように日々神経を使っている。
(と言って今日ミスしてしまった…お客様ごめんなさい(m´・ω・`)m ゴメンナサイ…)

このミスにもいろいろと原因があるのだが、割と心理的要因も大きいと勝手に思っている。



ミスとストレス

ミスが起きる要因としてざっくり挙げると、
①確認不足
②忙しすぎる
③ストレスや疲れ

①確認不足は、スキャナーの画面を見ていないことで起こるので、複数商品があるときやバーコードのない画面操作の商品、値下げ商品などは、必ず画面を見て呼称しなければならない。

②忙しすぎるときは、大型連休と店企画の割引日だ。わたしのいる店は専門店が入っているのでまあまあ大きいのだが、食品売り場の端から端まで列をなすことがある。(帰りたい…)

最後の③ストレスや疲れが一番危ない。ストレスは、正直言って接客においてのストレスだ。
すごく些細なことなのだけど、例えば

例①
客「袋お願いします」
ピ「大きさはいかがいたしましょう」
客「入るやつで」
ピ(イライライライララララライッラララライッ‼‼‼‼)

例②
ピ「〇〇円頂戴いたします」➡会計機にデータ転送
客「袋お願いします」
ピ(一番最初に言えやああああああああ‼‼‼ラララライッ‼‼‼)

のように、とてもとても小さいことでラララライッ‼になってしまう。このラララライが溜まると、打ち間違えや案内ミス、クレームにつながるので、どれだけラララライを溜めないかがとても大切になってくる。

ただ、たまにお米などの大型商品のバーコードを予め見せてカートに乗せてくださっているお客様がいるときは、肉体的にも精神的にもとてもありがたい。


推し


といっても、やりがいもある。
お客様とちょっとした会話をしたり、丁寧な応対をしたときに「ありがとう」と言っていただけたときはやっぱり嬉しい。

あと、自分のレジに毎回並んでくれるのはとても嬉しい。わたしはこれを「推し」と呼んでいる。(そのまま)
お客様にも好きな店員がいて、例えば権兵衛という店員がいたら「権兵衛担」「権兵衛推し」になるのだ。


わたしがピッピを選んだ理由

わたしは、「はじめに」でも書いたように、人間界が本当に合わずいわゆる「社会不適合者」なのだが、いろいろあり「一人暮らしを始めればイヤでも仕事を続けられるだろう」と自分を追い込む決意をし、そのときの精神状態で唯一できそうだったのが「食レジ」だったのだ。

わたしの社会不適合についてはおいおい書いていくことにする。



おわりに

今回の仕事のことを書いたのは、日々がんばっているのに「食レジ」という仕事を言っただけで見下されてしまうからだ。
偉い起業家の人たちもよくなくなる仕事で挙げている。
そんなことを聞くたびに「あぁわたしなんでこんなことやってるんだろう」と悲しく空しくなってしまう。

だから、せめて自分だけは「なぜ今この仕事をしているのか」を見失わないようにしたかったから。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?