ことばを知ること
いつも愉快なおじさんがいた。
聴覚障害のあるおじさん。
最初はおじさんのジェスチャーを見て、なんとなく言いたいことが分かる程度だった。
こっちは内容をほとんど理解してないのに、話したいことはたくさんあるみたいで止まらない。
いいきっかけだし、おじさんのためにも手話を勉強してみようと、市のイベントにブースを出していた手話の会に電話をして入会した。
思いのほか面白くて、どんどん覚えた。
手話の会の成果もあり、少しずつ手話で聴覚障害のある方とやりとりができるようになると、相手のひととなりが見えるようになった気がした。
その人のイメージにかかっていたモヤモヤが、少しずつ晴れていくような感覚。
手話の会で習った手話を、おじさんで実践するようになった。少しずつ、おじさんとも心が通うようになった。
おじさんの言葉は手話。
わたしは会話をするとき、頭の中で言葉を選ぶ。おじさんの頭の中はどうなんだろう。
おじさんの言語で少しずつコミュニケーションがとれるようになり、おじさんの世界に少しだけ入れた気がした。
おじさんが教えてくれたこと。
相手の言語で会話ができると、世界が広がること。
手話だけじゃなくて、例えば英語とか。その人のもつ言葉を知ることとか。
相手の言語を知ることって素晴らしいことだと教えてくれた。
おじさんと手話で話すことはもうできないけど、おじさんが教えてくれたことは忘れないよ。
ありがとう!
そっちの世界でも楽しくやってね。