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詩/幸福論
唇から紡ぐだけで甘やかなその響きを幸福と言うのだと最近知った。
それが訪れるのは酷く突然で、一体どんなタイミングで来ているのかはわからない。
例えば、好きな歌を口遊む時。
例えば、レストランで好物を注文する時。
例えば、日向ぼっこをする飼い猫を呼んだ時。
例えば、あの人への朝の挨拶。
そして、例えば。あの人の名前を呼んだ時。
奥歯で花の蜜をじゅっと噛み締めた時と酷似したその痺れるような甘さは、私の表情を緩りと溶かしてしまう。
きっと、情けない、少し泣きそうな笑顔をしているのだろうな、と自分でもわかる。
そんな私の表情を、振り向くあなたが嫌わなければいい。
そう、願った。
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