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しいな ゆん
2022年10月26日 21:46
傷痕から花が咲けばいいのに、と思ったことがある。四葉のクローバーは幸運の象徴と言われるけれど、その見た目は愛されるけれど。実際、その4枚目の葉は他の葉が成長時に傷付いたことで出来るのが殆どだ。人の傷痕はどうやってもただの汚点にしかならないらしい。刺さるような目線に、傷が増えたような錯覚を覚える。同じもの、その筈なのに。ついているものが違うだけで、こんなにも人の目線は違う。自分の
2022年9月23日 23:32
唇から紡ぐだけで甘やかなその響きを幸福と言うのだと最近知った。それが訪れるのは酷く突然で、一体どんなタイミングで来ているのかはわからない。例えば、好きな歌を口遊む時。例えば、レストランで好物を注文する時。例えば、日向ぼっこをする飼い猫を呼んだ時。例えば、あの人への朝の挨拶。そして、例えば。あの人の名前を呼んだ時。奥歯で花の蜜をじゅっと噛み締めた時と酷似したその痺れるような甘さ
2022年8月5日 23:29
小さい頃からそれを上手に食べきった試しなんかない。口に含みすぎれば、きぃんと頭に響くし舌は痺れる。とはいえ少なければあっさりと口の中で溶けきってしまい物足りない。その加減が、どうにも不器用な自分には難しい。けれども、その甘さに。舌の痺れもおさまらぬうちに、また大きすぎるひと口を口へ運ぶのだ。ベタつく口元を拭う僕を見て、まるでお前の下手なキスと同じだと君は笑った。- - - -