RSGT 2024へ行ってきました
はじめに
もう既に1週間も経ってしまいましたが、ひとまずの記録として、RSGTこと Regional Scrum Gathering Tokyo 2024 に参加してきましたよ、というのを書いてみました。
面白かったセッション
今回はプラクティス的な、いわゆるスクラムのやり方のセッションよりも、基本的なモノの考え方に対して扱ったものが増えていた気がします。
実際、夜ギャザ(=飲み)でも、他の参加者もそういう印象を受けていた模様。これって、それぞれ自身が参加し始めたころから、何年かが経ち、自分も登壇者の方々も経験値を積んでたり、ポジションが上がっていたりして、目線が上がっているのかもしれないすね。
面白いセッションがたくさんあったんですが、ひとまず幾つかピックアップ。裏番組で見られなかったのも含め、セッション動画を見返さなきゃ終わらないやつ。
ブッダに学ぶ、いのちだいじにアジャイル推進するためのマインド
ミミグリのChimo Kamitokusariさんのセッション。
自分もこの歳になってあらためて、人間の主観というのが人それぞれのモノであり、人の主観ってどうやって生まれるの?みたいな所を仏教の観点から見ることができて面白かった。
とくに、「主観の違いを悲観するとつらくなる」っていうのが刺さって、たしかにいつもそれやっちゃってるなぁ、と。よかれと思って言ってるけど、そもそも相手が欲しい内容じゃないと何言ってるのコイツ?ってなるし、なによりも、話している事が受け入れられないと、自分自身が受けるダメージがデカすぎる、と。最近は多少は配慮できるようになったかもだけど、昔から自分の想いに対するとらわれが大きかったなぁ…と。耳じゃなくて胃が痛い話w
セッション中で教えて貰った、仏教における人を構成する要素を表した五蘊の話が面白かったので調べてみたら、ここがとても分かりやすかったです。
このセッションのキーポイントは、「主観の違いを乗り越えて、いのち大事に緩やかに変化に向かうための3つのマインド」の部分かな。
相手の経験領域を知ろうとする
経験を深掘るインタビューをして理解を深めてみたら?
人は変わる、わたしにできるのはそのきっかけを作ることだけ
受と想にちょっとだけ語りかけ、相手に違う視点を与えてみたら?
私が思う正しさにとらわれていないだろうか?
自分の考えにとらわれすぎて雁字搦めになっていないか?→五取蘊
別セッションで紹介された本とはいえ、マインドセットに関してはこの本を読んでみようかと思った。
ジョーが語る、Teslaでの衝撃的な開発スピード
Teslaの開発プロセスを最適化した、Joe Justiceさんのセッション。
もうね、このセッションを聞いたら、スクラムがどうとか、アジャイル開発がどうとかじゃなくて、TeslaやSpaceXでやっている開発のイテレーションの回し方が異常すぎて、価値観崩壊するかと思いましたわ…。Teslaのあるコンポーネントは、3時間単位に互換性をもってアップデートされ、1gでも軽く、1円でも安くすることを追求し続けている、というお話。SpaceXの話も出てきたけど、そもそも「地球低軌道までの1kgあたりのコスト」を各コンポーネントの観点で考えていく、みたいなKPI作れることがすごいわ。OKRツリーの頂点として相応しすぎる。
掻い摘まんでソフトウェア開発で例えると、全体アーキテクチャがしっかりしていて、APIの規定があれば、十分に疎結合になっているモジュールを、どんな速い速度で回して、どんどん改善しても、良いことしかないよね、という、究極のパラレル作業のお話。しかもTeslaではそれをAIでガンガン回しているという…。
概要に関しては、別の日のちょっと違う内容のセッションだけど、こちらを参考にしていただければと。
検索してたら、まさに昨日(1/17)にアップされた英語でのセッション発見。
RSGTでは逐次翻訳だった事を考えると、同じ40分でも密度倍ぐらいあるのかな?ちゃんと見てみようっと。
で、Joeは認定スクラムマスターのトレーナーもやっていると。
自分が数年前にCSM取得したときのトレーナーはEbacky氏で、スクラムの細かいところがどうこうというよりは、物事の考え方の原理原則に関して徹底的に学んだ気がして、結局いまの自分の血肉になっているけど、ジョーのセッションでCSM研修受けるのも違う側面でめっちゃ得るものあるんだろうな、なんて感じました。
プロダクトをあきらめるとき
アトラクタ主宰の原田騎郎さんのセッション。
軽々しく書くと誰かに怒られそうだけど、自分の理解だといわゆるプロダクトマネージャー(PdM)とプロジェクトマネージャ(PjM)の一番の違いは、PdMは生まれてから看取るまでがスコープに入っていること、だと思ってます。そういう意味では、成功してムチャクチャ稼ぐプロダクトになろうが、全然イケてないけどメンバーの情が詰まってて殺せないプロダクトだろうが、そこをちゃんと見てる人こそ、出来るPdMなんだろうな、と。けっして単なる社内の横軸調整役とか、全体定例だけをやってる人じゃないよ、とw(←誰に言ってるんだろう🤔)
調べによると、世の中のプロダクトの95%は何らか失敗しているとのこと。
ニーズがないモノを作ってしまったら目も当てられないけど、スタートアップのプロダクトでよくあるのが資金のショートやら、競合が出てきちゃったとか。でも、ダメって思った時には、正しくプロダクトを葬るのもお仕事。
サンクコストが怖くて、当てる事が必至になってしまっている例とかも、たしかに自分もこれまで多く見てきた気がする。まだ関係者が少ないタイミングとか、社外巻き込む前とか、人が病みはじめる前とか、そういう所で適切に撤退することが如何に大事か、という事ですね。永遠にPoCやってるとか、ゾンビプロダクトみたいな話は、胃が痛くなってくるぐらい痛感。
今回のセッションでさすがだなぁ、と思ったのが、プロダクトバックログに入れる時に、そのフィーチャーを殺すための見積もり、やっていますか?みたいな話。確かに、いざその機能を抜こうとしたときに、どのぐらい影響がでるか?みたいなこと、実はあまり考えられていないな、と。目先の小銭に目がくらんで、うっかりポイントシステムとか作っちゃって、サービス止めるに止められなくなるとか。
でも、その殺す見積もり作るの難しいんじゃ?という質問に対して、仮の終了のお知らせ(プレスリリース)を作ってみては?というのも面白かった。たしかにプレスリリース駆動みたいな開発手法はあるけど、撤退側で考えるの興味深いな…。
この話を通じて、むしろ撤退のリスクも含めて考えることによって、何をやるべき、やらないべきを磨けて、プロダクトの成功確率が(100%-95%=5%より)ほんの少しでも上がる可能性はありそうだな、と感じました、とさ。
Kano Modelと魅力品質理論
品質に関して学んでると絶対出てくる狩野先生がクロージングキーノート。
狩野モデルといえば、このグラフ。当たり前品質、一元的品質、魅力的品質に分けて、顧客満足度と物理的充足度をグラフにしたもの。
世の中では、狩野先生は既にアメリカに移住して大邸宅に済んでて、すでにご存命ではない、と思っている学生が大勢います、っていう掴みがめっちゃ面白かったw 品質と顧客価値は違っていて、その境界線上には難しいものがあるかも?というフリからの、狩野先生が登壇。
漢字の事を分かったフリになっていませんか?ということで、品質の「質」の字の解説から入ったのがめっちゃ面白かった。たしかに、漢字は文字として捉えるのではなくて、英語でいう1単語として認識し、語源を学ぶことですごい理解に繋がるんだなぁ、と今更ながら再認識。
品質の研究を学会発表しようとしたときに、その学術的調査が足りない、ということでリジェクトされたときに、実はアリストテレスが品質に対して語っていたのだよ、という事を突きとめた話もめっちゃ面白かった。
品質というと、いわゆるQA的な話が来るけど、何かプロダクトを生み出していくという観点においては、そもそもどんな価値を作って行くか、みたいなところにおいて、避けて通れないものであること。また作り手と受け手で見たときに、それって何のためにあるものなのか?みたいな所までのバランスが合っているものでないと、本当の意味で品質の要求を満たすことはできないのだなぁ、という小並感。
それにしても、クロージングキーノートに狩野先生が出てくるあたり、RSGT恐ろしい…。
Open Space Technology(OST)で英語の勉強
今年のDay3のOSTの時間、裏番組の「教育心理学概論」のワークショップにも興味があったんですが、エントリーに出遅れてDay2の朝には定員になってしまって、参加できず。次回からはもっとアンテナ張っておかねば…。
OSTのマーケットプレイス、いままでで一番たくさんのテーマ提供があったんじゃないかな?と言う印象。これ何か良い改善案が必要なのではないか?って思った。なんでも好きなことを話しても良いよ、というのが原則とはいえ、実際にどこに行ったらいいかな?と考える間もなく時間が始まってしまった。
チョウのスタンス(OST用語:いろんなテーブルを覗いて面白そうな所を探すこと)でフラフラしてたら、「エモい英語学習の方法」というテーブルがあり、参加してみることに。ホストの方がメッチャ若いのに英語学習にすごい真剣で、参加者もめっちゃエモくて盛り上がってました。
結果、20分のセッションでは足りず、延長戦が繰り広げられ、SCRUMMASTER THE BOOK の著者であるZuziや、他にも海外の方が何人か参加されたり、英語に堪能な日本人も居て、英語でスクラムとか開発における、ランゲージバリアについて色々ディスカッションするなど、RSGTなのに海外留学気分を味わえるという。
聞き専メインながら、OSTの時間ぶっちぎって、ランチタイムも話続けるほど楽しかった!
昼休みのタイミングに海外参加者の方が、"I SPEAK ENGLISH"のリボンを持ってきてくれて、参加してた面々に配ってくれるとか、もうエモさの塊でしかない。とっても貴重な経験になりました。
しかし、下記のOSTの原則って本当に良く出来てるなぁと思いました。この原則に従って参加している限り、本当に貴重な体験ができたと。
夜のギャザリング(飲み会)
RSGTってことで、やっぱりギャざらなきゃダメでしょう!っていうことで、セッション後の時間もお楽しみなんですが、今年も色々楽しかった。
いやこんな学生インターン居たら今すぐに採用ですよ!って人だったり、セッション中に近くの人とペア組んでワークを…って組んだ人とバッタリ一緒になったり、相変わらず楽しかった!
惜しむらくは、RSGT名物「下の中華」が3日間とも予約いっぱいで入れなかったこと。今年は、「下のエビス」、「下の和食」や「下のタイ料理」が活躍した模様。
楽しかったけど、参加者が散り散りになっちゃうのも勿体ないので、出来れば、コロナ前にやってたような、公式のギャザリングセッションもまた復活して欲しいなぁ、なんてことも思いました。
セッションのメモの取り方
RSGTの特長は、セッションと同時にDiscordで実況戦が繰り広げられること。しかも流速がメチャクチャ早く、そっちに気を取られているとセッションの方もメッチャ進んでしまって大変。
今回はNotionでメモを取ってみた
毎年、メモの取り方は試行錯誤しているけど、VS CodeでひたすらMarkDownで記述したり、iPad+GoodNotesで手書きしたり、さらにGoodNotesならスライドをみてるZoomをMacでスクショして貼り付けたりしてたんだけど、今年はNotionでメモを取るようにした。
理由としては、Discordで流れてくる関連ページや書籍のリンクがEmbedで貼ったり、Zoomのスライドをスクショしてすぐに貼れること。なにより、あとから見返した時に情報が散らないことと、検索性に優れているから。とはいえ、単に受講したセッション毎にページ起こしてひたすらメモるだけども。
たぶん、来年もこのやり方で行けそうだし、他のカンファレンスとかでも使えるなぁと。
Recruiting の場
そういえば、現職に就くきっかけは一昨年のRSGTで、他の候補とは別にもお声掛け戴き、やり甲斐のありそうなロールや待遇を評価いただいた後、結局いまの会社に決めた(そして、そこを卒業し、来月から新しい仕事を始める)のですが、自分の会社や、ロールやチャレンジする事にどれだけ満足していたとしても、主にメンタル面において、もし職を変えるようと思った時は、最終決定はRSGTのあとにしたほうがいいな、と感じましたw(自身を見て、夜ギャザでも言われたw)
隣の芝生は青いの最たる例だと思うんですが、RSGTに来ている人って、同じようなコンテキストを共有できそうで、みんなやり甲斐をもってキラキラしていて、ああ一緒に働いたらどんな世界がまっているんだろう、なんて感じてしまうのは、あるあるな事。なのでその邪念を振り払いつつ、適度にカジュ面などで自分の市場価値や出来ることを見定める、ということは実は大事な事かもしれないなぁ、と。
いうてもう2週間後には、面白いチャレンジをもらって次の職場に行く自分として、迷いが出たとかそういうことじゃなくて、上に書いた様なことを感じないためにも、強い意志と高い目標を持たないと危ないな、とか、羨ましいと思ったなら、自分でその世界感を作ればいいじゃない、みたいなことを再認識した、ということでしたw
まとめ
毎年の事ながら、RSGTはどのセッションもすごく勉強になって、エモい成分が大量に分泌され、同時に自分の能力不足さに(ポジティブな意味で)辛い気持ちになるんですが、それもイイ刺激ということで…。
でも、今年は特にズレに関して気になったのでした。
あれ?自分ってズレてる?
ブッダのセッションが刺さったなぁと感じた背景でもあるんですが、自分って主観が結構ズレてるのか、Q&Aセッションのタイミングとかを聞いていると、(見下してるとかっていう意味ではなく)質問されてる方はなんでここでそんな事聞くんだろう?とか思うことがしばしば。
セッションで話されていることは、前提として登壇者の背景に依存するからそのまま適用することなんて出来ないんだから、エッセンスだけ拝借してアレンジすればええやん?ぐらいの感覚でした。
このズレってなんだろ…って、note書いてていま分かった。共感力とそれに対するズレを言語化する質問力が足りないんだ、と。今更ながら、今年はもっと共感力を上げていくことを常に意識することにしよう…w
ということで、なんだかんだ、RSGTに参加しないと1年が始まった気がしないので、来年以降もチケット争奪戦頑張りましょうか…。
ではまた!