「当たり前に思っていることを疑え」アトリエe.f.t.卒業生インタビュー♯4 藤井桜子
卒業生インタビュー第4回は、2012年度卒業の藤井桜子(ふじい さくらこ)さん!
京都芸術大学を卒業後にフリーランスのグラフィックデザイナーとして活動を始め、最近ではFM802(関西地区を主に放送対象地域とするラジオ放送局)の2020年度のカレンダーデザイン(4月担当)やグランフロント大阪(大阪市北区にある複合商業施設)のガラス扉の装飾デザインなどを手がけられています。
またご自身の作品を展覧会に出展されるなど、イラストレーター、作家としてもご活動されています。
そんな多岐に渡りご活躍されている藤井さんに、アトリエe.f.t.での経験や、現在のご自身の考え方などを語っていただきました!
【団体行動が苦手な幼少期】
ー 藤井さんは現在フリーランスとしてご活動されているそうですが、独立されるまでの経緯を教えていただけますか?
藤井:独立と言いますか、私は一度も就職せずに大学卒業後すぐにフリーランスとして働き始めました。大学に入学した当初は就職することが当たり前だと思っていたのでどこかに勤めるつもりでしたが、就職して働くイメージが全く湧かず、気づけば就活が始まる3年生になっていました。
その感覚が未だに続いている感じです。
ー フリーランスでデザイナーやイラストレーターとして活動されている方の多くは、一度就職して、外部に繋がりを作ってから独立されている印象ですが、フリーランスになった直後からお仕事はあったんでしょうか?
藤井:3年生の時に大学の先生からデザインのお仕事を手伝わせていただいたりしていたので、当初はそこでの繋がりからお仕事をいただいていました。
あとは卒業制作で壁画を描いたんですが、その作品をきっかけにちょこちょこお声をかけていただくようになったことも大きいです。
ー 学生の頃からお仕事の繋がりができていたなんてすごいですね!幼い頃から絵を描いたり創作することが好きだったのでしょうか。
藤井:はい、絵を描くことは昔から好きでした!振り返ると、子供の頃の私はとてもおとなしい子で、運動も得意じゃないし、外で遊ぶこともあまりありませんでした。おまけにバレーやバスケなどの団体競技も苦手で・・・。
単独行動が好きなことも創作をするようになったきっかけの一つかもしれません。
ー では昔から美術系の大学に進学しようと思われていたのでしょうか?
藤井:いえ、高校も進学校に通っていたので元々は美大に行こうとすら思っていませんでした。
中学の頃から進学校に行くために頑張って勉強して、やっと高校に入学できたはいいけど、そもそも勉強が全く好きじゃなかったんです。勉強が好きで能動的に頑張る子に比べたら成績も全然伸びなくて・・・。
進路を選ぶタイミングになり、このまま一般大学に進学するのは違うなと思いはじめました。そこでどうしようかと考えた結果、絵を描くことは変わらずずっと好きだったので、そこで初めて美大に進学しようと決めました。
美大に進学するために改めて絵を学ぶ必要があるなと思い、ネットで探して見つけたところがアトリエe.f.t.でした。
【アトリエe.f.t.は人としての成長を実感できる場所】
ー 実際にアトリエe.f.t.に入ってどんな感想を持ちましたか?
藤井:美大に行くことを目的として入ったので、もちろん受験対策としての絵をしっかり教えてくれるんですが、絵の技術ではないもっと人としての成長を実感できる場所だなと思いました。
ー どういった部分でそう思ったのでしょう?
藤井:例えば、e.f.t.では生徒たちの作品を出展するe.f.t.展を年に一度開催するんですが、企画などを考えるのは先生達ではなく私たち生徒がメインで考えます。
もちろん先生達のサポートはありますが、基本的には自分たちで考えて動かないと何も始まりません。どうすればもっと良くなるのか、どうすればもっといい作品になるのか、そういったことをみんなでミーティングを重ねて決めていきます。
先ほどもお話しした通り、私は団体で動くことが得意ではないので色々苦労しましたが、こういったチームプレイを学生のうちに経験できてよかったと思っています。
ー フリーランスとして能動的に動けるようになったのは、この経験が活きていそうですね!
藤井:私にとってもう一つ大きな転機があって、吉田田さん(アトリエe.f.t.代表)はe.f.t.の講師以外にもDOBERMAN(ドーベルマン)というバンドのボーカルをしてるんですが、DOBERMANは2年に1回ムーンストラックジャンボリーという音楽フェスを開催しています。
そのフェスの会場装飾やブースの運営などを毎回e.f.t.とプロのデザイナーの福田さんという方が担当しているんですが、その取りまとめであるリーダーを私が担当させていただいた年があります。
ー リーダーですか!?
藤井:私がリーダーをやりたいと立候補したわけではないんですが、チームで動いたり、人前に立つことが苦手だったのを吉田田さんが見ていて、私が殻を破るきっかけになればいいと推薦してくださいました。
最初は本当に驚いて、「私にできるわけない!」と思ったんですが、腹を括って自分なりに必死に考えて頑張ってみました。すると有難いことにみんなも一生懸命動いてくれて、みんなのおかげで何とか形にすることができました。
【プロの現場での実践体験】
ー 具体的にはリーダーとしてどのようなことをしたのでしょうか?
藤井:たくさんあるんですが、例えば参加メンバーの温度感を保てるようにするための声がけだったり、ミーティング内容や福田さんとDOBERMANの皆様との事務連絡の共有、ブース装飾やワークショップの役割分担決め。その他にも会場の装飾やワークショップ用の準備物の実制作も同時に行っていました。
ー それは大変な作業量ですね!進行する上で難しかったところはありますか?
藤井:「相手に対してこんな言い方はよくなかったな。」とか、「もっと効率良く動かすにはどうすればいいんだろう。」など初めてチームのことをまとめる立場として考えたことがたくさんありました。
社会で働くということはチームで動くことが多いので、この経験で自分の能力としても、人としても一回りも二回りも成長できたと思います。
ー このような経験ができるのはアトリエe.f.t.ならではですね!ムーンストラックジャンボリーが終わった直後はどのような感情でしたか?
藤井:とにかく達成感がすごかったです!現場はプロの人たちがたくさんいるし、学生だからといって甘い対応はしてくれません。始まった当初は怖くて仕方なかったけど、だからこそ緊張感を持って最後までやり遂げられたのだと思ってます。
ー それにしても受験用の絵も描きながらリーダーもやるとなると相当大変そうですね・・・。
藤井:いえ、リーダーをやったのは大学生の時です。高校卒業後も大学に通いながらe.f.t.に通い続けてたので。
ー 卒業しても通い続けられるんですね!
藤井:そうなんです。昔は違う名称でしたが、今の名称で言うと「美大受験予備校e.f.t.」というクラスに受験生の時は通っていましたが、卒業しても「e.f.t.アートスクール」という大人までを対象にしたクラスに変えて通い続けていました。
ー それはとてもいい環境ですね!きっかけが受験のために通い始めたのなら、受験が終わった時点で辞めてしまうものなのかなと思うんですが、卒業後もe.f.t.に通い続けたのは何故なんでしょうか?
藤井:大学に受かってe.f.t.を卒業となる時期が、これまでの高校生活とe.f.t.での生活との違いを一番感じられていた時でした。まだまだここで学べることがたくさんあるんじゃないかと。
DOBERMAN主催「ムーンストラックジャンボリー2015」の会場の様子
【新しいものを生み出す力「反骨思考」】
ー ではe.f.t.での一番の学びは何でしょうか?
藤井:「反骨思考」です。よく吉田田さんが言ってる言葉なんですが、最初に聞いた時は正直よくわかりませんでした。でも授業の中や、先述のリーダーをさせていただいた経験の中で、作品のクオリティを上げるためには、“今当たり前に思ってることは本当にそれでいいのか”と疑うことが大切なんだということがよくわかりました。
完成したと思った作品でも、本当にこれでいいのかと疑うことでさらに良くなるポイントを見つけることができるんです。
この学びのおかげで、今フリーランスや作家として活動できていたり、私生活も少し楽になりました。
ー 仕事だけでなく、私生活にまで影響があったんですか?
藤井:この学びのおかげで心にゆとりができました。私は不安性なところがあって、毎日毎日一生懸命やらないと周りに置いていかれてしまうんじゃないかと焦ったり、一度思い込むとなかなか考えを変えられず、どんどん不安になっていくことがあります。仕事に追われてる時は特にそう思うことが多くて、そのせいでがんじがらめになってとても苦しむことがありました。
そのことを吉田田さんに相談すると、「毎日、真正面からぶつかっていく必要はないし、1日横になってゴロゴロすることがあっても、後から考えればそんな日もあったなぐらいのこと。時間が経つのをやり過ごすだけの日があっても全然いいんだよ。」
と言ってくださいました。とても気持ちが楽になったし、これもある意味一つの「反骨思考」なんじゃないのかなと思ったんです。
ー 自分の中の常識を疑うことで、仕事のパフォーマンスをあげることもできれば、心にゆとりを持つこともできる。別の角度から見ることによって新しい考え方を生み出すという点においては確かに同じなのかもしれませんね。
では、最後に藤井さんの今後の展望をお聞かせください。
藤井:団体行動が苦手で受動的な性格だったところから、フリーランスとして自分の好きなお仕事ができるようになるまで、今も模索しながらですがなんとかできるようになりました。
今後は日本だけでなく、貪欲に海外にまで活動の幅を広げていきたいと考えています。
これまで仕事をやってきた中で、「うまくいかなかったらどうしよう。」とネガティブな感情になることが多かったんですが、せっかく自分が表現できるお仕事や作品の展示の機会をもらっているので、うまくいかなかったらうまくいかなかった時だと楽観的に考えて、楽しみながら活動していきたいなと思っています。
貪欲さやストイックさも必要ですが、たまには自分を褒めてあげたり、バランスを取りながら活動の幅を広げれらたら最高ですね!
インタビュー・テキスト:新 拓也(ピクセルグラム/ブランディングデザイナー)
撮影:岩本真由子(フォトグラファー)
100人100通りの人生に取説は無い! 自分だけの地図を描くチカラを身につける。 「つくるを通して生きるを学ぶ」アトリエe.f.t.です。 応援ありがとうございます!!