「生きる上で必要な“どうにかする力”とは」 アトリエe.f.t.卒業生インタビュー♯6 三田周
卒業生インタビュー第6回は、2013年度卒業の三田 周(さんだ しゅう)さん!
大阪芸術大学・写真学科に在学中、現在勤められている写真撮影会社に出入りするようになり、大学を中退後に就職。
現在はファッション誌の商品やモデル、またアーティストのCDジャケットやライブなど、様々なジャンルの撮影を行うカメラマンとしてご活動されています。
そんなカメラマンとしての道を突き進む三田さんに、現在の職業を目指されたきっかけや、今に活きているアトリエe.f.t.の学びなどについて語っていただきました!
【一体自分は何者なのか?】
ー 現在どのような活動をしているのかを教えていただけますか?
三田:今はカメラマンとして、主にファッションカタログなどに掲載する服や靴、モデルなどの撮影をしています。
ー カメラマンを志したのはいつ頃からなんでしょうか?
三田:高校を卒業してからです。高校生の頃は獣医に憧れていました(笑)。
ー 獣医ですか!?カメラマンとは全く別の職種ですね!どういった流れで獣医志望からカメラマンを目指すようになったんでしょうか?
三田:特に獣医とカメラマンに何か関係があるわけではないんですが、まず獣医になりたいと思った理由は、BSで放送されていた動物専門チャンネルのアニマルプラネットという番組がきっかけでした。その番組に獣医が出てくる回があって、彼らは密猟で傷ついたライオンや象などの動物の救助をするんですが、サバンナやジャングルという圧倒的な自然に対して自分の役割を果たしているそのスケールの大きさにすごく憧れて。
ー いわゆる犬や猫を専門にした獣医ではなかったんですね。では進学も獣医を目指せる大学を考えられていたんですか?
三田:はい。北海道大学に獣医学部という学部があったので意気揚々と受けたんですけど、まぁ難しくて。2月の真冬の北海道に行って1問も解らずラーメンだけ食べて帰りました(笑)。
ー ハードルは高かったわけですね(笑)。
三田:そこからは浪人生活に突入するんですけど、一応予備校には通っていましたが学生でも社会人でもない宙ぶらりんな状態がとても居心地が悪くて一時病んでしまって・・・。
そんな辛い時期がしばらく続いたんですが、ある時フラッと立ち寄った本屋さんで森山大道さんの本が目に飛び込んできました。
ー 写真家の森山大道さんですか?
三田:そうです。その本の中に野良犬を撮影した作品があるんですけど、写真の中の犬と目がバッチリあってしまったんです(笑)。森山さんの作品はモノクロでコントラストが強く、とても荒々しいんです。僕が今まで触れてこなかったハードな世界観に触れて、頭を殴られたような強い衝撃を受けました。
ー カメラマンを志したきっかけは、その森山大道さんの写真だったんですね!
三田:はい。はっきりとコレしかない!と思った記憶があります。思い返すと獣医もそこまで本気でなりたいと思っていたわけではなくて、何者かになりたくて焦ってたんだと思います。自分はどこに向かえばいいんだろう、何をすべきなんだろうと。
そこから方向転換して、どうすればカメラマンになれるのか調べたところ、大阪芸術大学で写真を学べると知り、同時に芸大に行くためには絵の予備校に行く必要があることも知りました。
そんな時にたまたま知人にアトリエe.f.t.を知っている方がいて、その方に紹介していただきました。
【e.f.t.は自分を解放できる場】
ー 実際にアトリエe.f.t.に入ってみて、どのような印象でしたか?
三田:自分を解放できる場所だなと思いました。デッサンやワークショップなどの授業も楽しかったんですが、吉田田さん(アトリエe.f.t.代表)や通っている仲間が面白い人たちばかりで、みんなで話す時間がほんとに楽しかったです。
というのも僕は高校にうまく馴染めずにほとんど行ってなかったんです。いじめられていたとか何か特別問題があったわけではないんですが、中学の時に勉強ばかりしていた時期があって、ふとした時にこんなに勉強する意味って何なんだろうと思ってしまったんです。
一度立ち止まってしまうとどんどん無気力になってしまって・・・。
ー なるほど・・・。それが高校まで続いたわけですね?
三田:そうなんです。きっかけは勉強だったんですが、そんな悶々とした感情を抱きながら高校に通い続けている中で、どんどん周りの人たちとなんかリズムが合わないなと感じるようになりました。
そのまま無気力状態がひどくになっていって学校に行かなくなっていきました。アニマルプラネットに出てた獣医に憧れたことも今思えば、無気力状態を脱したくて大きな刺激や悶々としていた気持ちを吐き出すきっかけを求めていたんだと思います。
ー 高校の周りの人たちとリズムが合わないと感じていたわけですが、アトリエe.f.t.の生徒たちとはすぐに仲良くなれたんですか?
三田:そうですね。言葉で直接交わしたわけではないんですけど、みんな僕と同じように言葉にできないフラストレーションを抱えていて、かと言ってグレたりするわけでもなくどこかに吐き出し口を探してたんだと思います。そういう悶々としてる気持ちの度合いがみんな似てたんでしょうね。
ー アトリエe.f.t.と出会ったことでやっと自分を解放できる場所が見つかったわけですが、その中でアトリエe.f.t.から受けた影響はありますか?
三田:初めて作品を自分で生み出す経験をし、自己表現することによってイライラしたりモヤモヤしていた気持ちを吐き出せるようになりました。
あとはやっぱり先述の通り、e.f.t.のみんなととことん話したことで受けた影響は大きいと思います。自分と似たような、言葉にはできないけど何か抱えている人たちがたくさんいて、そんなみんなと時にはお互いのことを延々と話したり、時には一つのイベントを協力してやり遂げたりしていく中で学んだことが多くありました。
【どうにかする力】
ー ではその学びの中で特にご自身の中で強く残っていることは何ですか?
三田:「問題解決力」を学べたのが一番大きかったと思います。
ー 問題解決力ですか?
三田:はい、問題が起こったり、課題を与えられた時にどうにかする力です。「どうにかする力(りょく)」の方がしっくりくるかもしれません。
生きていると何か問題が起こり、それを解決しないといけない場面に頻繁に遭遇しますが、自分の技術や知識が足らなくてもその場でどうにか着地点を見つけて答えを出すしかない。
そんな時に必要になってくる力だと思います。
ー 具体的にはどのような経験から「どうにかする力」が身に付いたのでしょうか?
三田:絵を描いたり、作品やイベントをつくるプロセスの中で身につきました。作品を完成させるまでは、つくっては立ち止まり、またつくっては立ち止まり、もっと良くするためにはどうすればいいんだろうと考えて修正したり、時にはガラッと発想を切り替えないといけないこともあります。
技術や知識が増えればできることも多くなっていきますが、はじめのうちは足りなければ足りない中で落とし所を見つけないといけないんです。でもそれは決して妥協しているわけではなくてどうにか問題を”突破”しようとする行為です。それこそが”つくる”ということなんだと僕は思っています。
ー 自分の知恵と工夫で何とかしていくということですね。
三田:そうです!一度「服を通してクリエイターと繋がる」をテーマに、e.f.t.だけでなく美大や専門学校の学生を呼んで、合同で「NEO古着祭」というイベントをしたんですが、「どうにかする力」が一番身についた経験でした。
吉田田さんにきっかけは作っていただいたんですが、生徒たちみんなで一から企画した、在校中一番大きなイベントだったんです。
ー 3校合同でやったんですね!外部とイベントをするとなるとよりハードルが高くなりそうです。
三田:ハードルは高かったですね(笑)。楽しかったですけど、とても苦労しました。今このイベントをやれって言われてもできる自信がない(笑)。でも未経験のことに挑戦をして実際にイベントを開催できた経験は大きな自信につながりました。
どうしていいかわからない壁にぶつかったときに根性論でどうにかしようとしてもどうにもならなくて、具体的にどうすればこの問題を突破できるのか、どうすれば解決できるのかを考えて行動する。この繰り返しで「どうにかする力」が身についていくのだと思います。
2013年開催のNEO古着祭の会場の様子
【年数が経つほど効いてくるe.f.t.の学び】
ー 今後やっていきたい事はありますか?
三田:こんなことを言うと曲解されてしまうかもしれませんが、仕事をカメラマンに限定しなくてもいいと思っていて、「つくる」ということを広く捉えて活動していきたいと思ってます。
カメラマンは写真でお客様の要望や課題をどうにかしている仕事だと思っていて、どんな形であれ「どうにかする力」が発揮できるのならいろんなことをジャンル問わずやっていきたいと思ってます。
もちろんカメラマンという仕事は好きなので辞めたいわけではないですけど。
ー 学生時代は刺激のあるものに憧れたり、感情を吐き出したくて悶々としていた気持ちの方が強い印象ですが、結果的に「どうにかする力」という自己表現より課題を解決することに意義を見出してるようですがどのタイミングでそのように変わったのでしょうか?
三田:社会人になってからです。働く前は自己表現のために写真を撮っていましたし、今でも自己表現としての写真も撮るんですが、仕事って自分以外の社会や課題に対して応えていくものじゃないですか。
今の事務所に入ってすぐの頃は、それこそ仕事に対して自分流みたいのもを出そうとして怒られたりもしたんですが、案件をこなしていく中で徐々に仕事とはこういうものなんだというのがわかってきました。そうすると仕事がどんどん楽しくなってきて、気づけば課題を解決することに自分の意義を見出すようになりました。
ー アトリエe.f.t.の教育を社会に出てからじわじわ感じてきたということですか?
三田:そうですね。もちろん通っていた当時もつくることに対していろいろなことを学んでいた実感はあったんですが、社会にでて初めてあの時やってたことがこういう時に役に立つのかとわかるんですね。働き出して8年経ちますが、年数を重ねるほど当時学んだことがめちゃくちゃ大事だなとじわじわ効いてきてます。
今でも壁にぶつかった時は当時のことを振り返ります。これからも写真を通して誰かの課題に応えていきたいし、機会があればカメラ以外の分野にも挑戦して「どうにかする力」を発揮していきたいと思っています。
インタビュー・テキスト:新 拓也(ピクセルグラム/ブランディングデザイナー)
撮影:岩本真由子(フォトグラファー)
100人100通りの人生に取説は無い! 自分だけの地図を描くチカラを身につける。 「つくるを通して生きるを学ぶ」アトリエe.f.t.です。 応援ありがとうございます!!