Economic Frontier Asia
海外ジャーナリスト
APAC地域、ASEAN +3地域のビジネスインサイトをまとめました。
主な専門カテゴリは、AI, blockchain, FinTech, tax, ethics of AI/technology, energy, politics, sustainability
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【何故ASEANなのか?】
【ASEAN +3の可能性】
ASEAN +3とは、ASEAN(インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ブルネイ、ベトナム、ラオス、ミャンマー、カンボジアの10か国)+中国・韓国・日本のことを指しています。
ASEANと中国・韓国・日本は、経済的に関係が深く、日本が今後さらに経済協力していくべき地域です。日本と東南アジアに跨る太平洋の活用が今後のエネルギー問題を解決する重要な場所であるからです。またインドネシアの多群島は、波が比較的穏やかで日本の海上都市構想の技術を提供もしくは実験でできる場所である。インフラ投資だけでなく、ビジネスの移転を推し進めていくべきです。ここ数年、中国は多額の貸し付けで東南アジア諸国やオセアニア諸国との関係を強めてきています。東南アジアはかつて、中国人が多く移り住んだこともあり、華僑と呼ばれる人が多く住んでいます。文化的・言語的に中国は馴染みやすい環境で、華僑の子供は、英語・中国語と現地語を話すのが普通です。ムスリムであっても中国語を話す人など多くいます。経済的にも、チャイニーズ系の人が支配していると言われています。宗教的には、ムスリムが多く、仏教徒やクリスチャンなど国毎に異なる言語・異なる宗教を持つ、非常に多様な価値観がASEAN諸国にはあります。多様な価値観が存在し、一見難しい経済圏のように見えます。しかし、裏を返せば一つのサービスで全ての顧客は満足しないということを暗に秘めており、ビジネス好機は多いということです。困難が多いほど、そこには価値が生まれます。
また、ASEAN+6と言われたりもします。それは中国・韓国・日本の他に、ニュージーランド・オーストラリア・インドを含めた経済圏を指します。
ニュージーランド・オーストラリア・インドはASEANから地理的に近いだけでなく、旧英国領の名残から、マレーシア・シンガポールと政治的に深い関係があります。法整備の過程を観察すると関係がよくわかります。ニュージーランド・オーストラリアとマレーシア・シンガポールはほぼ同時期に同様の法案を通します。イギリスで決まった法案やガイドラインを基に採用されることが多いです。国際社会規則や軍事規則は足並みを揃えています。
近年の東南アジアの経済成長は驚くべきものです。
インドネシアはBRICSに次ぐ成長国と言われており、現在の人口は世界第四位の2億7千万人を超え、2050年には3億人を超える予想です。東南アジア最大の国土・最大の人口・若い労働力は、ASEAN地域最大の経済大国になると予測されています。既に日本の大企業は多額のインフラ投資を行い、多くの日本の大企業が進出しています。近年の中国の経済成長に伴う中国資本の増大により、日本資本を越える額の投資が行われており、着々と地盤が固められてきています。
一方、ASEANの玄関口であるシンガポールの経済成長は鈍化し、生活水準は先進国に匹敵するほどとなりました。また急速に高齢化社会に突入し、消費税増税法案が既に可決され段階的に実行されています。ビジネスの拠点として、タックスヘイブンと呼ばれているシンガポールですが、2021年のG7の会議の結果、世界共通の税制度を導入されることが決まり、多くの議論を呼んでいます。Global corpirate tax は税回避を行うBigTechを筆頭に多国籍企業から正当に富の再分配を実行するために作られました。従来の「本拠がある国の税制度を適用する」から「サービス享受者が属する国へ法人税一律15%を適用する」に変わります。企業はサービス利用者が属する複数の国に法人税として15%ずつ納めるようになるでしょう。これを受けて、法人税が実質15%以下で会社を運営出来るシンガポールでは、多くの議論がなされている状態です。一方、アメリカでは、巨大IT企業は実質アメリカに本拠を構え、多くのサービス利用者もいるので、単純にアメリカ政府はこの制度による税収増を予測しています。
この制度による良い点は、実体経済に即した税の回収と利用が可能になるということです。国は本来回収されるべき税金を回収し、国の基幹産業や社会保障に割り当てることが可能となります。法人税の一律15%が、各国の歳入歳出にどれだけ妥当かは分かりませんが、健全な財政には、物価と人口に税収は相関していなければならず、経済実態に、相関した税制度を導入することは理にかなっています。国の財政が正常に機能すれば、従来の税制も良い方向へと変わる可能性があります。税回避を行う企業は法人税の増加になりますが、企業によっては法人税の減少となるので、企業側は、対等に大企業と競える環境になると言えます。より公平な競争原理が働きます。
一方、この制度により起こる問題は、税回避の目的地として企業誘致を行う国の財政です。企業がその地に留まるか留まらないかは、ビジネスの内容によって異なるからです。この不確定要素が多いことが、議論を難航させる要因です。サービスの実態に即した法人税を納めることになる企業は何処に本拠を置こうと法人税15%は回避出来ないので、素直に効率的な場所に本拠を置くだろう。経済実態のない国は、単純に法人税収減となります。そこで、そのような国は従来通りの予算をどう確保すべきかいう問題が起こります。国民の人口と物価は急に変えられるものではありませんから、何処かに皺寄せが来るはずです。
ここで話を戻すと、シンガポールに多国籍企業が集まる理由は、低税率だけでなく、ASEAN圏内での物やサービスの無関税を利用して、東南アジアへの事業拡大の足掛かりとするためです。現在シンガポールに拠点をおき、そこでもサービス展開をしている企業は、どこへ行っても一律15%となるので、本拠を移す必要はなく、企業側の大きな問題にはならない。ただビジネスの実態がシンガポール以外のASEAN地域であった場合、シンガポールを経由させることで諸経費がかかることはあるでしょう。そうなる場合、実体経済のあるASEAN諸国へ拠点を移す可能性はあるでしょう。サービスを展開している企業・していない企業がどれだけ存在しているのかが問題となります。
世界で法人税が一律同じなら、各国の税制度を気にせずに、単純に効率を考えたサービス展開のしやすさや優秀な人材(低賃金)が集まるところへ拡大する。人件費・固定資産税・輸送費などが争点となるのではないだろうか。
世界標準法人税は、国にとって
経済実態のない国は税収減となります。これまで多国籍企業の誘致で税収を賄っている財政には向かい風になるでしょう。
経済実態のある国は、経済活動に即した税収を期待出来るようになります。富の再分配の視点でみれば、税は正確に監督でき以前より正常に機能するでしょう。
多国籍企業にとって
法人税15%以下の国に本拠を置く企業は、今後ビジネスの実態に合わせて、本拠地を変える可能性が考えられます。
法人税15%以上の国に本拠地を置く企業は、単純に減税になります。
要するに、企業は物事をシンプルに考えられるようになります。法人税一律15%かかる(これは受け入れなくてはならない)ので、企業は、税回避に努力する必要もなく、ビジネス本来に注力するほかない。
国は従来通りの歳入を維持したいなら、法人税で減収となった分、他で増税する必要があります。簡単に税収増を求めるなら所得税・法人税・消費税の三大税収源の内、所得税・消費税の二つのどちらかに皺寄せが来るはずです。
このように、国の財政は、国際的な流れと国の政策とそこを拠点とした多国籍企業がどのような行動をとるのか次第となっており、当局も予測出来ない状況になっています。シンガポールに本社や拠点を構える企業は、本当に税優遇制度のためだけでないのか、わかっていません。確かに、シンガポールにはその他の税優遇制度が存在し、優秀な人材が集まる土壌はあります。制度開始直後は一時的に増収となる予想もありますが、長期的にそれが続くかは不透明です。国内の経済活動規模が小さいシンガポールはこれまでのような税優位の地位を享受できなくなります。他国と比較してどれだけ魅力的な地であるかが問われます。企業離脱分の減収を上昇する税率でどれだけ補填出来るのか。またそれが補填以上に税収増の役割を果たすのか、まだ誰もわかりません。
その他のASEAN諸国では逆に、法人税は低下するが、そこでの経済活動分の税をきちんと回収出来る。
シンガポールに拠点を置く多国籍企業は、それまでの税優遇で得ていた利益はなくなり、経営の見直しが求められます。また居住者の約四分の一を外国人が占めるシンガポールは、このパンデミックで、労働力不足に陥りました。ここにはシンガポールが長年抱えてきた問題が存在しています。建設業・飲食業等の単純労働を外国人労働者に任せ、人件費を安く抑えていました。しかし一方で会社は労働の効率化(機械の導入)に逃げ腰で、労働力の使い捨てが蔓延していました。この問題が今回のパンデミックによって明るみになりました。外国人労働者が長期間働けない・帰国することとなり、建設業界が滞ってしまいました。このような業界は非常に賃金が安く(シンガポールに最低賃金はありません。)シンガポール人はそのような職に就きたがりません。しかし、今回こうなったことを受けて、「外国人労働者の使い捨ては良くない、適正な労働賃金を支払うべきだ」や「シンガポール人でも働きたいと思えるくらいの賃金を提示すべきだ」と声が上がり、改善されるようです。
現在シンガポールでは、法人税率の増加・人件費の増加など、広い業種で経営態勢の改革が迫られています。(以前にも増して、外国人労働者へのビザ発行要件は年々厳しくなっています。)
世界で、炭素税のような持続可能性を目指した新しい税の導入が既に実施または検討されています。それが従来の歳入をどれだけ維持できるかはまだ不確定要素が多いです。
古くから貿易の中継地点、近年では金融の拠点として地理的・金融的な港の役割を果たしてきた経済的な土壌はあります。そのためすぐにその地位が失われることはないと考えられます。また、アナリストはシンガポールの安定した政府と優秀な労働力も強みであると考えているようです。
税の平等により経済活動がより平等に・均一になり、各国が自国に税金を投入し技術力を高め・実態経済力を高める働きを推し進めるようになれば、それは世界的に経済活動の良い起爆剤となります。より多くの人がより早くより良い社会で生活出来るようになります。世界がより平坦になっていく中でビジネスはどのように変わっていくのだろうか。
では、シンガポールを中心にASEAN経済圏が今後どうなっていくのか、隣国中国・韓国・日本・ニュージーランド・オーストラリア・インド、また法制度的にイギリス、経済的にアメリカを絡めて見ていきましょう。
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