見出し画像

"エブエブ" アレックス・スコットって何者だ? 若干19歳のガーンジー・グリーリッシュについて

アレックス・スコット  Alex Scott(ブリストルシティ)
178cm イングランド・ガーンジー島出身 2003年8月21日生 19歳
イングランドU20代表

- Introduction

Everything Everywhere All at Once : 「同時に、至るところに、全て」
シーズンが進んだ今年の3月、アレックス・スコットを評してThe Athleticの記者が引用した映画のタイトル。
ダニエル・クワン、ダニエル・シャイナートの二人、通称ダニエルズが監督脚本を努め、23年の第95回アカデミー賞作品賞に輝いた作品だそう。

ピッチのどこでも、どんなことでも一度にやってしまうアレックス・スコット、ガーンジー島出身の19歳MFについて。

- From Guernsey FC

ガーンジー島とはユーラシア大陸フランス本土に近いイギリス領の諸島の一部。ロンドンまで飛行機で1時間、ポーツマス港までフェリーで8時間ほどだ。78㎢ほどの島内(八丈島、町田市より少し広い)に65000人が住む。
2019年16歳のときに当時8部に所属していた地元クラブのFCガーンジーに進み、年末にブリストル・シティとサインした。

「16歳の彼のチャレンジは、トレーニングでは良くても実際のフィジカルを求められるリーグ戦になると話が違うということだった。だけどアレックスはアウェイへの遠征の機会を掴み、ベンチ入りし、初出場を果たした。得点はなかったが、2回目のタッチでクロスバーを直撃したシュートを打ったんだ。その試合には観客が100人くらいしかいなかったと思うけど、『これは誰だ!』という声が聞こえてきたよ」

ニック・レッグ ガーンジー、FCディレクター(The Athletic - Bristol City’s Alex Scott – Everything Everywhere All At Once)


- Everything he can do

彼はいったい何ができるのか。それはCMFに求められる全てのこと。
よく「この選手は何がすごいのか!?」という話になるが、チャンピオンシップのベストスタッツホルダーと比べて、何か突出したスタッツがあるわけではない。ただシーズン49試合出場を果たし、カップ戦を含めたほぼすべての試合に出場。チーム内でもコンスタントに出場した選手の中では、スタッツで上位に入る、継続性は怪我の多い若手にあって何よりも心強い。

・Carry / Take on
Prg.C(前方へのキャリー数)は1試合平均2.34回で、この世代の若手でよりオフェンシブなジェームズ・マカティ(当時シェフィールド・ユナイテッド、マンシティローニー)の3.89回に劣るが、ボックス内への進入回数にフォーカスすれば、その差は0.75回まで縮まる。より守備的なチャーリー・パティーノより攻撃的スタッツが高く、守備スタッツでもそん色ない。
またTOのアテンプツ回数は18/19シーズンのジャック・グリーリッシュ(当時アストンヴィラ)を上回り、受けるファールの回数は1試合平均2.3、リーグ2位。ちなみに、TOの実際の成功数は圧倒的にグリーリッシュが上回る。年齢は当時のJGと2歳差ほどあるが(グリーリッシュ当時21歳、スコット現在19歳)、2010年代後半のグリーリッシュのキャリー系スタッツは、とにかく脅威でしかない。これはメイソン・マウントもジェームズ・マディソンも、同時期比較で全く比にならない。それぐらい、ジャック・グリーリッシュはすごかった。

・Passing
こちらのスタッツも前述の世代比較では上をいく。1試合平均のパスは31本で成功率76%、マカティよりも多く、18/19のメイソン・マウント(当時ダービー)とほぼ同数で成功率でいえば4ポイントほど高い、18/19マディソンと比べても若干劣るほどで、ほぼ同様のデータとみてよい。

・Defensive
ではディフェンス面での御三家との比較はどうか。1試合平均タックル回数2.05、そのうち勝利回数1.2は上記3名よりも数値が良く、ブロック1.4回も同様、インターセプト回数も0.98回スコットが勝る。
守備スタッツも良く出ているのが、何でもできると言われている一因だ。
水を差すようだが、昨シーズンのチャーリー・パティーノの守備スタッツは非常に高く、その値よりは下回ることを追記する。

これらの万能さこそ、数値から見るアレックス・スコットの能力だ。だが、試合を見ると足元の技術、ドリブルのクオリティ、そして何よりも数値にあらわれない"空気が変わる"というワクワク感。これはまさにジャック・グリーリッシュのそれと似ている。何故か彼の周りに"オーラ"がまとわりついているような。恐らくこの雰囲気もデータで数値化できるだろうが、たまにはケイジジョーな話もしたくなったので…。

- Near future

彼の移籍金はいくらなのか。最新のTransfermrktの評価額は£17mだった。一時期4月に出たイギリスメディアでの評価額は一定して£25mで、実際は£20mからといったところだろうか。噂されるプレミアリーグのクラブは、ウルブズ、スパーズ、リヴァプール、ウェストハムと名前だけは並ぶが正式なオファーが来ている気配はなさそうで、もう少し時間のかかる案件と推測される。ロビンズとの契約は2025年6月末までとなっており、出来れば今夏での売却がクラブにも選手にも、都合が良さそうだ。
しかし、そう安々とオファーを受け入れる気もない。

「様々なクラブが彼に興味を持つのは理解できるけど、今のところ入札はない。(3月時点)いずれ、手を上げるクラブがあっても、それ相応の額が必要だ。2,500万ポンド以上でなければならないし、それ以下では売らない。デビューして以来、80試合以上プレーしているし、2年目のシーズンは調子が落ちるという話もよく聞くが、そういうこともまったくない」

ナイジェル・ピアソン、ブリストルシティ監督(The Athletic - Bristol City’s Alex Scott – Everything Everywhere All At Once)

- Afterword

"ブログは2000~3000文字が最も心地よく読まれやすい"なる記事を読んで、今回はそんな感じにまとめてみました。いつもお世話になっている、The Athletic、ナンシー・フロストンとトム・ハリスの共同著作から数か所、引用をしています。実際の記事はさらに突っ込んだポジショニング別でのスコットの動き、チャートやマップを使って説明がなされていますので、是非そちらもご覧ください。
それにしても、、ナショナルマッチはあまり見る機会がありませんが、イングランド代表のこの世代は非常に有力な選手が集まりましたね。
今後が楽しみです。

アレックス・スコットは、今夏移籍するでしょうか。
何の根拠もありませんし、理解も求めませんが、クラレットブルーは似合うかも? 彼の本当の成功は、高すぎる壁だとしても、ジャック・グリーリッシュを追い越した、その先にあるのかもしれません。


<参考リンク>


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?