カードゲームにおけるコイントス(サイコロ)の話【一般TCG理論】
コイントスやサイコロを用いるカードデザインの問題点
カードゲームにおいて運要素を取り入れるデザインは難しい課題だ。その中でもコイントスやサイコロといった形式を採用するカードは、しばしば失敗作とみなされることが多い。しかし、この問題に向き合い、解決策を提示したゲームも存在する。
「ランダム」デザインの可能性と課題
カードゲームのデザイン空間において、「ランダム」自体は非常に魅力的なテーマであり、可能性に満ちている。しかし、サイコロやコイントスといった形式のランダムは、ゲーム体験に悪影響を及ぼすことが多い。
たとえば、ポケポケの「アズマオウ」を見てみよう。
ポケポケの「アズマオウ」は裏が出たら何もしないが、表が出るとオーバーパワー気味のダメージを出す。このカードが使っていて楽しいか?と聞かれるとそうでもない。
一見するとエキサイティングに思えるが、実際に使ってみると、「表」が出たときの快感よりも「裏」が出たときの虚無感が強く、プレイヤーとして楽しいとは言い難い。
人間は結果がわからないことにドキドキする生き物である。この心理を利用し、「成功するか失敗するかの緊張感をプレイヤーに与える」という意図でデザインされたのがランダムカードだが、実際には「裏」が出たときのフラストレーションの蓄積が勝り、カードゲームの楽しさを損なうことが多い。
このようなカード群が抱える問題点は単純だ。
つまらないこと
これに尽きる。
マジック:ザ・ギャザリング(MTG)は基本的にサイコロを振るカードを収録しない。例外として、ジョークセットである「アングルード」でサイコロを使用するカードが登場した。しかし、これらのカードは不評であり、次回作で削除されることとなった。
それくらいサイコロで何かするカードは競技的でもなければ、興味も惹かないのだ。
たとえば、サイコロを振って出た目の枚数だけドローできるカードや、サイコロの出目によって与えるダメージが変わるカードがあるとする。カードのコストをどうするかという問題もさることながら、サイコロを振るデザインは、以下のような根本的な問題を抱えている。
6が出れば破格のアドバンテージ、1が出れば無意味になる
出目次第でカードの価値が大きく変わるため、デッキに採用するリスクが高い
サイコロを振って効果を決めるカードは、ゲーム性よりも運要素に偏りすぎており、プレイヤーに戦略的な選択を与えない点でも不評を買う結果になってしまう。
百鬼異聞録が提示した解決策
百鬼異聞録の「サイコロ爆弾」は典型的なサイコロカードのひとつだった。
このような課題に対して、百鬼異聞録は「如意サイコロ」という革新的な追加デザインで答えを示した。この仕組みは、サイコロを振ってから効果を発動するのではなく、あらかじめランダムな目が決定される仕組みを取り入れたものだ。
具体的には、サイコロを振るタイミングをターン開始時に固定し、プレイヤーがカードを使用する前に結果を知ることができるようにした。
サイコロ爆弾の效果は
「サイコロをその場で振って、出た目の数だけダメージ」から
「ターン開始時にNが定められ、このターンにカードを使うとかならずNダメージ」
へと変化する。
この仕組みにより、以下の利点が得られる。
プレイヤーはカードを使用する前に、アクションの結果が無意味にならないことを保証される。
ただし、N=1のような低い値が出た場合、そのターンはカードを使えないこともあり、完全にリスクが排除されるわけではない。
このようにサイコロの結果をプレイヤーが吟味した上で戦略を立てる余地を与えたことで、ランダム要素がよりゲーム性に貢献する形に昇華された。
結論
サイコロやコイントスを用いるカードのデザインは、運任せな結果により多くの場合つまらなく感じられる。一方で百鬼異聞録が提示したように、ランダムの結果を事前に提示し、プレイヤーがそれを基に戦略を立てられる形にすれば、ゲームの深みを損なわず、ランダムの楽しさを活用でき、ハットトリックなカードのデザインさえ不可能ではないだろう。
本当に必要なのは、サイコロを振ってからカードを使う仕組みではなく、結果を見た上でカードを使う選択肢を与えることである。このシンプルな発想が、ランダム要素のデザインを根本から変える鍵となるのだ。