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戦略的リーダーの4つの強み:Strat,Lead,Org,Comm

皆さん、こんにちは、広瀬です。いきなりですが「戦略的適応力」、この言葉、聞き慣れない方もいらっしゃるかもしれませんね。簡単に言うと、変化の激しいビジネス環境の中で、リーダーがどのように学び、適応し、そして自らのビジネスを成功に導くか、その能力を指します。


ライオンが獲物を狩る姿を思い浮かべてみてください。獲物を見つけ、静かに忍び寄り、そしてチャンスを逃さず襲いかかる。この一連の行動は、まさに戦略的適応力の賜物と言えるでしょう。ビジネスの世界でも同じです。変化を察知し、それに合わせて戦略を調整し、競争優位性を築く。これが、戦略的適応力を持つリーダーの真髄であり、この能力こそが、リーダーを成功へと導く鍵となります。

本日は、リッチ・ホーワース氏によるハーバード・ビジネス・レビューの記事「The Most Strategic Leaders Excel in 4 Disciplines(最も戦略的なリーダーは4つの分野で秀でている)」を参考に、戦略的に優れたリーダーが共通して実践している4つの分野についてお話しします。これらの分野は、リーダーが戦略的な思考と行動を効果的に実践するために不可欠な要素です。

  1. 戦略的適応力(Strategic fitness)
    明確な戦略的方向性を設定し、必要に応じて調整する能力

  2. リーダーシップ適応力(Leadership fitness)
    状況に合わせてリーダーシップスタイルを調整する能力

  3. 組織的適応力(Organizational fitness)
    組織の将来像について深く考察し、投資する能力

  4. コミュニケーション適応力(Communication fitness)
    組織内外のステークホルダーと効果的に連携する能力

この記事は、77人のCレベル幹部(CxO)を対象とした4年間の研究に基づいており、戦略的に優れたリーダーとそうでないリーダーを区別する要素を特定することを目的としています。ホーワース氏は、これらの4つの分野を継続的に強化することで、リーダーはより戦略的な意思決定を行い、組織を成功に導くことができると主張しています。

リッチ・ホーワース氏
戦略思考研究所の創設者兼CEOであり、リーダーシップチームに対して、戦略ワークショップのファシリテーター、エグゼクティブコーチ、戦略アドバイザーとしてサービスを提供しています。彼は、ニューヨークタイムズ紙とウォールストリートジャーナル紙でベストセラーとなった8冊の戦略的思考に関する著書を持ち、その中には「Strategic: The Skill to Set Direction, Create Advantage, and Achieve Executive Excellence」も含まれています。

The Most Strategic Leaders Excel in 4 Disciplinesより抜粋・和訳

この記事は米国企業の調査・研究結果に基づいていますが、リーダーシップを発揮する上で普遍的な要素を含んでいるため、日本のビジネスリーダーの皆さんにとっても、きっと参考になる点が多いはずです。それでは、それぞれの分野について詳しく見ていきましょう。

1.戦略的適応力

それでは、1つ目の強み、「戦略的適応力」について詳しく見ていきましょう。これは、明確な戦略的方向性を設定し、必要に応じて調整する能力のことです。

企業が成功するためには、まずどこへ向かうのか、その方向性を明確に定める必要があります。この、事前に計画され意図的に策定される戦略をDeliberate Strategy(意図的戦略)と呼びます。

しかし、一度定めた意図的戦略が、常に正しいとは限りません。市場環境や競合状況は常に変化しており、それに合わせて戦略も柔軟に調整していく必要があります。

例えば、皆さんの会社で新しい製品を開発したとしましょう。しかし、発売後に競合他社が類似製品をより低価格で発売した場合、当初の戦略のままでは太刀打ちできません。このような状況では、価格の見直しや新たなプロモーション戦略の導入など、迅速な対応が求められます。

このように、状況の変化に対応して柔軟に戦略を修正・変更していくことをEmergent Strategy(創発的戦略)と呼びます。

戦略的適応力を持つリーダーは、常に市場の変化を注視し、自社の強みと弱みを客観的に分析し、意図的戦略と創発的戦略を適切に使い分け、状況に応じて戦略を調整する能力を持っています。いわば、変化の波を乗りこなすサーファーのような存在と言えるでしょう。

ハーバード・ビジネス・スクールの故クレイトン・クリステンセン教授も、Disruptive Strategyコースの中で「戦略立案時の意図的戦略は、その後の状況に対応する創発的戦略に置き換えられるべきだ」と教えています。(広瀬の体験談)

マッキンゼー・アンド・カンパニーの調査によると、戦略的方向性を明確に設定することは、組織の健全性を向上させる上で最も重要な要素とされています。しかし、ギャラップ社の調査では、自社のリーダーが明確な方向性を示していると強く同意した従業員はわずか22%という結果が出ています。

このことから、戦略的方向性を設定することの重要性と同時に、それを実践できているリーダーが少ないという現実が浮き彫りになります。だからこそ、戦略的適応力を持つリーダーの存在は、企業にとって極めて貴重なのです。

2.リーダーシップ適応力

次に、2つ目の強み、「リーダーシップ適応力」についてお話しします。これは、状況に合わせてリーダーシップスタイルを調整する能力のことです。

リーダーシップスタイルは一つではありません。時には、チームを鼓舞し、モチベーションを高める力強いリーダーシップが必要とされることもあれば、メンバー一人ひとりの意見に耳を傾け、合意形成を図る調整型のリーダーシップが求められることもあります。

例えば、新しいプロジェクトを立ち上げる際には、メンバーを鼓舞し、共通の目標に向かって進むための熱意を共有するリーダーシップが重要です。一方、プロジェクトが難航し、チームの士気が下がっている時には、メンバーの不安や不満に寄り添い、解決策を共に模索するリーダーシップが求められます。

リーダーシップ適応力を持つリーダーは、状況を的確に把握し、適切なリーダーシップスタイルを選択・実行することができます。彼らは、まるでカメレオンのように、周囲の環境に合わせて自らの色を変えることができるのです。

ホーワース氏は、企業のリーダーシップ研修において、参加者に「あなたのリーダーシップスタイルは、どんな時でも同じですか?」と問いかけた経験があります。その際、ほとんどの参加者が自身のスタイルは変わらないと回答したそうです。しかし、ホーワース氏は、状況に応じてリーダーシップスタイルを柔軟に変えることこそが、チームのパフォーマンスを最大限に引き出す鍵だと考えています。

リーダーシップ適応力を持つリーダーは、チームメンバーからの信頼も厚く、変化の激しい時代において、組織を安定的に導くことができます。

リーダーシップのスタイルを詳しく理解したい方は、以下のNoteをぜひ参考にして下さい。

3.組織的適応力

3つ目の強みは、「組織的適応力」です。これは、組織の将来像について深く考察し、必要な投資を行う能力を指します。

企業が長期的に成長し続けるためには、現在の成功に安住することなく、常に未来を見据え、変化に対応していく必要があります。組織的適応力を持つリーダーは、市場のトレンドや技術革新を敏感に察知し、将来のビジネスモデルを構想し、その実現に必要な投資を積極的に行います。

ここで、ビジネスモデルを可視化し、分析するためのフレームワークとして「ビジネスモデル・キャンバス」というツールがあります。これは、顧客、価値提案、チャネル、顧客との関係性、収益の流れ、主要な資源、主要な活動、パートナー、コスト構造の9つの要素からビジネスモデルを構成し、それぞれの要素を深く掘り下げて検討することができます。

例えば、近年ではデジタル技術の進化が急速に進んでいます。このような状況下では、ビジネスモデル・キャンバスを活用して、自社のビジネスモデルをデジタル技術の観点から見直し、新たな価値提案や顧客との関係性、収益源などを検討することが重要になります。

PwCの調査によると、多くのCEOが、ビジネスの将来について考える時間を増やしたいと考えています。しかし、実際には、日々の業務に追われ、将来への投資がおろそかになっているケースも少なくありません。

組織的適応力を持つリーダーは、将来への投資を怠らず、常に組織の進化を促します。彼らは、ビジネスモデル・キャンバスのようなツールを活用して、変化を恐れず、むしろ変化をチャンスと捉え、組織を新たな成長軌道に乗せることができるのです。

ビジネスモデル・キャンバスについて詳しく理解したい方は、以下のNoteをぜひ参考にして下さい。

4.コミュニケーション適応力

最後に、4つ目の強み「コミュニケーション適応力」です。これは、組織内外のステークホルダーと効果的に連携する能力を指します。

現代のビジネスは複雑化しており、社内の各部署はもちろん、顧客、取引先、株主など、様々なステークホルダーとの連携が不可欠です。コミュニケーション適応力を持つリーダーは、それぞれのステークホルダーに対して、適切なコミュニケーション方法を選択し、良好な関係を構築することができます。

ここで、起業理論として知られているエフェクチュエーション理論の「Crazy Quilt(クレイジー・キルト)」の原則が参考になります。これは、多様なステークホルダーをパッチワークのように繋ぎ合わせ、それぞれの強みを活かしながら共に目標を達成していくという考え方です。

例えば、社内の技術部門に対しては、専門用語を交えながら具体的な課題について議論する一方、顧客に対しては、分かりやすい言葉で製品の価値を伝えるといった具合に、ステークホルダーごとにコミュニケーション方法を調整します。さらに、競合他社とも協力関係を築き、共通の課題解決を目指すといった、従来の考え方にとらわれない連携も可能です。

ホーワース氏の調査によると、組織内のクロスファンクショナルなグループが戦略を効果的に連携できていないケースが半数以上もあるそうです。コミュニケーション不足は、組織全体の効率を低下させ、ひいては業績にも悪影響を及ぼす可能性があります。

コミュニケーション適応力を持つリーダーは、Crazy Quiltの原則を参考に、組織内の情報共有を促進し、部門間の連携を強化します。異なる意見を持つ人々との対話を通じて、新たなアイデアを生み出し、組織全体の成長を牽引する存在となるのです。

エフェクチュエーション理論の「Crazy Quilt(クレイジー・キルト)」の原則について詳しく理解したい方は、以下のNoteをぜひ参考にして下さい。

まとめ

さて、今回は戦略的適応力というテーマで、4つの重要な分野、戦略リーダーシップ組織コミュニケーションについてお話ししました。それぞれを詳しく見ていく中で、これらの能力が今日のビジネスリーダーにとっていかに重要であるか、ご理解いただけたのではないでしょうか。

変化の激しい現代において、過去の成功体験や固定観念にとらわれず、柔軟に適応していくことこそが、持続的な成長を可能にする鍵です。ぜひ、今日お話しした内容を参考に、自らの戦略的適応力を高め、変化を乗り越える力強いリーダーを目指してください。

戦略的適応力を高めるための具体的な方法や、関連する情報については、私のNoteにまとめていますので、そちらもぜひ参考にしていただければと思います。

今日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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広瀬 潔(HBR Advisory Council Member)
いつも読んでいただき、ありがとうございます。この記事が少しでもお役に立てたら嬉しいです。ご支援は、より良い記事作成のために活用させていただきます。