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02 セピア色の想い出
私はどちらかというと良い子ちゃんで、道に外れるといったこともなく、大きな冒険をすることもなく、波風立てず、穏やかに生きてきた(つもり)。
それでも、半世紀も生きていると、恥ずかしい出来事、許せない出来事なんかも経験していて、その出来事を思い出すだけで、自分の惨めさを再認識し、怒りに震え、ドス黒い感情がよみがえり…けっこう「ダークな自分」が現れる。
特に、衝撃が強かったある出来事に関しては、”ダーク度数?”が高くて…
ひどい。
許すことなんてできない。
せめて間違いであってくれたら…。
許せない
許せない
許せない…
・・・何年経ってもこんな具合だ。
さすがに、だんだんと自分が嫌になり、その出来事を思い出すたびに、ドロドロとしたドス黒い感情を紙に書きなぐり、シュレッダーにかけて…といった作業を繰り返していた。
私にとっては、どうにも納得がいかなかった出来事で、そんな思いをさせた相手を憎んだし、そんな状況に陥ってしまった自分も許せなくて、消化できない感情をずっと抱えてきた。
この感情とずっと向き合っていくしかない、と思っていた。
今日、人と話をしていて、当時の自分と似たような状況の方の話を耳にした。
話を聴きながら、当時のドス黒い感情を思い出し、あぁ~っっと思ったけれど、冷静になって、自分にも昔、その人と似たような状況になったことがあったこと、とても苦しく辛く孤独だった…というようなことを話した。
当時の私の事情を知らない人に話したからなのか、自分が冷静だったからなのか、あのドス黒い感情を「過去のこと」として、割り切った気持ちになっている自分に気がついた。
最低最悪な出来事だったけど、悪いことばかりでは無かったよね…。
…ふと、そう思ってしまった瞬間、あの「最低最悪な出来事」が、セピア色に色あせていることに気がついた。
それと同時に、ずっと許せないと思っていたあの人への気持ちも、セピア色に色あせた気がして・・・
ちょっとだけ楽になった自分を感じた。