森は生きている
山の暮らし
回想録
雨が降る前には
湿った匂いの巻き上げる様な風が吹くので
木々が大きく葉を揺らし始める
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アトリエで作業をしていても
窓の外の景色が動き始めるので
天気の移ろいが分かる
だいぶ昔の話し…
私の祖父母は山梨県の湖の畔で
キャンプ場の管理人をしていた
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1950年頃から1980年代にかけて
日本の経済が活性化していた頃の湖は
モーターボートレースの練習場として栄えていた
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対岸では家族連れが水遊びをしたり
若者たちがキャンプに来ていたりして賑わっていて
夜になると焚き火を囲んでギターを弾きながら
歌を唄ったり賑わっていた
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私が小さい頃
祖父母の居るキャンプ場に泊まりにいくと
忙しい時間は子供でも色々と手伝いをさせられたけど
それは私にとってはとても楽しいことだった
宿泊小屋の掃除についていくと
窓からリスが目の前で見れたり
池には見たことのない大きな虫がいたり
畑にいくと草取りをしながら
『これがこれから実になるんだよ』と
色々な野菜や果物の葉や花を教えてもらえた
特に山梨名物[ほうとう]に使われるカボチャは
常に畑や台所にあった
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夜になると祖父が木を削って創作をしていて
私にも躊躇なく小刀の使い方を教えて
上手くなればケガなんかしないといって
そこらの木っ端で好きなように作らせてくれた
寝る前になると昔話が始まって
『山にはダイダラボッチが居るんだぞ』と聞かされていたので
『もののけ姫』に出てくるよりもずぅっと前からその存在を認識していた!
月の満ち欠けによる自然現象も
自然と共存していく大切さも教えてくれた
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私が10歳の頃には祖父母とも亡くなってしまったけれど
子供の頃に身につけた手仕事や知識はずーっと残っているので
いま山のなかで生活している私は確実にそのお陰で成り立っていると思っている