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コミケ原稿を完成させるまでほぼ毎日60日間進捗ツイートしてみた(前編)

白紙の状態から本を作るとどのくらいかかるのでしょうか?また作者のメンタルはどのように限界を迎えていくのでしょうか?調べてみました!

おはようサンフランシスコ。
ググっても欲しい情報に辿り着くことができない令和最新版の時代、同じことを思ってる人々やこれから同人誌を描き始めたい人のための備忘録もしくは一歩踏み出すエナジードリンクになって欲しいと思って記事を書くことにした沼底なまずです。
今回はC100に合わせて本を完成させるまで60日間連続進捗ツイートをしたお話をさせていただきます。

連続進捗ツイートをやろうとした理由

2022年前半の俺はグダグダだった

2022年の前半、自分は自分の中で壮大で意識の高い計画を立てていた。
「あれもやりたいこれもやりたい今年こそは圧倒的成長だ!」っと失敗する人が陥る典型的なメンタリティを発動させながら2022年のスケジュール帳に遥か未来まで計画をリストアップし書き込んでいった…!
しかし…
ズボラな自分はまったくスケジュールをこなせないまま、土台を失った達磨崩しのようにスケジュール帳に書き込まれた理想の予定と現実の自分が日に日にかけ離れていき精神を削られる日々を送っていました。

学び:スケジュール帳は予定を整理できて便利だが、壮大な理想を掲げすぎたりスケジュール通りに動きたくない人がやろうとすると詰む


「その手があったか!」

そんなある日…。
漫画界とツイッター界隈を揺るがす大事件が巻き起こった。

冨樫先生がツイッターに突如として出現したのだ!

流星のようにTwitterに降臨した冨樫先生は毎日少しずつ進捗ツイートをアップしはじめた…それは謎の数字とラフらしき線が描かれた漫画原稿の画像…正直我々から見たら何を描いているのかまだ分からないが…確実にあのハンターハンターの続きが描かれていることがリアルタイムで公開されているという夢のような光景が広がっているのだ…!!

さて、これを見た全国一億人のワナビークリエイターは「冨樫先生が描いているのだから俺たちも何か作らねば無礼というもの」と思ったのは間違いない。筆者はまさにその一人であった。

進捗ツイート、その手があったか!
そうだ!自分もこれをやろう!


毎日進捗ツイートの狙いを考えよう

ということで毎日進捗報告をするにあたって、以下のような6つの狙いを考えました。

  1. 進捗の記録を付けることで、ざっくりとしか考えてなかった一冊の本を作るのにかかる時間が測定する

  2. 毎日進捗報告すればフォロワーに今何を描いているのかアピールし続けることが出来る

  3. サボり防止とクオリティアップを目指す

  4. また進捗報告はページの端っことかラフとか内容がまったく分からないものでも良い

  5. 原稿の他にも週一ペースぐらいにはツイッターにアップするイラストor漫画を描けるぐらいの余力あるとベスト

  6. 完走後は記録をまとめて次回に活かす

この中で得に重要なのが時間を計測する1番とサボりを防ぐ3番になります。とにかく本を完成させるためには走りださないといけない!とにかく走り始めることが重要です。

ちなみに漫画の進捗報告をするとなると気になるところが「どのへんまで公開するのか」というところもあるでしょう。あまり公開しすぎて内容のネタバレになりすぎるのも本を作る上では望ましくない部分です。

とはいえ、内容が分からないものより分かるもののほうが買う側としては安心なのでどんどん情報公開していくスタンスもアリアリのアリかもしれません

ただ、先に挙げた冨樫先生の進捗ツイートをご覧になってください。ほとんど内容の分からない画像ばかりですがあれでも「とにかく何かが進んでいる」とか「先生が今続きを描いている!」というのは分かるでしょ?

ああそうか、あれぐらいの情報でもいいんだ!

と自分は思ったわけです。
なので、公開範囲に関しては本全体ページのサムネイルと細かなコマのアップに重点を置いて進めることにしました。


実践編

本を作るための工程について

かくして薄い本を作るための長いランデブーを開始していきます。

白紙のデータが広がっている…
自分で描いていてなんだが、このまったく何も存在しない状態から漫画を生み出すというのは途方もなくタイヘンだ。タイヘンだから今回のように筋道を立てたり資料をたくさん広げたりするのだ。旅はここから始まる……!

ちなみに完成までには以下のようなステップで進めていく。

  1. 話の大筋を考える

  2. ページ構成を練る

  3. 下書きを作る

  4. 線画

  5. 塗りと効果を入れる

  6. 完成!

今回は20~30ページの一本の漫画を描くつもり。最初から最後のページまでネームを切ったら最初のページに戻って下書きを描いて…みたいな風に進む。

この作り方だとマジで原稿作成の終盤になるまで作画が出来ているページが生まれないのでメンタル的には重みになるけど効率的にはこれが一番良いしスタンダードだと思っているけど、一気に全体ページではなくある程度分割していったり単発ページを別で用意していったりというのもメンタルコントロールとしてはアリでしょう。


DAY1~3 アナログでネーム構成

ということでデータ上は白紙が広がっている初日の画面ではあるが、まったく何もやってなかったワケではない。
この時点でなんとなくどういうストーリーだとかどういうシーンが描きたいだとかが頭の中で存在していて、スマッホやPCで打ち込んだテキストや手書きのラフが散逸した状態だ。

自分は何か本のアイデアが思いついたらGoogleドキュメントなどでまず文章として書き出すようにしている

つまり頭の中にはなんとなくある状態だ。
頭をトントンと指で叩き「全てのデータはもうここにインプットされている」と笑みを浮かべる…そんな状態を世間「白紙」と呼称している。
そんな頭の中の朧げなビジョンを漫画という形に固めていく作業がここから行われていくページ構成、いわゆるネーム作業になる。

普段からあまり長めな漫画を描いた経験が無いのだけど今回は結果としては本編29ページもの割と長尺な漫画をこしらえることになった。とすると大変なのがページ構成とコマ割りで、考えていたストーリーをどのように組んでいくのかひたすら考えるターンになる。
この作業を最初からクリスタの原稿の上で書き込んでいっても良いのだけど、アナログで紙に描いていくことにした。デジタルデータに描き込むよりも作業が捗ったりするし紙だったら机の上にいっぱい広げられるメリットがあったりするんだ。
紙のラフもこの時点である程度準備があった状態だったのでこの工程は早めに完了することができた。

アナログで書かれたネーム 左下はシーン毎の整理番号

ただし…結果的に最初からフルデジタルの方が良かったんじゃ…と思うところも後から出てきたのでこれは今後の課題の一つ。

ここでひとまず頭の中に存在するだけだったものが輪郭を帯びてくる。次は紙で描いた内容を原稿データに入れていく。白紙からようやく何かが描いてある状態に進んでいくワケだ。

次では内容を更に固めながら漫画としての形に近づいていく。


DAY4~18 下書き・文字入れ・コマ割り

先の工程で作った紙のラフをいよいよデジタルデータに落とし込んでいく。
コマ割り・セリフを打ち込みながら下書きを描きこんでいきます。
下書きはキャラのポーズや表情など完成形がどのようになるのか決めていく部分なのでここをしっかりやればやるほど後で悩まなくて済みます。

コマ割り・セリフ入れ・下書きをガシガシ入れていく

ちなみに漫画を描くデジタルツールといえば宇宙最強であると言っても過言ではないクリップスタジオにはレイヤーテンプレートという機能があるので、前もってこんな感じのレイヤーが最初から入っているようにページを生成しています。

今回の原稿を終えた時に整理したレイヤーテンプレート

このようにレイヤーをセットしておくと「次にどのレイヤーを作成して何をするんだっけ……?」と悩むことを減らせるので大変便利です。
モノクロ原稿やカラーイラストでもいろいろ必要なレイヤーは変わってくると思うので各々が考える最強のデッキを組んでみましょう!

……この工程を振り返ってみると、紙で描いたものを整理してデジタル原稿に落とし込むという作業に二週間近くの時間を使っていることになる。
ちょっと時間かけすぎ…? かもしれない。
先ほども少し触れたが、最初からデジタルでやったほうがスムーズだったんじゃないかなというのが終えた今感じた感想だ。

これが出来てくるといよいよ漫画っぽいものになってくる。
コマ割りとセリフを読んでいけばどんな漫画になるか想像できるぐらいのものになっただろう。要するにネームというものだ。この状態で改めて読み返したり査読してもらったりして内容を確認したりできるようになる。

ここまでできると、今まで頭の中だけに保存されていた内容をアウトプットできたことにより脳内メモリの使用容量が整理され心が少し晴れやかな気分になってきたではないか!
だがこれは終わりではなく、始まりに過ぎない。
今ようやく何を描けば良いのか分かったという段階で、ここから作画という戦いが開始まっていくのだから…!


下書きまで終了!次回はいよいよ作画に入るぞ!

というところでは前半はこの辺で。
後半には作者のメンタルをバチボコに追い詰めていく作画工程についてや、原稿を終えてみての振り返りなど重要な部分を描いていくつもりだ。
ぜひお付き合いいただけるとうれしい。

それではまた次回!


【余談】原稿をやっていない日は堂々とサボって酒の写真を上げたりピザの写真をアップしたりした。特にピザツイートは後からいろんな人にツッコミをされた。ピザうめえ。

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