ばあちゃんの予言

「寝起きや寝入りばなだけではないのですね」
「はい。昼間起きているときにも見ます」

「実際に起きいないという自覚もあるんですよね」
「はい」

「睡眠と覚醒の移行時のみですと睡眠関連幻覚の疑いがあるのですが、日中も見るとなると統合失調症の疑いも出てきます。しかし、実在の現象ではない自覚があると診断が難しいですね。」

最初にその幻覚を見たのは1995年の1月。朝、神棚の水を取り替えている時。

昼寝をしていると祖母の呻き声で目を覚ます。
「おばちゃんどうしたの」
「割れそうに頭が痛い」
「大丈夫」
幼い私はただおろおろしている。

しばらくすると落ち着いたのか、祖母は
「正蔵にお乳をやっていた時のように痛かった」とため息混じりに言う。
大正12年生まれの伯父がまだ乳飲み子だった時の頭痛だと。その直後に祖母たちは関東大震災で被災している。
母が帰ってきて、新潟で大きな地震があったと言うところで終わる。

テレビをつけると大阪が大変なことになっていた。そう、阪神大震災である。

次に見たのは2004年の10月。仕事が一段落して、一服していると全く同じ幻覚を見た。やはり、その直後に中越地震が起きた。

その次は2008年の6月。朝、仕事の準備をしている時。やはり、その直後に岩手・宮城内陸地震が起きた。

「私はオカルトは信じませんが、ある意味予知夢のようなものですかね」
「でも、東日本大震災の前は見なかったんですよ。しかも全部遠く離れた場所ですし、直前過ぎて何の役に立ちません」

以上が2016年4月。熊本地震直後に心療内科を受診した時の医師との会話である。

元日もリビングでくつろいでいると、その幻覚を見た。その直後に家族全員のスマホから緊急地震速報が鳴り響いた。

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