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新歳時記より 12月の季語

十二月(じゅうにがつ)
    切り揃え鉈振り下ろし十二月
霜月(しもつき)
    霜月や篠刈り人の歩む如
短日(たんじつ):日短(ひみじか)暮早し(くれはやし)
    短日や鎮守の森の長き影
冬の日(ふゆのひ):冬日(ふゆひ)冬日向(ふゆひなた)
    街道の人を眺めて冬日向
冬の朝(ふゆのあさ)
    冬の朝蒲団の中の着替えかな
冬の雲(ふゆのくも):凍雲(いてぐも)
    風運ぶ数えきれなき冬の雲
冬霞(ふゆがすみ)
    裏の畑大根扱ぎの冬霞
顔見世(かほみせ):歌舞伎顔見世(かぶきかほみせ)
    顔見世や幟が立ちて始まりぬ
12/2
冬の空(ふゆのそら):寒天(かんてん)寒空(さむぞら)
    冬の空待つ人のいて向こう岸
冬の鳥(ふゆのとり):寒禽(かんきん)
    固まりて押し競饅頭冬の鳥
冬の雁(ふゆのかり)
    田の向こう見張り役いて冬の雁
梟(ふくろふ)
    長閑な夜梟鳴くや屋敷の木
木兎(みみづく):「づく」
    声聞けど木兎の耳未だ見ず
冬田(ふゆだ)
    空稲架の鳴く声淋し冬田かな
水鳥(みずとり)
    水鳥や湖上の風に委ね揺れ
浮寐鳥(うきねどり)
    ジーゼルの鉄橋響く浮寐鳥
鴨(かも)
    河骨が葉を敷く池に鴨の寝る
12/3
鴛鴦(をしどり):「をし」
    鳥小屋へ鴛鴦浮かぶ掃除番
鳰(かいつぶり):「にほ・にほどり」
    鳰遥か向こうで首を振り
初雪(はつゆき)
    初雪や証拠残らぬ下駄の跡
初氷(はつごおり)
    掬い出す薄きガラスや初氷
寒さ(さむさ)
    教室や遠い太陽寒さかな
冷たし(つめたし):「底冷え」
    下校済む冷たし廊下暗くなり
息白し(いきしろし)
    推進機後ろ向き行く息白し
冬木(ふゆき)
    木道や樵の休む大冬木
冬木立(ふゆこだち)
    冬木立武蔵野にて従妹逝き
12/4
枯木(かれき):「枯木宿」
    たい付けを忘れず入れて負う枯木
枯木立(かれこだち):「寒林」
    枯木立煙の登り開墾地
枯柳(かれやなぎ)
    この道は柳通や枯柳
枯山吹(かれやまぶき)
    しなやかに枯山吹の揺れる枝
枯桑(かれくわ):「桑括り」
    風攫う縛る枯桑ヨガポーズ
枯萩(かれはぎ)
    枯萩のトンネル淋し誘導路
枯芙蓉(かれふよう)
    枯芙蓉毛深い実割れ現る実
枯茨(かれいばら)
    枯茨衰えぬ棘風に振れ
冬枯(ふゆがれ)
    冬枯や釣瓶の廻る家ありし
霜枯(しもがれ)
    霜枯の教習場のバイクかな
12/5
冬ざれ(ふゆざれ)
    冬ざれの三方原より富士望む
枯草(かれくさ):「草枯」
    鎌光る枯草囲む墓参り
枯蔓(かれづる)
    枯蔓や廃屋被ふ年月よ
枯蔦(かれつた)
    白壁や枯蔦つたう赤き色
枯葎(かれむぐら)
    河原へと行方阻むや枯葎
枯尾花(かれおばな):「枯芒・彼萱」
    街道へ邪魔する長き枯尾花
枯蘆(かれあし)
    頬に風揺れる枯蘆鳥の鳴き
枯蓮(かれはす)
    枯蓮や鉄さび色が写す田面
枯芝(かれしば)
    枯芝やボールが跳ねてライン割り
枯菊(かれぎく)
    枯菊や束ねる束が匂いたち
12/6
枯芭蕉(かればせう)
    枯芭蕉いよいよ寒く見えてきて
苗代茱萸の花(なはしろぐみのはな):たはらぐみの花
    夕暮れや苗代茱萸の花の咲く
枇杷の花(びわのはな)
    枇杷の花井戸端会議のらぬ朝
臘八會(らふはちゑ):「成道會(じゃうだうゑ)」
    臘八や警策響く座禅堂
大根焚(だいこたき):「鳴瀧の大根焚」
    気新た外の竃で大根焚
風呂吹(ふろふき)
    風呂吹や度肝を抜かす竹の爆ぜ
雑炊(ざふすゐ)
    時間とは言わず雑炊勧めけり
葱(ねぎ):ひともじ
    捻じりあげひともじのあり夕餉かな
12/7
根深汁(ねぶかじる):葱汁
    大鍋も縮み沈みて根深汁
冬菜(ふゆな):冬菜畑(ふゆなばたけ)
    真っ直ぐな畝連なりて冬菜かな
白菜(はくさい)
    止まる手や縛る白菜帽子跳ぶ
干菜(ほしな):懸菜・吊菜
    陽を浴びせ風が揺さぶる干菜かな
干菜汁(ほしなじる)
    浸し水かをる朝餉や干菜汁
干菜湯(ほしなゆ)
    干菜湯や家中かをり温み来る
胡蘿蔔(にんじん):人参
    スライサー人参サラダいと早し
蕪(かぶら):かぶ・緋蕪
    十八番蕪の漬物薄く切り
蕪汁(かぶじる)
    蕪汁や味噌と争うそのかをり
12/8
納豆汁(なっとうじる)
    糸引かぬ納豆汁になじめなく
粕汁(かすじる):酒の粕
    大吟醸甘さもかをり酒の粕
闇汁(やみじる)
    闇汁や霜降り牛を忍ばせて
のっぺい汁
    のっぺい汁けふは来ないか黒い梁
寄鍋(よせなべ)
    長男の寄せ鍋仕切る夕餉かな
鍋焼(なべやき):芹焼・鍋焼饂飩
    風邪ひけば鍋焼饂飩母の味
おでん:おでん屋
    白い湯気かきこの踊るおでんかな
焼藷(やきいも)
    夕暮れの焼藷の笛切れ切れに
湯豆腐(ゆどうふ)
    電灯や湯豆腐浮かぶ赤い椀
12/9
夜鷹蕎麦(よたかそば):夜鳴饂飩
    覗くマンガ「早く寝なさい」夜鳴饂飩
蕎麦掻(そばがき)
    何も無い昼は蕎麦掻妻の技
蕎麦湯(そばゆ)
    啜り終え店の味知る蕎麦湯かな
葛湯(くずゆ)
    腹チクチク母が差し出す葛湯かな
熱燗(あつかん)
    ちんちんの熱燗の飛ぶアルコール
玉子酒(たまござけ)
    小ジョッキ飲む玉子酒下がる熱
生姜酒(しょうがざけ)
    コロナ禍や今宵は一人生姜酒
事始(ことはじめ)
    新しき製図用紙や事始
貞徳忌(ていとくき)
    太鼓橋松友として貞徳忌
12/10
神楽(かぐら)
    獅子鼻の中の恐さや神楽かな
里神楽(さとかぐら)
    頭とり隣りの親父里神楽
冬の山(ふゆのやま):冬山・冬山家(ふゆやまが)
    葉も落としじっと静かに冬の山
山眠る(やまねむる):眠る山
    画面や頭上PCの山眠る
冬野(ふゆの)
    石跳ねる冬野を一人漕ぐペダル
枯野(かれの)
    静かなる枯野はじっと風を待ち
熊穴に入る(くまあなにいる):熊
    まんぷくの熊穴に入る野菜畑
熊突(くまつき)
    熊突やへっぴり腰の竹の先
熊祭(くままつり)
    神様に汁の熱さや熊祭
12/11
狩(かり):猟犬(れふけん)・猪狩(ししがり)・鹿狩
    満面の獲物担ぎて狩自慢
猟人(かりうど):猟夫(さつを)
    赤いベスト被る狩人黄色かな
狩の宿(かりのやど)
    熊打や猟銃光る狩の宿
薬喰(くすりぐひ):鹿売(ろくうり)
    大物を隣も誘いて薬喰
山鯨(やまくぢら)
    山鯨囲炉裏が宿に鍋の湯気
狼(おほかみ)
    風止みて狼聞こゆ山の宿
狐(きつね)
    自転車と狐の招き藪の中
狐罠(きつねわな)
    化かせぬか知恵絞りあひ狐罠
狸(たぬき)
    ふわふわとヘッドライトの狸かな
12/12
狸罠(たぬきわな)
    この餌喰ふ閉まるシャッター狸罠
狸汁(たぬきじる)
    白はんぺん浮かべて今宵狸汁
兎(うさぎ):兎汁
    耳赤き兎の餌と土手の草
兎狩(うさぎがり)
    柴犬やにほひ一杯兎狩
鼬罠(いたちわな)
    鼬罠暴れる眺む通る人
笹鳴(ささなき):冬鶯(ふゆうぐいす)・鶯の子・笹子
    笹鳴や修行の後変声期
鶲(ひたき)
    果物やぺこぺこお辞儀鶲かな
鷦鷯(みそさざい):三十三才(みそさざい)
    人絶えて分校の屋根三十三才
都鳥(みやこどり)
    都鳥等間隔の二人達
12/13
千鳥(ちどり):鵆(ちどり)・磯千鳥・濱千鳥・川千鳥・夕千鳥・小夜千鳥・群
千鳥・友千鳥・遠千鳥
    汐汲や天秤棒の千鳥越え
冬の海(ふゆのうみ)
    本当に誰もいないと冬の海
鯨(くぢら)
    桂浜潮吹き鯨行脚かな
捕鯨(ほげい):捕鯨船
    轟音や白波高く捕鯨船
鯨汁(くぢらじる):鯨鍋
    柔らかき野菜歯たたぬ鯨汁
河豚(ふぐ):ふぐと・河豚汁・ふぐと汁・河豚鍋・河豚ちり・鰭酒・河豚の宿
    近畿路で店を梯子の河豚の味
鮟鱇(あんかう):鮟鱇鍋(あんかうなべ)
    パック詰め鮟鱇鍋がとろみかな
12/14 (12/1 ツイート)
鮪(まぐろ):鮪船
    大将の鮪の解凍店の味
鱈(たら)
    たらちねの母の鱈ちり去りし味
鰤(ぶり):寒鰤・鰤起し
    寒鰤や一本で売る安売り店
鰤網(ぶりあみ)
    立山のゆれて鰤網あぐ重さ
魦(いさざ)
    粉まみれ揚げて魦の塩加減
杜父魚(かくぶつ):霰魚(あられうお)
    杜父魚や下る九頭竜霰あり
潤目鰯(うるめいわし)
    嫁入りて潤目鰯の指剥き
塩鮭(しほざけ):あらまき・しほひき
    あらまきや吊られ電球末近し
乾鮭(からざけ)
    乾鮭や酒の肴の喰いちぎり
12/15
マスク
    コロナ禍やマスク美人が距離を置く
襟巻(えりまき):首巻
    襟巻や指で絡めて顔隠し
ショール:肩掛
    昼高し絹がショールの照り返し
手袋(てぶくろ):皮手袋
    指開き皮手袋を見びらかし
マッフ
    古行李祖母のマッフが褪せて色
股引(ももひき):もんぺ・ぱっち
    股引を履かぬ男の脛の色
足袋(たび)
    物干し台別珍の足袋色ごとに
外套(ぐわいたう)
    外套を引きはがしたき帰る人
12/16
海鼠(なまこ):海鼠突(なまこつき)
    げて姿味知る者が海鼠なり
海鼠腸(このわた)
    海鼠腸や父の箸先僅かなり
牡蠣(かき):牡蠣打(かきうち)
    心込め選び出し詰め牡蠣フライ
牡蠣むく(かきむく)
    殻の山牡蠣むき女眺む午後
牡蠣船(かきぶね)
    牡蠣船や豊量祝ふ重き音
牡蠣飯(かきめし)
    レモン汁牡蠣飯かをり夕餉かな
味噌搗(みそつき):味噌作る
    石臼や躍り出ぬよう味噌搗きぬ
根木打(ねつきうち)
    根木打分捕り棒が丸い山 迫る夕闇火花散り
12/17
冬の蝶(ふゆのてふ)
    冬蝶の枯れて花の香舞ひおりぬ
冬の蜂(ふゆのはち)
    弱弱し寝ぼけ眼が冬の蜂
冬の蠅(ふゆのはへ)
    日の当たる赤い座布団冬の蠅
冬籠(ふゆごもり)
    都落ち丸太のこ挽く冬籠
冬座敷(ふゆざしき)
    ガラス越し障子明るし冬座敷
屏風(びやうぶ):金屏風・銀屏風・銀屏・檜屏風(ゑびやうぶ)
    白屏風誘惑に負け太き文字
障子(しやうじ)
    姉が友障子向こうの内緒かな
炭(すみ):木炭・堅炭
    膨らまし炭火育てて頬の色
消炭(けしずみ)
    消炭や天井を這ふ白煙(しろけむり)
12/18
炭団(たどん):練炭
    練炭の沸かす鉄瓶ちんちんと
炭火(すみび):炭頭・燻炭・跳炭 炭火
    消壺に納めて炭火けふ終い
埋火(うづみび)
    夕まぐれ掘りて埋火もみじの手
炭斗(すみとり):炭取・炭籠・十能
    炭斗と火箸が行き来早き朝 
*12/8 (この日より)
炭竃(すみがま)
    炭竃の煙にむせて熊の去り
炭焼(すみやき)
    炭焼が煙を頼り愛し人
炭俵(すみだわら)
    炭俵けふは軽きと運び上げ
炭売(すみうり)
    炭売や髭は書かまい痒くとも
焚火(たきび)
    焚き火の香子ら探し当て焼けて芋

榾(ほだ):榾の宿・榾の主
    榾の火や梁の黒さと艶やかさ
爐(ろ):爐明・爐話
    爐話の続きを語る夜の鳥
囲爐裏(ゐろり)
    天井の囲爐裏の煙帰り来て
暖房(だんぼう)
    暖房や戸の開け閉めのしつけ方
12/9
ストーヴ:暖爐
    ストーヴの横妹座らして起立礼
スチーム
    スチームやカチンとバルブ開く朝
ぺーチカ
    ぺーチカの埃の積もり薪かな
炬燵(こたつ):切炬燵・炬燵布団
    炬燵人顎であれこれ指図かな
置炬燵(おきごたつ)
    姉の友一人独占置炬燵
助炭(じょたん)
    おもむろに母貼替えて助炭かな
火鉢(ひばち)
    一部屋に一つの火鉢人の息
火桶(ひおけ)
    白き灰朱塗りの火桶青炎
12/10
手焙(てあぶり):手爐(しゅろ)
    父配り手焙九谷鉢に化け
行火(あんくわ)
    日が暮れど行火が温き足抜けず
懐爐(くわいろ):懐爐灰
    柔肌や懐爐で火傷やせ男
温石(おんじゃく)
    温石と決めて取り出し焚火かな

湯婆(たんぽ)
    蒲団剥ぐ湯婆のまえの冷気かな
足温め(あしぬくめ):足焙・足爐
    靴下に丸い穴あり足温め
湯気立(ゆげだて)
    湯気立の焼鏝あてて折目つけ
湯ざめ(ゆざめ)
    クライマックス湯ざめ忘れて見入りけり
12/11
風邪(かぜ):風邪薬(かざぐすり)
    うんちくを並べ父だけ風邪薬
咳(せき)
    気圧配置咳の苦しく課長席
嚏(くさめ)(くしゃみ)
    爆破力自転変えんや我が嚏
水洟(みづばな)
    水洟や今宵邪魔するプロポーズ

吸入器(きふにふき)
    泡音や空いて冷たく吸入器
竈猫(かまどねこ)
    火をいれどまだまだ居れる竈猫
綿(わた):綿打
    裏返す紅き花柄真綿張り
蒲団(ふとん):干蒲団・羽根蒲団・絹蒲団
    老女見ゆ似合わぬ色が干蒲団
12/12
背蒲団(せなぶとん):負真綿
    老い楽やダサい気にせず背蒲団
肩蒲団(かたぶとん)
    肩蒲団丸い窓より湖眺む
腰蒲団(こしぶとん)
    腰蒲団あてて漁師や舵を切り
衾(ふすま)蒲団のこと:紙衾
    母抑えおなら漏らさぬ衾哉

毛布(まうふ)
    温暖化毛布が出番減りにけり
夜着(よぎ)
    耳元のラヂオはひとり夜着の外
褞袍(どてら)
    サナトリューム褞袍を父が迎えけり
綿入(わたいれ):布子・綿子
    おしくらべ綿入厚く体当たり
12/13
紙衣(かみこ):紙子
    如何着す柳行李へ紙衣かな
ちゃんちゃんこ:袖無
    ちゃんちゃんこ上げを外してもう二年
ねんねこ
    ねんねこや髪を抑えてゆらゆらと
厚司(あつし)
    網を挽く厚司が列のリズムかな

胴着(どうぎ)
    粋極む見えぬ胴着や紅裏地
毛衣(けごろも)
    毛衣の下のTシャツ緋色なり
毛皮(けがは):毛皮売
    小口瓶スルリ出し入れ毛皮売
皮羽織(かはばおり)
    火事もなくえこうで待つや皮羽織
12/14
重ね着(かさねぎ)
    気にかかり重ね着が色下着にも
着ぶくれ(きぶくれ)
    肥えたねと痩せに嬉しや着ぶくれて
冬服(ふゆふく) 
    小開きて冬服を縫ふ昼下り
冬帽(ふゆばう):防寒帽・毛帽子
    北支より冬帽の父温き顔

頭巾(づきん)
    念願のとんがり頭巾飛びまわり
綿帽子(わたぼうし)
    厳寒や老婆も被り綿帽子
頬被(ほほかむり)
    頬被むこうの畑父のいて
耳袋(みみぶくろ):耳掛
    しもやけや羨ましくて耳袋
12/15
マスク
    コロナ禍やマスク美人が距離を置く
襟巻(えりまき):首巻
    襟巻や指で絡めて顔隠し
ショール:肩掛
    昼高し絹がショールの照り返し
手袋(てぶくろ):皮手袋
    指開き皮手袋を見びらかし

マッフ
    古行李祖母のマッフが褪せて色
股引(ももひき):もんぺ・ぱっち
    股引を履かぬ男の脛の色
足袋(たび)
    物干し台別珍の足袋色ごとに
外套(ぐわいたう)
    外套を引きはがしたき帰る人

12/16コート:東コート(あづまこーと)
    果物籠東コートの叔母が来て
被布(ひふ)
    叔母来訪良きなき話被布を着て
懐手(ふところで)
    玄関へ父立ち待ちて懐手
日向ぼこり(ひなたぼこり):日向ぼっこ・日向ぼこ
    背が伸びて裾も寒かろ日向ぼこ
毛糸編む(けいとあむ)
    呼びかけど毛糸編む妻目数よむ

飯櫃入(おはちいれ):ふご
    占有権唱えて猫が飯櫃入
藁仕事(わらしごと)
    がしゃがしゃと夕日差し込む藁仕事
楮蒸す(かうぞむす)
    煙立つ隣りの庵楮蒸す
紙漉(かみすき)
    ぱしゃぱしゃとリズム崩さず紙漉きぬ
12/17
藺植う(ゐうう)
    あと僅か手足の凍みて藺を植うる
甘蔗刈(かんしょかり)
    甘蔗刈夕映の見ゆこの畑も
薪能(たきぎのう):若宮能・後宴の能
    薪能萬斎と遭ふ方広寺
一茶忌(いっさき)
    一茶忌や雀と遊ぶ馬もゐて
北風(きたかぜ):寒風
    北風に押され登校足軽ろき
空風(からかぜ)
    空風に向けて小便服の濡れ
隙間風(すきまかぜ)
    線香の煙も早し隙間風
虎落笛(もがりぶえ)
    虎落笛ハモる調子が合わぬ朝
12/18
鎌鼬(かまいたち):鎌風
    鎌鼬秘伝披露と回す腕
冬凪(ふゆなぎ)
    冬凪げてサーファーが座防波堤
霜(しも):霜柱・大霜・深霜・朝霜・夜の霜・霜の聲・霜凪・霜雫
    冷える朝白いベールが霜を知り
霜夜(しもよ)
    切干が旨さも増して霜夜かな
霜柱(しもばしら)
    ザクザクと砕けぬけふの霜柱
霜除(しもよけ)
    霜除の白さも増して陽も低し
敷松葉(しきまつば)
    ところどこ芝の青さや敷松葉
雪圍(ゆきがこい):雪垣・雪除・雪構
    老骨と縄竹揃え雪圍
雪吊(ゆきつり)
    雪吊が舞い拡がりて兼六園
12/19
藪巻(やぶまき)
    藪巻の千本松原暮ゆき
雁木(がんぎ)
    雪止みて声の飛び交う雁木市
フレーム:温床
    フレームの温し空気の鼻をつき
潤目鰯(うるめいわし)
    嫁入りて潤目鰯の指剥き
塩鮭(しほざけ):あらまき・しほひき
    あらまきや吊られ電球末近し
乾鮭(からざけ)
    乾鮭や酒の肴の喰いちぎり
冬の雨(ふゆのあめ)
    冷え具合今に変わるか冬の雨
12/20
霙(みぞれ)
    ハンドルとポケット交互霙かな
霧氷(むひょう)
    ヘッドライト地平線まで霧氷林
雨氷(うひょう)
    朝日受け雨氷名残の庭の池

冬の水(ふゆのみず)
    冬の水逆さの富士の雪の色
水涸る(みづかる):川涸る・沼涸る・瀧涸る
    凧高し水涸る田圃見下ろして
冬の川(ふゆのかわ):冬川原
    冬の川さざ波も無く流れけり
12/21
池普請(いけぶしん):川普請
    池普請打つ数増えて鋼矢板
狐火(きつねび)
    狐火と火球行く先同じとは
火事(くわじ):船火事・大火・小火(ぼや)・半焼・類焼・近火・遠火事・火事見舞
    暗闇の煙真っ直ぐ照らす火事

火の番(ひのばん):夜番小屋・夜廻り・夜警・夜番・火の見櫓
    エンジンの夜警の響きパトライト
冬の夜(ふゆのよ):夜半の冬・寒夜
    冬の夜蝋燭の影ながながし
柚湯(ゆずゆ):柚風呂
    効能は浮かぶ楽しさ柚湯かな
12/22
近松忌(ちかまつき):巣林子忌
    道行や手を引き引かれ近松忌
大師講(だいしかう):大師粥
    飾りつけ我が家当番大師講
蕪村忌(ぶそんき):春星忌
    蕪村忌やおもひは遠き大江山
クリスマス:降誕祭・生誕祭
    4インチ父が昔のクリスマス

社会鍋(しゃくわいなべ):慈善鍋
    社会鍋夕暮れ喇叭旗の揺れ
師走(しはす)
    急かされて師走はいつも風の吹き
極月(ごくげつ)
    極月や日々変わりなくひきこもり
暦売(こよみうり)
    祝日や一日増えて暦売
12/23
古暦(ふるごよみ)
    物入れにそっと重ねて古暦
日記買ふ(にっきかふ)
    初志貫徹と五年日記買ふ
ボーナス
    ボーナスやなくなり暮らし楽もなく
年用意(としようい)
    新しき道具揃えて年用意

春仕度(はるじたく)
    奥の部屋箪笥のにほふ春支度
春着縫ふ(はるぎぬふ)
    うきうきと明るき色の春着縫ふ
年木樵(としきこり):年木・年木積む
    同じ山何故か気忙し年木樵
歯朶刈(しだかり)
    歯朶刈やポエムに遠き鎌の音
12/24
注連作(しめつくり)
    忙しさへ遠くのぼやと注連作
年の市(としのいち)
    母の後欲しいものなき年の市
羽子板市(はごいたいち)
    羽子板市いつも同じの顔ばかり
飾売(かざりうり)
    声もなく人集まりて飾売

角松立つ(かどまつたつ)
    角松立つ「ひっくり返す」子らの歌
注連飾る(しめかざる)
    掃除終へ神に拝礼注連飾る
煤拂ひ(すすはらひ):煤掃・煤竹
    梁の上積もり積もった煤拂ひ
煤籠(すすごもり)
    煤籠ふりして二人珈琲と
12/25
煤湯(すすゆ)
    安堵顔さもいもこじの煤湯かな
畳替(たたみがへ)
    へそくりや出ては来ぬかと畳替
冬休(ふゆやすみ)
    慌ただし寝転べぬ部屋冬休
歳暮(せいぼ)
    歳暮着く都の母の弾む声
12/26
札納(ふだおさめ)
    分類を規則厳しく札納
御用納(ごようおさめ)
    大行列御用納に中廊下
年忘(としわすれ):忘年会
    小さくてたった一度の忘年会
餅米洗ふ(もちごめあらふ)
    幾臼も餅米洗ふ腕太き
12/27
餅搗(もちつき)
    餅搗や杵の重さの気にならぬ
餅(もち):鏡餅・切餅・熨斗餅
    子の育ち大きさ変り鏡餅
餅筵(もちむしろ)
    光り受け餅筵の香部屋に満つ
餅配(もちくばり)
    門先に人の気配や餅配
12/28
年の暮(としのくれ):歳末・歳晩
    突然の他人行儀に年の暮
節季(せっき)
    二学期の封筒を待ち大節季
年の内(としのうち):年内
    年内が提出期限焦るかな
行年(ゆくとし):年惜む
    行年や惜しむことだけ残りけり
12/29
大年(おほどし)
    大年や水道局の蛇口から
大晦日(おほみそか)
    大晦日書家の半紙が煙い顔
掛乞(かけごひ)
    掛乞に設定温度高くして
掃納(はきおさめ)
    玄関から門先向かふ掃納
12/30
晦日蕎麦(みそかそば):年越蕎麦
    中学生一玉増えて晦日蕎麦
年の夜(としのよ)
    静かなる妻の湯浴み年の夜
年越(としこし)
    年越や湯舟に届く鐘を聞き
年取(としとり)
    年取の膳が並びて紅白を
12/31
年守る(としまもる):としもる
    年守る遠くに鐘が聞きながら
年籠(としごもり)
    年籠大樹が隠す星の舞
除夜(じょや)
    暗闇や除夜の銀杏が隠れ星
除夜の鐘(じょやのかね)
    シャンプーが泡も流して除夜の鐘

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