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なつぞら俳句 4月
4/1
風薫る草原はるか十勝岳
涼しさや狐が足をそっと入れ
草いきれ平原むこう赤い屋根
五右衛門風呂肌まで染まるセピア色
4/2
夏の暁だんだん色つく十勝岳
美味さより芋がくいたし真夏なり
夏の宵繕いをする妻を待ち
夏の朝十勝の水が美味きなり
4/3
夏の暁バケツのリズム乳搾る
鶏鳴や畑が緑増し始め
牛が啼く夏の牧場が草ひかり
白樺やなつぞら青く馬車は行く
4/4
夏の昼長靴を買う闇市場
妹つれ暑き日磨きチョコレート
二人してアイスクリームが溶ける舌
夏の暮揺れる馬車の染まる色
4/5
草青む廊下を走る子らが待つ
夏始め校長室育てる子
反り返る机を撫でる夏の窓
夏止める赤い自転車橋の上
4/6
夏の宵ランプ短し手紙書く
夏の暁牛が生まれる乳が出る
夏風にパラパラの馬駆けるかな
滲む涙帰る決心夏未明
4/8
緑さす家をうしろに夜明け道
ざり蟹を不忍池で釣り上げて
秋を待つ兄と過ごしたガード下
夏きざす闇市場が靴磨き
4/9
秋を待つ父の臭ひが茶封筒
夏浅し川の音添ひて薪拾ひ
晩夏光今夜のおかず釣り上げし
夏の風ひとりで生きる水辺かな
4/10
虫取撫子河原に座り焼魚
夏河原親のない鳥我に似て
夏の川あつい涙が父のふみ
バターチャー自慢に見せる夏の納屋
4/11
露涼し朝もやの中赤い屋根
バター作りゆやけが納屋で熱込めて
朝曇り搾乳挑む乳房撫で
バターチャー回すその音秋近し
4/12
汗忘れ無声映画大歓声
清水流る森の家へと丸太橋
森の家緑色ある絵に夏日
草取りも忘れ去られた開墾地
4/13
草茂る馬車に揺られ友の家
翌日(あす)は秋ランプが灯る森の家
緑の冬切株倒す開墾地
馬鈴薯(じゃがいも)の花友にあわんと馬に乗り
4/15
夏の朝少し動いて風見鶏
足を引き夏の日中に逆子出す
父の絵に牛生まれると夏の暮
十勝晴れ夏の少女馬駆ける
4/16
白樺林馬で並走若き夏
冬遠いストーブ横の絵画帳
話題切れ夏空蒼し兄偲ぶ
秋近し電燈点いて膳囲む
4/17
春眠や牛もつられて「モー」となき
朧夜の夕餉牛耳る牛のこと
暖かし電気スタンドを消し眠る
「山」「道」「風」叫ぶ自転車春の道
4/18
衣替え目映いばかり教室
パン食べてクローバー咲くサイロ横
麻暖簾菓子屋の椅子が心地よく
蕨摘む牧場が牛もさかりつく
4/19
草かぐはし牛の背中に十勝岳
春深し夕餉をかこむ話題さけ
板張りや廊下の音が春の午後
奥様封筒春の日土間に光る靴
4/20
二人して紅鱒捌く台所
暑き日の稽古場で説く演劇を
夏日旺ん干し草を喰う牛の乳
十勝岳むかいて叫ぶ夏没日
4/22
蚊も潜むスタンド灯し手紙書く
日焼け顔帽子カバーが増す白さ
夏の午後木刀造る校舎裏
四人してFFJが響く宮
4/23
草いきれ牛は牛連れ乳の味
夏の暮あかり灯して橋の上
夏きざすコロッケ厚く揚がりけり
夏の宵うちわの風がゆらす髪
4/24
弥生の宵早口言葉「ただいま」と
大声がグランド回る皐月晴れ
繰り返す稽古続き夏負けぞ
汗疹かき火のない火鉢かき回し
4/25
新緑を白い帽子が帰る坂
蟻歩く牛と相談芝居なり
相談とアイスクリーム匙をいれ
稽古場へあいの風吹き一休み
4/26
炎天の背景を描く校庭よ
案を練るアイスクリーム具と器
鼓腹症水かけ冷やす夏場なり
出番くる夏の舞台の冷気かな
4/27
オショロコマ十勝の川をのぼる夏
FFJ夏の風のり開幕へ
汗忘れセリフもわする演劇部
夏のロビー終わったあとも芝居風
4/29
背景画燃やして終わる夏休み
天気よし一家総出の草刈り日
牧草刈る寝転び仰ぐ馬車の上
草刈りてイーゼルたてて十勝岳
4/30なつぞら俳句
郭公が響く草原絵筆持ち
草いきり命の恩人登りくる
夜濯や灯がともる赤い屋根
バターチャー磨くその手を夏灯