新歳時記より 4月の季語
四月(しぐあつ)
四月や消しゴム替えて消して過去
彌生(やよひ)
ピカピカの彌生の朝の眩しさよ
春の日(はるのひ):春日・春日・春日影・春の朝日・春の夕日・春の入日
春日や遠くに見えて輸送船
日永(ひなが)永き日・遅日・暮遅し・暮かぬる
空わたる浜名バイパス暮かぬる
春の空(はるのそら)
北国へゴビのちりまふ春の空
麗らか(うららか)
犬欠伸麗らかにたちて茶柱
長閑(のどか)
のどかさやはるかに聞こゆ草刈り機
初桜(はつざくら)
初桜ブルーシートを日に曝し
入学(にゅうがく):入学試験・入学式
入学式小さな声で門に立つ
出代(でがはり):新参・御目見得
出代や振り返らずに消えにけり
山葵(わさび):山葵漬
辛さ秘む山葵それぞれ産地味
芥菜(からしな)
風の止み芥菜を蒔く土を撒く
三月菜(さんぐわつな)
谷底の緑増す摘む三月菜
春大根(はるだいこん):三月大根・野大根
箸少し春大根の辛さかな
草餅(くさもち):蓬餅・母子餅
陽光に誘ふ餡子や蓬餅
蕨餅(わらびもち)
旗めきて暖簾の招き蕨餅
鶯餅(うぐいすもち)
鶯餅きな粉に潜りいざ飛びぬ
桜餅(さくらもち)
草原のケアハウスへと桜餅
椿餅(つばきもち)
銘々皿蓋の緑や椿餅
東踊(あづまをどり)
三密や東踊もひそやかに
蘆邊踊(あしべをどり)
宵闇へ蘆邊踊の三味の音
都踊(みやこをどり)
都踊姉は速足走る僕
浪花踊(なにはをどり)
レコードや浪花踊をプツプツと
義士祭(ぎしさい)
義士祭や槍の重たい孫衣装
種痘(しゅとう):植疱瘡
種痘日や潮吹く針の長きかな
湯治舟(たうぢぶね)
百軒の湯場の壁画や湯治舟
桃の花(もものはな):白桃・緋桃・源平桃・桃畑・桃林・桃園・桃の村
ふっくらと地面に垂れて桃の花
梨の花(なしのはな)
特急と並びて走り梨の花
杏の花(あんずのはな)
あばら家は杏の花の咲く隣り
李の花(すもものはな)
柴垣向こう李の花ざかり
林檎の花(りんごのはな)
ジーゼルカー林檎の花を汚し去り
郁李の花(にはうめのはな):庭梅の花
郁李へ早き流れやてふの影
山櫻桃の花(ゆずらのはな):庭梅の花(ゆずらうめのはな)
ひとひらの山櫻桃の花の髪飾り
沈丁花(ぢんちやうげ):丁字・沈丁
沈丁花にほひたどれば我が庵
辛夷(こぶし)
彼方より屋根より高し辛夷咲く
木蓮(もくれん):白木蓮・紫木蓮・木蘭
ディスクジョッキーこの木蓮が由来述ぶ
連翹(れんげう)
連翹や違法駐車の列長し
樝の花(しどみのはな):草木瓜
見るだけと樝の花の硬き棘
木瓜の花(ぼけのはな):更紗木瓜・蜀木瓜・広東木瓜・緋木瓜・白木瓜
父植ゑし父と消えゆく木瓜の花
紫荊(はなずはう)
空黄色ふわりと薄く紫荊
黄楊の花(つげのはな)
鶴の呼ぶ樹形崩さず黄楊の花
枸橘の花(からたちのはな)
枸橘の棘を避けつつセールスマン
山椒の花(さんせうのはな):花山椒
分け入れば山椒の花どっと散り
接骨木の花(にはとこのはな)
一塊接骨木の花庭にあり
杉の花(すぎのはな)
杉の花陽光浴びて風に舞ふ
春暁(しゆんげう):春の曙・春あかつき・春の暁
春暁や始発列車を起こしけり
春晝(しゆんちう)
春晝おうどの虫や顔を出し
春の暮(はるのくれ)
なにもかも霞んで見えて春の暮
春の宵(はるのよい):春宵・宵の春
月なくも歩調緩やか春の宵
春の夜(はるのよ):夜半の春・春夜
短冊を一枚ずつを夜半の春
春燈(しゅんとう):春の燈・春灯
春燈や万年筆と祖母の文
春の月(はるのつき):春月
気の沈む水平線の春の月
朧月(おぼろづき):月朧
うろ覚え並べ名句や朧月
朧(おぼろ):草朧・鐘朧・朧影・朧夜は朧月夜の略
久々の吾子の小走り鐘朧
龜鳴く(かめなく)
杭の上群れ遠ざかり龜の鳴く
蝌蚪(くわと):お玉杓子・蛙の子
孵れども藻に絡まれて蛙の子
柳(やなぎ):絲柳・靑柳・遠柳・川柳・門柳
風通すまばらに垂れて絲柳
花(はな):花の雲・花吹雪・落花・花屑・花埃・花の塵・花の雨・花冷・花の山・花便・花守
誘われて飛ばす車や花の夜
櫻(さくら):山櫻・八重櫻・遅櫻・朝櫻・夕櫻・夜櫻
夜櫻や提灯揺れず続きけり
花見(はなみ):桜狩・観桜・花巡り・花の宴・花の茶屋・花の宿・花の幕・花
筵・花人・花衣・花疲れ
風流をあえて拒みて花見かな
花篝(はなかがり):花雪洞
雨の夜ひと時は今花篝
花曇(はなぐもり)
花曇バイクの先は咲き満ちて
桜漬(さくらづけ):花漬
開きだす有田の湯吞桜漬
花見虱(はなみじらみ)
のそのそと花見虱と行く名所
櫻鯎(さくらうぐひ)
一網に櫻鯎や掬いとり
桜鯛(さくらだひ):花見鯛
舳先から吊り糸光り桜鯛
花烏賊(はないか):櫻烏賊
良き鮮度花烏賊が足動きけり
蛍烏賊(ほたるいか):まついか
きらきらと網の丸さや蛍烏賊
春の海(はるのうみ)
下る坂カーブ曲がれば春の海
春潮(しゆんてう):春の潮
春潮や帆船軋む泡はじき
観潮(かんてう)
観潮船橋の観客仰ぎ見て
磯遊(いそあそび):磯菜摘
汐が満つバケツ空っぽ磯遊
汐干(しほひ):干潟・汐干狩・汐干潟
汐干狩浜辺の松の風すがし
蛤(はまぐり):はまなべ・焼蛤
蛤や縄文の高き貝塚
浅蜊(あさり)
月曜日酒の開いて浅蜊かな
馬刀(まて):馬刀突・馬刀堀
根競べしばしの時間馬刀の出て
櫻貝(さくらがひ)
日記帳上に閉じ置く櫻貝
栄螺(さざえ)
灯台の向こうはソ連栄螺焼く
壺焼(つぼやき)
壺焼やだみ声遠く日焼け顔
鮑(あはび):鮑取
富士山や一気に潜りとる鮑
常節(とこぶし)
常節や溢れる小笊高笑ひ
細螺(ささご):きしやご
お土産やぱちぱち細螺弾く音
寄居蟲(やどかり):がうな
寄居蟲や宿を抜け出て恥ずかしく
汐まねき(しおまねき)
マスゲーム汐退く浜の汐まねき
いそぎんちやく
噛まれぬかいそぎんちやく指遊び
海膽(うに):雲丹
透き通る裸足の拒む海膽の浜
搗布(かぢめ):搗布刈・搗布焚く
波静か揺らぐ搗布や鎌光り
角又(つのまた)
玉砂利や角又の干す温さかな
鹿尾菜(ひじき)
耳で見る波の高さや鹿尾菜刈る
海雲(もづく):水雲・海蘊
巣の海やパックに泳ぐ海雲かな
海髪(うご)
防波堤熱きコンクリ海髪乾き
松露(しょうろ)
うねうねと松露探して中田島
一人静(ひとりしづか)
万葉園一人静の開く晝
金鳳華(きんぽうげ):うまのあしがた
新品の眼鏡眩しく金鳳華
桜草(さくらさう)
母逝きて庭をぐるりと桜草
チューリップ:鬱金香
だんだんと短く咲けりチューリップ
ヒヤシンス:風信子
捨てられて根っこの白きヒヤシンス
シクラメン
ひと時の表舞台やシクラメン
スヰートピー
スヰートピー思い出させてあのカット
シネラリヤ:サイネリヤ
撥ね飛ばす如雨露の虹やシネラリヤ
アネモネ
アネモネや花と名前の覚えたり
フリージア
部屋を占む鼻一杯にフリージア
灌佛(くわんぶつ):佛生會
灌佛の日トンビの声のありし空
甘茶(あまちや)
背中押す並ぶ楽しさ甘茶の日
花祭(はなまつり)
熱々と缶コーヒーが花祭
釋奠(せきてん):おきまつり
この齢縁なきことよ釋奠よ
安良居祭(やすらゐまつり)
掴まんややすらゐの花背中の子
百千鳥(ももちどり)
庄屋森入り乱れてや百千鳥
囀(さえづり)
囀や森林公園の句会
鳥交る(とりさかる)
昼下り誰もゐぬ園鳥交る
鳥の巣(とりのす):巣籠・巣鳥
秘密基地鳥の巣のてふ羽根のあり
古巣(ふるす)
ふわふわと羽舞い上がり古巣かな
鷲の巣(わしのす)
積年の鷲の巣太く雛の見え
鷹の巣(たかのす)
急降下鷹の巣戻り卵抱く
鶴の巣(つるのす):鶴の巣籠
必殺と鶴の巣籠誘い込み
鷺の巣(さぎのす)
山枯らす鷺の巣の下糞まみれ
雉の巣(きじのす)
分け入れば空の雉の巣雄の飛び
烏の巣(からすのす)
烏の巣今年選ばれし電柱
鵲の巣(かささぎのす)
一本道鵲の巣の見つけられ
鳩の巣(はとのす)
パーキング鳩の巣のあり空の場所
燕の巣(つばめのす):巣燕
幸を呼ぶ玄関の上燕の巣
千鳥の巣(ちどりのす)
丸石と見紛うばかり千鳥の巣
雲雀の巣(ひばりのす)
彼方よりぴょんぴょん歩き雲雀の巣
雀の巣(すずめのす)
軒先の瓦の隙間雀の巣
孕雀(はらみすずめ):子持雀
温き陽に孕雀の飛び立てり
孕鹿(はらみしか)
煎餅を押し退け前へ孕鹿
仔馬(こうま):孕馬
いつみても仔馬の足の長さかな
春の草(はるのくさ):春草・芳草・草芳し
丸い円山羊が食み跡春の草
若草(わかくさ):嫩草・新草
若草の牧場あちこち糞のあり
古草(ふるくさ)
古草や轍の消えて古屋敷
若芝(わかしば)
若芝の初々しさや若夫婦
蘖(ひこばえ)
階段の蘖高く参拝者
竹の秋(たけのあき)
ふかふかな誰も入れなく竹の秋
嵯峨念佛(さがねんぶつ)
嵯峨念佛蜘蛛糸戻るすがし風
十三詣(じゅうさんまゐり):知恵貰・知恵詣
連れ立ちて十三詣今年まで
山王祭(さんわうまつり)
山王祭穴掘り進む馬のしと
梅若忌(うめわかき):木母寺大念佛
飛び石や窓に一点梅若忌
臘名残(れふなごり)
空に打つ弾の響きや猟名残
羊の毛剪る(ひつじのけきる)
毛を刈りし羊身震い大きな目
春光(しゅんくわう):春の色・春色
春光や潮見坂へと続く浜
靑麥(あをむぎ):麥靑む
掌に靑麥やさしつんつんと
麥鶉(むぎうづら)
蛍光灯ちかちかとして麥鶉
菜の花(なのはな):菜種の花・花菜
菜の花のおひたしや母の枕辺
花菜漬(はななづけ)
おてしおや春の色増す花菜漬
菜種河豚(なたねふぐ)
古女房今宵は静か菜種河豚
大根の花(だいこんのはな):花大根・種大根
陽光に大根の花伸びにけり
豆の花(まめのはな):蠶豆の花・豌豆の花
緑葉の隠れてしまう豆の花
蝶(てふ):紋白蝶・紋黄蝶・胡蝶・蝶々・初蝶・揚羽蝶
新芽伸ぶ生垣などり蝶の舞ふ
春風(はるかぜ):春の風
スカート翻し春の風の巻く
凧(たこ):長崎の凧揚・紙蔦・鳳巾・いかのぼり・いか・はた・奴凧
風を追ひ息あがらして子らの凧
風車(かざぐるま):風車賣
色紙と大豆割らずと風車
石鹸玉(しやぼんだま):たまや・水圏賣
ベランダへ石鹸玉の訪ね来て
鞦撰(しうせん):秋千・ふららこ・ぶらんこ・半仙戯
補助輪とれぶらんこ一人土曜午後
ボートレース:競漕
声合わせボートレースや舳先競り
運動会(うんどうくわい)
母も来ぬ運動会ビリ保ち
遠足(ゑんそく)
遠足や鯉の御馳走咽る黄身
遍路(へんろ):遍路宿
杖を置きスマホに記録遍路宿
春日傘(はるひがさ):春の日傘
曲がる塀ゆるり近づき春日傘
朝寝(あさね)
六時だよ夢の中起き朝寝かな
春眠(しゆんみん)
寝落ち前教科書立てて春眠
春愁(しゆんしう)
バスの無いさすらいの旅春愁
蠅生る(はえうまる)
手洗い励行蠅生る場所の無き
春の蠅(はるのはえ)
逞しく鳴らして羽音春の蠅
春の蚊(はるのか):春蚊
目覚めたる網戸を攻めて春の蚊よ
虻(あぶ)
ぶんぶんと針の太さや虻の舞ふ
蜂(はち):蜜蜂・熊蜂・足長蜂・穴蜂・土蜂
ホバリング蜂の縄張り攻め姿勢
人丸忌(ひとまるき):人麿忌
人丸忌石見の国へ行きたくて
花供養(はなくよう)
空けぶる君いる横の花供養
御身拭(おみぬぐひ)
御身拭マスクの他人連なりて
御忌(ぎよき):法然忌・御忌詣・御忌の鐘
緑なす法然院に御忌の音
蜃気楼(しんきろう):海市・喜見城
自慢げな君の話も蜃気楼
御影供(みえいく)
御影供や奏でし祖母が持鈴の音
壬生念佛(みびねんぶつ):壬生狂言・壬生踊
壬生念佛電車の音も鉦リズム
島原太夫道中(しまばらたいふのどうちゆう)
誘われて島原太夫道中
先帝祭(せんていさい)
先帝祭朱き蛇の目が白化粧
鮒膾(ふななます):山吹膾・叩き膾・子守膾
鮒膾湖北の風も贈り着く
山吹(やまぶき):濃山吹・葉山吹
山吹や豪華な庭へ咲き乱れ
海棠(かいだう)
手入れせぬ父が海棠やせ細り
馬酔木の花(あせびのはな)
散り散りに馬酔木の花の白き庭
ライラック
ライラックにをひラーメン食べ歩き
小米花(こごめばな):雪柳・小米桜
サイドミラー小米花散りねむの木村
小粉團の花(こでまりのはな)
右カーブ小粉團の花故郷よ
楓の花(かへでのはな)
森林や楓の花のひっそりと
松の花(まつのはな)
年一度松の花摘む庭師真似
柃の花(ひさかきのはな)
誘ひて柃の花神の域
樒の花(しきみのはな)
この年で樒の花が見分け方
木苺の花(きいちごのはな)
草陰に木苺の花三つ咲き
苺の花(いちごのはな)
温室の外咲き乱れ苺の花
通草の花(あけびのはな)
淡紫通草の花が通学路
郁子の花(むべのはな)
夕空へ孫を背負いて郁子の花
宗因忌(そういんき)
暗闇に罅入り音や宗因忌
天皇誕生の日(てんわうたんじやうのひ)
日の丸小さめ天皇誕生の日
靖国祭(やすくにまつり):招魂祭
標準木祝詞を聞きて招魂祭
どんたく
車停めドンタク囃子見え始め
葱坊主(ねぎばうず):葱の花・葱の擬寶
抜く手形一刀の切り葱坊主
萵苣(ちさ):ちさ缺く
じゃりじゃりとはね上がり砂萵苣洗ふ
みづ菜(みづな):うはばみさう
はりはりと敵とおぼしきみず菜刈る
鶯菜(うぐひすな)
緑なす畑の一隅鶯菜
茗荷竹(めうがたけ)
畏きや間隔揃え茗荷竹
杉菜(すぎな)
築山を占めて杉菜の緑かな
東菊(あづまぎく):吾妻菊
荒れ放題一際目立ち東菊
金盞花(きんせんくわ)
大昔初見で憶え金盞花
勿忘草(わすれなぐさ)
勿忘草忘れないでね花束に
種俵(たねだわら)
納屋の奥出番近しと種俵
種井(たねゐ):種浸し
頑丈な縛りで降ろし種井かな
種選(たねえらみ)
心地よき水掻きまわし種選
種蒔(たねまき)
種蒔や嚏も出さず均等に
苗代(なはしろ):苗田・苗代田・苗代時
木綿糸ぺけの際立ち苗代田
水口祭(みなくちまつり)
御幣立ち水口の祭かな
種案山子(たねかがし)
月も出て蛙も唄ふ種案山子
苗代茱萸(なはしろぐみ):胡頽子
声高し苗代茱萸にくだをまく
朝顔蒔く(あさがほまく)
三日坊主朝顔蒔くと日記帳
藍植う(あゐうう)
裸田や藍植う畝の少しずつ
蒟蒻植う(こんにやくうう)
柔らかき蒟蒻植うや鍬の音
蓮植う(はすうう)
富士の雪蓮植う泥の生ぬるき
八十八夜(はちじゅうはちや)
漂える八十八夜茶のかをり
別れ霜(わかれじも):霜の名残・忘れ霜・別れ霜
プロペラや闇夜の別れ霜
霜くすべ(しもくすべ):霜害
扇風機まわれまわれば霜くすべ
茶摘(ちゃつみ):茶摘女・茶摘唄・茶摘笠・茶山・茶園
やわき指一葉一葉の茶摘かな
製茶(せいちゃ):焙爐
蒸せかえる製茶工場の香の残り
鯛網(たひあみ)
揺れ筏鯛網回り切れぬ群れ
魚島(うをじま)
魚島や松山城はビルの影
鯥(むつ):鯥五郎
泥のけてめんくり玉や鯥五郎
蠶(かひこ):蠶卵紙・蠶飼・蠶飼ふ・たねがみ・掃立・飼屋・蠶棚・捨蠶・蠶時
枕辺へ蠶休まず食むリズム
山繭(やままゆ)
悠然と山繭灯り求め来て
桑摘(くはつみ):桑籠・桑車
小柄女や桑籠を置く大きな音
桑(くは)
見えぬほど大きく伸びて桑畑
桑の花(くはのはな)
桑の花藁屋の我が家隠しけり
畦塗(あぜぬり)
水満ちて父ぺたぺたと畦を塗り
蔦若葉(つたわかば)
甲子園上へ上へと蔦若葉
萩若葉(はぎわかば)
風呂敷の習字道具や萩若葉
草若葉(くさわかば)
ペダル踏むサナトリュームへ草若葉
葎若葉(むぐらわかば)
新築祝葎若葉の道を行く
罌粟若葉(けしわかば):芥子若葉
廃屋へ外から覘き罌粟若葉
菊若葉(きくわかば)
菊若葉刺して鹿沼の水含み
若蘆(わかあし):蘆若葉
敵陣の一時止まり蘆若葉
荻若葉(をぎわかば)
風に揺る輪中をぐるり荻若葉
若菰(わかごも)
若菰をかき分けて出で鴨家族
髢草(かもじぐさ)
雲流る仰ぎ見にほふ髢草
水芭蕉(みづばせう)
木道の靴音続き水芭蕉
残花(ざんくわ)
緑おす最後の残花急ぎ散り
春深し(はるふかし):春闌・春闌く
春深し隣りは窓を開け広げ
夏近し(なつちかし):春隣る
夏近し今年の暖簾誂えて
蛙(かはづ):初蛙・鳴蛙・遠蛙・晝蛙
初蛙飛び込む水の流れかな
躑躅(つつじ):やまつつじ・きりしま
赤染まりグリーンベルト躑躅咲く
満天星の花(どうだんのはな)
浜名湖を満天星の花隠しけり
石南花(しやくなげ):石楠花
惑わさる石楠花の咲く昼下り
柳絮(りうじよ)
坂の上柳絮は行く東へと
若緑(わかみどり):松の緑・緑立つ・若松・松の蕊
とげとげを優しく隠し若緑
緑摘む(みどりつむ)
脚立立つ足おぼつかず緑摘む
松毟鳥(まつむしり):まつくぐり
枝揺れてさかしまに食む松毟鳥
ねぢあやめ
水溜り公園の隅ねぢあやめ
薊の花(あざみのはな):花薊・薊
放棄地の真ん中に立つ花薊
山歸來の花(さんきらいのはな):さるとりいばらの花・さるとりの花
採り集めリースに山歸來の花
藤(ふじ):藤の花・山藤・白藤・藤波・藤棚
絨毯を敷いて藤棚開門と
行春(ゆくはる)
行春や弁当不味い日はけふ
暮の春(くれのはる):暮春
暮の春家庭訪問始まりぬ
春惜む(はるおしむ):惜春
牛の引く土を反して春惜む