今月の俳句 2021/12
12/31
1050.灯の最後の揺らぎ大晦日
1049.大晦日家に一人も鐘の鳴り
1048.祖父の打つうどん年越し海老が反る
1047.大晦日紅白の蒲鉾を切り
1046.大晦日穴の靴下捨てにけり
12/30
1045.クレーム処理大晦日の前夜まで
1044.静けさや街道沿いの餅の音
1043.冬休み忙し忙しと云ふテレビ
1042.空っ風大売出し旗千切れんと
1041.風すさぶ時間外窓口に立ち
10/29
1040.年暮れて巡行船が島の影
1039.大晦日床下に落ち五百円
1038.一発の願いを込めて除夜の鐘
1037.弱すぎた来年までの除夜の音
1036.成長期年越そばでもおかわり
10/28
1035.年の暮電飾今年一人観て
1034.凍星やイルミネーションまだ遠き
1033.年末のすること多きしない吾
1032.大寒波ニュース知らせて部屋の冷え
1031.大雪や車色消え数珠繋ぎ
12/27
1030. 温泉街クリスマスあとの静けさ
1029 忘年会朝の別れの暮の宿
1028 忘年会幹事の仕事終えて朝
1027 パーテーのなくなる日々や年の暮
1026 クリスマス終えてサンタや忘年会
12/26
1025.教会のイルミネーション冬夜中
1024.枝揺れて豆電球のクリスマス
1023.雪しまき赤い点滅鳴らしつつ
1022.テキパキと雪招き入れ救急車
1021.クモの網光の揺れて風の花
1020.同名を呼ばるる人の冬に待つ
1019.冬日影以外に混むやこの時間
1018.暖房を利かして換気冬の朝
1017.並ぶ人北風の中皆病める
1016.行列の眼医者に並ぶ北颪
12/25
1015.クリスマス空のサンタや慰労会
1014.寒昴首をすくめて仰ぎ見て
1013.年惜しむイルミネーション今宵迄
1012.イルミネーション今宵点灯クリスマス
1011.クリスマスカード歌ふ讃美歌女子高生
1010.難民の通じぬ言語クリスマス
1009.讃美歌美しハーモニークリスマス
1008.匂ひ来る襖の向こうの焦げる餅
1007.冬将軍装い新た出陣か
1006.故郷の兎味噌漬け炭火焼き
12/24
1005.ストーブを囲み焼肉焦げ易し
1004.時折に転がる赤き毛糸編む
1003.冬の空飛行機西へ弧を描き
1002.新品の革靴ぎゅうと冬至かな
1001.寒冷えの図書館の椅子殊更に
12/23
1000.冬至待ち当面千句詠みし朝
999.従姉妹煮や南瓜を制す小豆味
998.箆混ぜて柚子ジャム煮込む冬至過ぎ
997.聖護院大根ごろりと玄関へ
996.千枚を聖護院蕪スライサー
12/22
995.けふ冬至白雪姫は馬車を喰ひ
994.友達へぐつぐつ煮込む柚子のジャム
993.あおあおと柚子湯に浮かぶ吾子の尻
992.おはようと風邪にまみれた咳続き
991.昼下り嚏のこだま帰り来て
990.突然の嚏三発桃電話
989.蚯蚓から水の流れの耳の鳴り
988.声帯を使わぬ日ありクリスマス
987.ものぐさへ捜す仕打や年の暮
986.今来たと音なく温むや床暖
12/21
985.新雪や轍の横の靴の跡
984.息の音も吸い込む雪の静けさよ
983.熱る手のカメラ冷たく雪棚田
982.凍りつく氷柱の光り水車小屋
981.ぎしぎしと足元だけの雪の朝
12/20
980.暁の動き雪から棚田かな
979.誰もゐぬ朝の棚田に雪の降る
978.朝日中棚田の道を雪隠す
977.霜柱長靴の踏むざくざくと
976.つるつると踏切越せぬ雪の朝
975.早起きや雪の電車の撮り納め
974.雪の朝雪知らぬ夫飛び出して
973.しんしんと暁の雪ふわり積む
972.床暖の温みじわじわ足の裏
971.南天の實葉もろともしづり雪
12/19
970.黒髪やうどんを啜る冬の雨
969.あの場所に座り天丼雪時雨
968.昆布の香天麩羅うどん雪の夜
967.風花やゆっくり締まり自動ドア
966.雪しまき天ぷらうどん湯気短か
12/18
965.凍結の砂利道硬しうすい靴
964.寒き夜長い手紙を待つやきみ
963.暮れやすき日父は飯だと呼びに来て
962.ふんわりと床暖房の冬の朝
961.悴む手指の温み知る合掌
12/17
960.悴む手取っ手引っ張り霊柩車
959.小春日や無蓋貨物車通り過ぐ
958.途中下車石炭の山暮近し
957.年用意エレベーターに銭握り
956.跨げない広く大きな火鉢かな
12/16
955.目に火花チャックの焼けて又火鉢
954.焼き芋や火鉢に潜る焼け具合
953.つぼどりや火鉢に翳し小さい手
952.凩や着物の裾の舞ひ踊り
951.牡蛎フライ三人で食ふ一皿よ
12/15
950.素手背広車の人はコート着て
949.句友へと煤払い譲る銘陶
948.目に浮かぶ年貢納へ父のあと
947.短冊へ綺麗な字来ず納めの句
946.初参加苦心惨憺納めの句
12/14
945.切りに行くクリスマスツリーが山
944.上り坂頬染む熱よマフラーよ
943.下り坂頬切る風よマフラーよ
942.凍みる朝ペダルは軋む遠州路
941.木守り柿今年もシャッター切る夜
12/13
941.冬の海空の運搬船西へ
940.空っ風堤防隠す太平洋
939.空しさや廃道の秋空澄めど
938.分け入れど酷道の秋色まばら
937.冬峠枕より落石でかし
936.冬に入る「ここまで」太字峠道
12/12
935.冬に入る進入不可が峠道
934.帰り道猪の肉開いており
933.旗立てど凩もなき過疎の村
932.鐘の音十二月の大当たり
931.大売出し旗十二本十二月
12/11
930.鰻屋の旗のほころび冬深し
929.降り立てば餃子のにほふ寒の月
928.街灯り会社のネオン冬の海
927.煙立つ冬めく夜の向こう岸
926.映し出す夜の火事場の冬時雨
12/10
925.シルエット冬の火事場の輻射熱
924.寒き夜や隣りの工場燃え始め
923.空っ風電線の端流れ落ち
922.真っ直ぐに飛べないトンビ滑空路
921.空っ風鴉は横へ逃げながら
12/9
920.小春日やはずのてっぺんグライダー
919.締め直し音色の高く虎落笛
918.老化人人それぞれのしのぐ冬
917.惚けし兄今は寒さも解りしか
916.凍月夜灯りの洩れぬ街の道
915.屋上へ冬霞見ゆ磐田原
914.紅葉狩赤月逃げり高速道
913.日を追いし寂しさ誘う弓張月
912.朝顔へ咲くを急かすか朝の月
911.分け入れば忘れて寒さ蜜柑山
12/8
910.落月や竿戯れし夏の浜
909.満月や土用の沈む水平線
908.朝顔咲け叫んで沈む満月
907.凍る道朝月沈む家路かな
906.落月やまだ漆黒の凍みる朝
12/7
905.食べ尽くしかさごの唐揚げ伊豆の冬
904.波静か小春日和の駿河湾
903.本当の受験を高み十二月
902.大銀杏吾子ら撒きあげ空の青
901.大銀杏公園に敷く朝のこと
900.枯れ葉坂友はバイクと滑りゆく
899.銀杏坂滑る前輪後続車
898.推薦の合格通知十二月
897.幼子のクレヨンのあか紅葉色
896.流れつき石にもたれて赤朽葉
12/6
895.クリスマス広告用紙の裏もあり
894.父と行く歳暮売り出し尻を追ふ
893.品変えるお歳暮届く嘆き顔
892.お歳暮や届いたの声短くて
891.九つの湯気の里芋神迎え
12/5
「急でないけど遠くない」なんと上手い宣告、頭の中で何月何日が浮かぶ思わず鸚鵡返しで「急でないけど遠くないですね」と言っていた。
コロナから解放され自由に行動できる僅かな時間だから、暗い句の発表は一旦中断する。明日からは明るい句を?
890.「急でないけど遠くない」冬いきて
889.冬野原何処の道を妻やゆき
888.山眠る自発呼吸のなきリズム
887.声を聞き脈拍乱るしぐれ虹
886.厚着過ぎまん丸の妻今一重
12/4
885.雪灯り消ゆ停電がスタジアム
884.雪時雨あのスタジアム終りとか
883.もう出来ぬ風花を追ふ駐車場
882.この画面涙のぼかし冬の雷
881.富士山はけふも東に雪景色
880.面会の許さる午后の小春かな
879.信号の変わる瞬間冬時雨
878.想い出は突然出会ふ時雨如
877.高架橋妻見た富士や雪景色
876.小春日やテレビの前に車椅子
12/3
875.冬の雷殘りの数えインシュリン
874.冬浅し積もり積もりし残薬よ
873.どの顔とけふが別れと冬の雨
872.通い慣れ妻余所にゐて年の暮れ
871.知れ渡る妻が容体十二月
870.先生に問われし妻や春はなく
869.三時間冬の検診妻はゐぬ
868.手の震え追加の書類冬晴れ間
867.冬の朝けふの僕だけ眼医者行く
866.「おしっこ」の声はもうなき朝は冬
12/2
865.抗えぬ呼吸のリズムICU
864.君の世話生き甲斐と知る晩冬
863.介護無きする事も無き十二月
862.神帰る君は帰らずゆく準備
861.あの日から離れ離れの十二月
860.冬の日やみしり物音妻はゐず
859.暗闇の君が寝息や十二月
858.穏やかな寒風も無き呼吸音
857.神迎え呼吸器洩れて我を待つ
856.物言わずその日待つ君十二月
12/1
855.君と見たあの坂道の銀杏散り
854.黄落やリカバリー室窓もなき
853.面会や何も答えぬ冬の窓
852.苦しまず人工呼吸十二月
851.リカバリー室胸はだけ寝る外は冬
850.朝起きて寝息確認霜柱
849.起きなくていい朝迎へ十二月
848.四六時中妻への動き絶えて冬
847.霜月の冷えしベッドに妻はゐず
846.後ろから寝息聞こえぬ冷たし夜