生きること、生活を営むということ②
なんで課長はこの企画を通してくれないんだぁ~
今午前2時。
会社にいます。
残業しています。
何をしているって?
「ナニ」をしています。うしししし…
んなわけあるかぁ!
本日の部署内ミーティングでうちの課が今狙っているあの企業と契約するために俺がおよそ1か月掛けて練りに練った企画を発表してやった。
「誰がみても完璧だろこの企画。俺天才!」
と、思っていた時期がありました。
実際には課長から
「うむ、君の企画はやろうとしている事は理解できるし、確かに新しい視点のアイデアだ。」
「だけどなぜその企画が必要なのか私には理解できない。」
「先方には来週にはいくんだろう?明後日までにその部分を詰めてくれるか?」
明日と言うか…もう今日?は別口に訪問する予定が入っているんでできる限り、今仕上げておきたい。
ミーティングの後に課長にこの企画どこを直せば良いか聞きにいったのだけど
「私に『わからない事に素直に聞きに来た点はすばらしい』。」
「だが、私は既に君に答えを伝えている。」
「私が言った事をもう一度思い出してごらん。」
と言われた。
課長は素晴らしい人だ。
決して理不尽な事は言わないし、みんなからも慕われている。
もちろん仕事もできると上層部から認められている。
だから課長は本当に俺に答えを言ってくれてると思う。
だからもう一度、課長の言っていたことを思い出す…。
…確かに言ってくれていますね。こりゃ、ダメ出しされるよね。
ゴールが見えたからもう少しがんばろう。
始発で帰れば少し眠ることもできそうだし。
さあ、俺君の企画書は何がダメだった?
素敵な彼女とお付き合いしたい俺
俺は現在国内で最高学府と言われる大学で法律を専攻している学生だ。
俺は警察官僚を目指して国家公務員試験一種合格に向け、勉強している。
来年俺は4年生だ。すでに誕生日を過ぎて21歳となっているので来年には公務員試験を受験し、卒業迄に合格を目指す。
学校の成績も上位だし、卒業に必要な単位も十分以上に取得できそうだ。
そんなにも優秀な俺がなぜ警察官僚を目指しているかって?
じつは俺のおやじも警察官僚だ。しかし地方国立大卒のため、警察庁内での地位はいまみっつ位低い。そんな庁内では立場が低いおやじだが俺にとっては尊敬できるおやじだ。
おやじはおふくろを子供の俺が見ていてもよくわかるくらい大事にしている。
もちろん、俺や姉貴にも愛情を注いでいてくれることを感じている。
親戚や近所からも信頼が厚く、いろいろ相談にものっており誰からも頼りにされているおやじだ。
俺もそんなおやじのようにみんなから愛される警察官僚となりたい。
ただ、おやじは庁内での立場は低い。だから俺がリベンジしてやる。
そのためにがんばって最高学府にも入学できた。これからも勉強に手を抜くつもりもない。
そんな俺でも恋に落ちる。
まだ、相手の名前もわからない。なぜなら一度も彼女と会話を交わしたことが無いからだ。
彼女は今日も大学構内にあるおきまりのベンチでひとり本を読んでいる。
そんな彼女とは法学の講義でとなりの席になったことがある。
講義を聴く彼女の姿はまっすく姿勢が伸びていて可憐な花のように美しい。
真剣に教授の講義を聴く横顔。
すっぴんではないようだが、控えめで自然な化粧は好感をもった。
とてもきれいな文字で書かれているノート。
法学の講義をそんなに真面目に聴いている彼女。
将来は弁護士でも目指しているのだろうか。
特定の友達がいるようでもない彼女はいつもひとりで本を読んでいる。
毎日清楚な彼女を目で追っている俺はいつの間にか彼女に恋していたようだ。
よし、決めた。
彼女に交際を申し込もう。
俺はある日、彼女に交際を申し込んだ。
彼女からの答えは
「私に好意を持ってくれてありがとう。」
「だけど私は家の都合で親しいお友達も恋人もつくれないの。」
「ごめんなさい。」
その日はそれで終わった。
今どき家の都合で友達も恋人も作れない?!
ありえねぇだろ!
どんだけ古風な家なんだ!
俺は何度も彼女に交際を申し込んだ。
そのたびに彼女は
「あなたに迷惑をかけるから」
「家の仕事を継いでくれる人としかお付き合いできないから」
「あなたの将来が無くなるから」
「お父さんは厳しくて怖い人だから」
と、断ってきた。
最初に交際を申し込んでからはや一年。
俺は公務員試験にも合格し、あとは卒業を待つばかりとなっている。
今日俺は腹をくくって彼女に交際を申し込む。
今日で最後にする。
「もう俺には将来君とともに歩む人生しか見えない。」
「君のためなら俺はどんな事でもがんばれる。」
「俺はどうしても君と交際したい。将来的には伴侶としたい。」
「君を思う気持ちにやましい事はひとつも無い。俺は一生を君に捧げる」
俺の渾身の言葉に彼女はついに絆される。
「そんなに私のことを考えてくれてありがとう。」
「私も決めました。あなたを一生の伴侶としたい。」
「私の父にも会ってもらえますか?」
俺の答えは決まっていた。
「もちろん!これからでも会おう。」
俺は彼女と一緒に彼女の家に挨拶に行った。
それから5年後、俺は二児の父となっている。
もちろん妻は愛しの彼女だ。
俺は彼女のために警察官僚にはならなかった。
彼女との結婚式の後、俺のおやじは警察庁を辞めた。
それ以来、俺は自分の実家とは絶縁状態だ。
おふくろは昨年亡くなった。死に目にも会っていない。
さて、俺君に何が起こっていたのか?