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GIGAスクール構想の着実な推進と教育DXに向けて 文部科学省が令和 5 年度概算要求を発表

令和 4 年 8 月 30 日、文部科学省は令和 5 年度の概算要求等の発表資料を公開した。概要一般会計の要求・要望額は、今年度予算より 6,130 億円増の 5 兆 2,818 億円、対前年度 11.6 %増となっている。そのうち文教関係予算は前年度から 3,525 億円増え、 4 兆 3589 億円を計上している。本稿では、概算要求の内、新規要求項目及び次年度大幅に増額要求されている事業項目について確認していきたい。

教員の働き方改革・あるべき姿を目指して


近年、学校教育を取り巻く環境が大きく変化し、学校が抱える課題も多様化・複雑化する中で、教員の負担も増加傾向にある。これまで以上に児童生徒と向き合い、寄り添いながら、一人一人の学びの見とりが求められる今の学校教育において、こうした状況は早急に解決すべき課題といえる。

今年度予算の倍以上となる 103 億円を要求している教員業務⽀援員(スクール・サポート・スタッフ)の配置⽀援。学習プリントの準備や採点業務、来客・電話対応、消毒作業等、日々の業務をサポートすることで、教員の負担軽減を図り、児童⽣徒への指導や教材研究等に注⼒できるようにするものだ。学校教育活動の充実や働き⽅改⾰の実現につながるものと考える。

また、要求額はそれほど大きくないものの、複雑化・多様化する現代的健康課題を抱える児童⽣徒たちに対する養護教諭のより⼀層きめ細かなサポート・ケアを実現する体制の構築や専⾨性の向上を図ることを目的とした「⼦供の⼼⾝の健康を担う養護教諭等の業務⽀援の充実」が、新規として事業費 0.6 億円で計上されている。

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引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P7

先般、「 教育公務員特例法及び教育職員免許法の一部を改正する法律 」の施行による教員免許更新制の廃止に関するレポートを別稿にて紹介した。その中で、教員免許更新制廃止などの制度改正により「新たな教師の学び」の実現に向けた体制が未だ整っていない状況を中央教育審議会「『令和の日本型学校教育』を担う教師の在り方特別部会 」が課題として認識していることをお伝えしている。

今年度予算の約 3.3 倍の 46 億円で計上されている事業が「『新たな教師の学び』を⽀える研修体制の構築 」だ。令和 5 年 4 ⽉からの各教員の研修履歴や、履歴に基づいた教員の資質向上に関する指導助⾔等を⾏う仕組みの制度化に伴う、教員の個別最適な学び、協働的な学びの着実な実現に向けた研修受講履歴を記録する新たなシステムの開発や、時間・場所を限定しない研修受講を可能とするプラットフォーム等の構築・整備を目指すものである。

引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P8

教育データを活用した新たな学びの実現に向けて


「 GIGA スクール構想」によって、令和 2 年度中に全国の小中学校に児童生徒 1 人 1 台の端末と大容量高速ネットワークが整備された。文部科学省は、令和 3 年度を「 GIGA スクール元年」と位置づけ、利活用の推進に向けて様々な施策を進めてきた。しかし、教育活動に臨む環境が大きく変化したことで、多くの教員は既存の業務に加え、端末やアプリケーションの操作習得やトラブル対応、更には児童生徒の学びに有効な端末活用の検討に至るまでを日常的な業務として行うことを余儀なくされ、さまざまな課題や悩みを抱える状況にある。

GIGA スクール運営支援センターは 1 人 1 台端末環境における円滑な学校運営の支援策だ。文部科学省令和 4 年度事業(令和 3 年度補正予算含む)として各都道府県等に整備された。各自治体が自立して ICT 活用を推進するための運営支援体制をスタートしている。本年度は、GIGA スクール運営支援センターのサポートを得ながら、端末を本格的に活用していく「端末活用元年」とも位置づけられるが、端末の利活用の実現に向けては今後も継続的な支援が必要であろう。
文部科学省としても、地域や学校によって端末の活用状況に差が⽣じていることや、端末活⽤の ” ⽇常化 ” を浸透させていくために解決すべき課題が顕在化しているとの分析を示している。

これらの課題解決に向け GIGA スクール運営支援センターの機能強化に、令和 4 年度当初予算の約 10 倍となる 102 億円を要求している。運営支援センターの機能強化を通じ、「全ての学校が端末活用の『試行錯誤』から『日常化』のフェーズに移行し、子供の学びの DX を実現していくための支援基盤を構築する」としている。

引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P9


先述の通り GIGA スクール運営支援センターは、端末・ネットワーク・セキュリティのサポートといった 1 人 1 台環境の支援策であり、活用促進の大きな役割を担うものといえる。しかし、GIGA スクール運営支援センターの業務範囲には、端末活用に関する具体的な実践を知る内容は含まれていない。令和 5 年度新規事業となる「リーディング DX スクール事業」は、全国約 100 校(協力校)で実践された端末活用の好事例(指導技術や指導プログラム等)の情報を集め、ポータルサイトを通じて全国に展開する等、学校が端末活用の『試行錯誤』から『日常化』に移行するための重要な支援策といえる。

引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P11


GIGA スクール構想における新たな学びの実現は、平成 29・30・31 年改訂学習指導要領や令和の日本型学校教育が目指す学びと軌を一にするものである。先述した支援策以外にも様々な事業費が要求されている。

教育の充実を図るためには、教科指導における情報通信技術の活用とともに、教員の働き方改革にも大きく寄与する「校務の情報化」を進展させていく必要がある。令和 3 年 3 月時点で統合型校務⽀援システムの整備率は 73.5 %(令和 3 年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)速報値では、令和4年3月1日時点で79.9%)まで上昇し、校務の効率化に大きく貢献している状況にある。

しかし、導入されているシステムの多くがクラウドベースの仕様になっていない。そのため、デジタル化が進みつつある教育⾏政データ(EduSurvey,MEXCBT等:後述)との連携や、転校・進学時など⾃治体間でのデータの引き渡しがシームレスに行えない、⾃宅や出張先での校務処理ができない等の現状にある。
こうした状況の解決に向け、文部科学省は 3 年程度かけて校務のデジタル化モデルの実証研究を実施し、事業終了後 5 年を⽬途に全国レベルでのシステム⼊れ替えを⽬指す「次世代の校務デジタル化推進実証事業」を新規事業として予算計上している。本実証事業の資料には、「校務DX化ガイドライン」(仮称)の策定、「教育情報セキュリティポリシーに関するガイドライン」の改訂との記載もあり、実証の動向も注視していきたい。

引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P12


GIGA スクール構想によって、児童生徒一人一人の学びや学習履歴を教育データとして活用できるようになった。令和 4 年 1 月にデジタル庁、総務省、文部科学省、経済産業省の 4 省庁がとりまとめ公開した「教育データ利活用ロードマップ」は、データを活用したこれからの学校教育の姿を示すものである。令和 4 年 8 ⽉時点で約 11,000 校、 360 万⼈が登録している⽂部科学省 CBT システム(以下、MEXCBT)は、1 人 1 台による学びが日常化する近い将来、初等中等教育段階における教育データ利活用の中核を担う仕組みとなる。そのためには、教育データの利活用に向けた共通のルールを定める必要がある。

令和5年度予算では、こうした共通ルールの策定とともに、記述式⾃動採点の実装などの機能開発・拡充、利便性向上を図り、更なる活用を促進していく計画が記されている。
MEXCBT が教育データ利活用を推進する教育DX の基盤的ツールと位置づけるのであれば、教育委員会や学校の負担軽減につながる教育DXの実現を期待するものが⽂部科学省WEB 調査システム(以下、EduSurvey)である。EduSurvey は、文部科学省からの様々な業務調査の集計を迅速化し、教育委員会等の負担軽減にも資するシステムであるという。令和 5 年度は約 100 の調査を実施予定としているが、早期の本格導入が待ち望まれるところである。

教育データ利活用に向けては、先述した共通ルールの策定や、個⼈情報保護など留意すべき点の整理に取り組む必要性がある。「教育 DX を支える基盤的ツールの整備・活用」の事業項目には、これからの教育を支える仕組みやルールを検討する内容が数多く含まれている。各事業内容を今後も注視していきたい。

引用元:令和5年度文部科学関係概算要求のポイント等 P15


今回発表された概算要求の内容は、今後の政府における予算編成過程や国会審議等を経て変更される可能性もあるが、予算成立は来年 3 月を予定している。

株式会社エデュテクノロジーでは、学校教育における学習用端末を含めたICT機器の環境デザインやICT機器の有効な活用マニュアル等のハード設計から、ICTの強みを活かした授業デザイン等のソフトウエア設計までトータルに支援する ICT コンサルティング事業を提供している。長年培った経験とノウハウで、これからも「 ICT や情報・教育データの利活用」に向けた学校、教育委員会へのサポートを行っていきたいと考えている。


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