🧐解説［アメリカのボーディングスクール訪問のお作法］〈〈無料で読めます〉〉

まゆ＠教育情報キュレーション

2022年5月14日 14:29

多くのボーディングスクールでは、出願に際して訪問は必須ではありません。任意です。

必須の面接は、現地でやらなくてもオンラインで受け付けてくれます。

それでも「入学を決めるまで」には一度自分の目で確かめたほうがよいとは思います。

その理由はこの記事にも書きましたが、一番大きいのはミスマッチを防ぐためです。

とはいっても、日本の受験とも勝手が違うのではないか、と不安に感じられる方がいるかもしれません。

この記事では、アメリカのボーディングスクールを訪問する際の一般的な流れをご紹介します。

少しでもイメージしやすくなったら嬉しいです。

（全文無料で公開しておりますが、気に入ってくれた方が読後に単体購入していただけたら嬉しいです！）

概要

「中学（または高校）留学がしたい」と思ってから学校見学が実現するまでは、おおまかに以下のフローをたどります。

留学の大まかな骨格を決める
留学の目的、行きたい留学先、予算、期間、留学時の年齢、出発時期など
おおよその入学までのスケジュールを決める
見学時期・出願時期・留学時期など
見学先の学校リストを作る
学校担当者にアポを取る
航空券や滞在先や現地の移動手段の手配をする
面接や会話の準備をする
アポイント通りに学校を訪問する
帰国後、お礼のメールを学校担当者に送る

３〜８のステップについて、詳しく説明します。

訪問する学校の数

日本からの一回の往復につき、訪問できるのはどんなに多くても6~8校が限度です。

1校あたりにかかる時間は約2時間。

学校と学校の移動とご飯に2時間。

受付時間（かつ明るくて学生も活動中の時間帯）に見学を済ませるには、1日あたり2校が限界です。

そして3-4日かけて2校ずつ回っていると、各学校の区別がつかなくなってきます。

どこもアドミッション→見学［校舎→食堂→寮→スポーツやアート施設］→アドミッションの繰り返しです。

日程に余裕をもたせて1日一校ずつにしてもいいですが、その分滞在費がかかります。学校や仕事を休んで行く場合はその分のロスも発生します。

せっかく渡航するからと欲張ってしまうよりは、日本にいる間に学校を厳選しましょう。そのほうが学校ごとに得られるものも多いです。

一度の訪問期間で回る学校は、6~8校に厳選しましょう。

訪問する学校の選び方

アメリカは広いです。同じ州のなかにある学校同士でも結構離れています。

予約を取る前に、志望度が高い学校を中心に地図を見ながらおおまかなルートをイメージしておきます。

もし同じくらいの志望度の学校が複数あって迷うなら、できれば似たサイズや内容の学校よりも、バリエーションをもたせるのもひとつです。

例えば共学と別学校。寮生が多い学校と、少ない学校。面積が大きい・小さい。生徒数が多い・少ない。IB校・非IB校など。

似たような学校を回るよりも、バリエーションがあったほうがサンプルとして機能します。ただし、志望度が低いとわかっている学校にあえて行く必要はありません。

学校の予約を取る

ほとんどの場合、学校の公式HPに訪問予約フォームがあります。その前段階としてオンラインの「出願お問い合わせ」を提出してからでないと予約が取れないこともあります。

実際の訪問は、平日（まれに土曜も）にしかいけません。また、学校によっては曜日や時間帯を固定していることがあります。

仮に6校回ると決めたら、全部一斉に予約の申し入れをするのではなく、段階的に予約を入れていきましょう。ダブルブッキングからの再調整を減らすためです。

学校によっては、今のご時勢、予約を確定するときにコロナの予防接種証明を提出する必要があります。

予防接種証明は、日本の多くの自治体で申し込む必要があります。

↓私の予防接種証明

https://note.com/educurator/n/nc035bff3d1ed

なるべく希望日に予約が取れるようにするためにも、理想では1-2ヶ月前から予約の申し入れができるといいと思います。

（私の今回のツアーでは、一部の学校の予約（一人行動の分）は現地入りしたあとに確定させました。これは避けたい例です😅）

学校の予約が取れたら

訪問日時が確定したら、現地までの飛行機・ホテルを予約します。（私は今回エクスペディアを使いました）

https://note.com/educurator/n/n477cbb2fb544

ロジスティクスが決まってからも慢心せず、学校の最新状況について調べたり、オンラインイベントに参加したりします。

そうすることで、面接や世間話のときに自分と学校の共通点を話せたり、質問ができるようになります。

調べたなかで、どうしても会ってみたい人がいるならダメ元で事前に聞いておくといいです。たとえば特定のスポーツのコーチ、特定の科目の先生、特定のクラブ活動の顧問や生徒など。

なにも言わないと、通常はアドミッションオフィスの担当者さんとツアーガイド担当の生徒さんがランダムにアサインされるだけです。

誰に何を聞くかによって、その答えや受ける印象が違う場合があります。たとえば寮生活について聞くなら、大人の先生に聞くよりも生徒本人に聞いたほうがよりリアルな答えに近づけるはずです。

そんなふうに「誰に」「どんなこと」を聞きたいか、少しずつ整理していきましょう。

英語に自信がある方でも、面接の想定問答練習をしておきましょう。
もし見せられるものがあるなら用意しておくといいです。

ウェブサイトや作品をすぐ見せられるように印刷したり、スマホで開いておいたり。

日本特有の芸能や習い事をしているひとは、説明が難しいので写真や地図や動画を用意しておくなど。（動画は長いと見づらいので、写真優先で）

面接は試験ではなく、自分のことを知ってもらうチャンスです。そのためにはまず自分がどういう人間かを把握し、それをどう表現しようか考える必要があります。どう表現したら相手に「へ〜そうなんだ！どういうこと？もっと聞かせて？」と言わせられるか、を軸にするといいかもしれません。

訪問直前に備えること

学校プロフィール

学校のサイトには、1-2枚にまとめられたPDF版プロフィールが載っていることがあります。これは本来は大学の入試担当者向けのものですが、学校の特徴がまとまっているので、学校に乗り込む直前に情報をさっと確認しやすいです。

公式HP内で「school profile」と検索してみると出てくることが多いです。

アドミッションのメンバー

つぎに用意しておくといいのは、アドミッションオフィスのメンバー紹介ページです。

職員の顔写真、名前、肩書、メールアドレスが一覧になっています。

名前を全部覚えなくても、オフィスの人数やトップの見た目をざっくり把握しておけます。

意外とたくさんの人が出入りするアドミッションオフィスです。通りかかったらすぐ認識できるに越したことはありません。挨拶できたらなおよし。たいてい向こうから来てくれますけどね。

営業職を経験した人ならわかるかもしれませんが、いわゆるキーマンが誰かを把握できているかいないかでは感触が変わる、あの感じです。面接官の肩書は通常上からディレクター、アソシエイト、レセプションとなっていることが多いです。

アドミッションオフィスのメンバーページを印刷しておくことのもう一つの効用。それは、訪問後に話した相手に印をつけたり、日付、印象や話したことをメモしたりするだけで訪問記録になるということです。

生徒ツアーガイドもだいたいメールアドレスをくれます。お礼ももちろん、非公式に質問をすることもできます。

キャンパスマップ

そしてもう一つ、あるといいのは学校のキャンパスマップです。ボーディングスクールは広くて、公道からの入口も複数あることが多いです。

公式HPからキャンパスマップを印刷し、訪問時の受付に一番近いアプローチを確認しておきましょう。

実は、学校のなかではwifiが飛んでいても、学校の外では（特に田舎だと）ネットがつながらないことがあります。予約時間直前に慌てなくてもいいように、印刷したキャンパスマップがあると便利ですよ。

https://note.com/educurator/n/n20c3f6d33241

学校訪問の服装

これ、意外と見落とされがちですが、みんな抱える悩みだと思います。

学校からは「歩きやすい靴」を要求されます。ツアーでは階段・坂道・でこぼこ道・芝生・土・レンガ・ぬかるんだ道などを歩く可能性があるからです。

少なくともヒールは避けたほうがいいです。

服装は、天候に合わせて脱ぎ着できるようなビジネス~ビジネスカジュアル。ものにもよりますが学校の制服は避けましょう。

男子はできるならジャケットとボタンシャツ。涼しい季節ならタイも。

この記事にも書きましたが、日本のお受験のような紺ずくめも避けましょう。

https://note.com/educurator/n/n72c331327356

今回のツアーでは、私は0℃から30℃超までの気温に対応しないといけなかったので悩みました。

https://note.com/educurator/n/n8974d4f7bf27

必ず、ローカル天気を調べること。そして、学校が頻繁にSNSを更新しているなら、生徒や先生や父兄の服装もおおいに参考になります。

「もうダウンは出しているのね_φ(･_･」みたいな感じです。

移動手段・通訳

もし英語に不安があるならコーディネーターを連れて行ったほうが見学とやりとりに集中できます。（ただし生徒の面接には通訳は入りません）

もし運転をしないのであれば、車をチャーターするか、現地で運転ができて車を出せるエージェントに依頼する必要があります。

私が今回生徒さんファミリーに同行したときもそうでしたが、訪問時に家族以外の人間が同行していることについて学校はなんの疑問も持ちません。

むしろ、コミュニケーションや生徒理解で活躍するので歓迎されます。エージェントが同行していることで選考が不利になることはありません。

（学校からすると、エージェントさんは他にも生徒さんを紹介してくれるパートナーなので、基本的には喜んでくれる）

（私、運転はできませんが旅程作成、ナビ、コミュニケーションのサポートは得意です。そして学校見学が趣味と常々から公言しております。同行を希望される方はぜひお知らせください😄）

当日の流れ

学校によっては、事前に健康状態や訪問部署を記入するオンラインフォームの提出を求められます。24時間前、とかタイミングを指定されるので忘れずに提出しましょう。

ここまで書いてきたことを忠実にこなせば、あとは安心して当日を迎えるだけです。

当日は、アドミッション・ゲスト用のパーキングに駐車して、直接アドミッション・オフィスに向かいます。

学校には門があっても基本開いていて、素通りのところが多い印象です。都会の学校は違うかもしれませんが。

受付を済ませると、あとは学校側の案内にしたがってツアー→面接→親とアドミッションの雑談とこなしていきます。ある意味流れ作業です。

他にも同時に数家族いる場合があります。礼儀正しくしていれば大丈夫です。

もし兄妹がいるなら、心苦しいですがなるべく日本に置いてこられることをおすすめします。一緒に渡航したとしてもホテルや車付近で待っていてもらいましょう。そのための大人も一人必要ですね。（コロナ対策のために訪問人数をそもそも絞っている学校もあります）

ただでさえ気を使う学校訪問です。必要最低限の人数でぐっと集中して、短い滞在時間を有意義に過ごしましょう。

現場でやること

最初に会ったひとには自己紹介で挨拶しましょう。「Hi, I'm Mayu」という感じです。たいてい最初に会うのは受付のひとなので、すぐに待合室に案内してくれます。

そのあと、入れ代わり立ち代わり色んな人に会うと思います。もし名前の発音を間違えられたら、堂々と何度でも訂正しましょう。どうしても初対面では発音が難しそうなら短い呼び名をニックネームとして用意したほうが気が楽かもしれません。

約2時間の間、交感神経オンの状態で常に質問をしたりされたり、回答したりです。とにかく目を見て、ゆっくり話し、ときには手のジェスチャーも交えて、笑顔でいることです。

ツアーガイドさんや、通りすがりのひとにドアを開けてもらったり押さえてもらう場面があります。お礼をいうのを忘れずに。そして、たまには自分が押さえる側にまわってもいいんですよ。お客さんとはいえ、滞在中はその学校の生徒になりきってみてください。

ツアー中、生徒本人は会話と印象づくりに徹します。一方で保護者の方は、一歩下がって話を聞きながらたくさんメモを取ったり、写真を取ったり記録に徹します。

人の名前や出来事や印象をメモしておかないと、絶対忘れます。数時間後の自分も信用できません。

もう一度いいます。絶対、忘れますから役割分担して少しでも記録を充実させてください。

現場でしか確認できないこと

インターネットでなんでも調べられる時代ですが、現地に行かないとわからないことがあります。

現地では、アドミッション担当者や在校生がキャンパスを案内しながら小話をしてくれるのも大事な収穫です。

私がいつも確認しているのは「紙面やオンラインでは確認できない、五感で感じられること」です。

学校やその周辺の環境と雰囲気（自身の五感、安心感、衛生観念とすり合わせて）
空港や主要都市からの距離感やルート、渋滞の発生のしやすさ
学内・校舎・スポーツ施設・寮のなかの掲示物
キャンパス内の高低差や移動の動線と負担感
先生や生徒同士の関係性
普段の服装
匂い
食事

ほかにも、「学校担当者があえて見せない・語らない部分」を確認しましょう。

たとえば学校周辺の環境、学内の壁の張り紙やトイレの使われ方、設備の使用時間や決まりごとなどです。

生徒がカバンを廊下や教室でどう置いているか、に注目する人もいます。（細かい😂）

https://note.com/educurator/n/n236b7888e169

学校のことだけでなく、出願する本人の「感じ方」も意識すること。

「この派手な感じ苦手かも」

「この部屋で毎日勉強したい」

いままで気づかなかったけど、"自分ってこうなんだ！"という発見が必ずあります。

快・不快って本能的で主観的ですが、結構大事です。その後のQOLに関わるので、この自分の反応を見落としてはいけません。

自分の感覚をリトマス紙のようにして、学校環境を試すのです。

その感覚こそが、その先の進路選び、そしてゆくゆくは人生の選択をするときにも活きてきます。

これは海外校に限ったことではありません。
どんな進路を選ぶときも、できる限り五感と本能を総動員していきましょう。

終わったら

訪問を終えたら、その日か数日以内に、会った人全員にお礼のメールを送りましょう。最低でも、面接官とツアーガイドに。

メールの文例はこちらに書きました↓

また、もし時間が少しでも余るようでしたら、学校近くの街を散策するのもおすすめです。

最長4年間の学校生活を過ごすのは、学校のキャンパスだけではありません。徒歩圏内に街があるなら、そこでできそうなこともセットで確認してください。最寄り街の雰囲気や栄え具合は、学校ごとに違います。

まとめ

私はなぜか学校訪問がすごく好きなんです。学校によって特徴の差や共通点を発見するのが面白い。そこに理由はありません。

一般的には、留学を検討している中高生が志望校を見学するメリットはこんなにあります。

留学準備プロセスの間のモチベーション維持
担当者に印象付けることにより少しでも合格の確度を上げる
ミスマッチを防ぐ
そこにいる自分を想像できる＝心の準備になる
しっかり選ぶことで在学中のモチベーション維持にもつながる
日本にはない環境やチャンスにワクワクする

同行する保護者が実際に現場を見ることも、お子さまが今後過ごすかもしれない場所を具体的にイメージできるようになり、不安感が軽減されます。

ここに書いたことは、あくまでアメリカのボーディングスクールを訪問する際の一例にすぎませんが、学校の滞在時間をより有意義にするヒントをこれでもかと盛り込みました。

学校によって多少違いはあるかと思いますが、たたき台として誰かの参考になれば嬉しいです！！

参考になったら、♥やシェアでお知らせください😄

2021年11月に訪問した9校のボーディングスクールについてはこのマガジン内で写真とともにご紹介しています。

https://note.com/educurator/m/m2232c64def8a

ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございました！

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