【イギリスの教育制度(1)】概要編、試験に比重を置いたシンプルで平等な制度設計、それでもヒートアップするお受験戦争
意外に知られていないイギリスの教育制度、実は、学校を卒業することではなく、全国統一試験(GCSE, Aレベルなど)に合格することで学歴を証明していくという、試験に比重を置いた制度に特徴があります。これら試験の成績は、大学の学位やそれに付随する成績と共に生涯有効とされ、一般的には履歴書にも記載する事が求められています。よって、日本のように、どの有名校を卒業したかではなく、試験で良い成績をおさめることが生涯にわたってより重要なインパクトを与えると言えます。これはある意味、独力で勉強し良い成績を収めることができれば、どんな学校に通おうとも、出身階級や貧富に関わらず、誰でも平等に高等教育を受け、より条件の良い就職への道を切り開く事ができるとも言えます。
ところが、現地で子育てをしていると、多くの親が、必死になって良い学校探しをし、チューター(家庭教師)を当然のように雇い、必要であればその志望校の側の家に引越すという光景を目の当たりにしてきています。つまり、制度設計としては、平等を目指し学校の優劣に関わらず全国統一試験で良い成績を収めさえすればよいはずであるものの、実際としては、多くの親は良い学校に我が子を押し込む事を目指して奔走しているのです。
では、イギリスにおいて「良い学校」とは、どんな学校なのでしょうか。
イギリスに移り住み、初めて学校探しをした時に驚いたのが、偏差値がわからないことでした。日本ではまず偏差値、そして、校風、卒業後の進路という観点で学校を評価していた自分からすると、もう、どうして良いか分からず路頭に迷った感覚でした。そう、全ての学校の成果を比較するツールや指標がないのです。
そして更にイギリスでの学校選びを難しくしているのが、運営母体の多様性にあります。大枠としては2つ公立と私立、ただ、公立と一言でいっても、その運営母体にはいくつか種類があり、各々で異なる教育方針や入学受け入れ基準を設定しています。そして、非常に驚いた事に、私立と公立とでは、小学校から中学校へ切り替わる学年までもが違っているのです。このように、運営母体ごとに異なる入学受け入れ基準、教育方針、中学校へ進学する学年が違っていることで、学校ごとの比較がしにくく、また偏差値といった指標もないため、一概に「これが良い学校だ」とは言い難く選択が難しくなっているのです。
次回は、この公立・私立の制度の違いに焦点を当てて、教育制度面からイギリス的教育をより深く掘り下げていきたいと思います。
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