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赤字の公教育を「改善」してみた/お金の新常識#2
はじめに
前回、「歩道建設」という公共事業を例に、
公共事業は赤字でなければならないことをみてきました。
ただ、私たちの日常的な感覚と明らかに逆行した話ですし、そう簡単に私たちの「赤字アレルギー」は根治し得ないのが現実です。
そこで今回は、その仮説を補強する例を、さらにみていきたいと思います。
公共事業黒字化の「実例」
公共事業を黒字化しようとしてしまった実例には枚挙に暇がありませんが、なかでも当時話題となった「サウスフルトン市の消防サービス」を挙げておきたいと思います。
米国テネシー州サウスフルトン市に住むジーン・クラニック氏は、
2010年10月6日(現地5日)に起きた火災で、駆けつけた消防士たちが一切消火活動をすることなく、自宅が完全に焼失するのを見つめていた。
氏はこの年、市に納めなければならない「火災保護費(75USドル)」の入金を失念していた。
消防士たちは火災発生に際して、一軒ずつ火災保護費の払い込みがあるかを確認し、ない場合には消火にあたらなかった。
現場では、近隣住民も一緒になって、「500ドル払うから、火を消してやってくれ」と願い出たものの、聞き入れられず、延焼した隣家の消火だけが行われていた。
支払いを忘れた、とのことですが、貧困で支払えないような場合はどうなってしまうのでしょうか…
我が国では、まだここまでの「緊縮財政」には至っていません。公共部門が無償で消防サービスを提供してくれていますから、誰でも消防士さんを頼ることができます。
公教育が黒字化した世界
では、サウスフルトン市に倣って、私も携わる「公教育」を黒字化させるにはどうすればよいか、考えてみましょう。
方向性は「収入を増やす」「支出を削る」の2つです。
まず、各家庭から高額な料金を徴収します。
支払えない家庭には、学校教育をあきらめてもらいます。
教職員の人件費のほか、施設管理費や消耗品費、教科書や給食費などを含め、子どもが受けられるサービス以上の対価を支払ってもらうのが理想的です。
もちろん、高齢者を含む非正規教員の雇用を増やし、新たに外国人実習生を大量に迎え入れるなどして、人件費を抑えます。
設備が老朽化しても大規模な修理などは行わず、応急処置を施すか、放置します。
またはいっそのこと「民営化」してしまって、外国企業などに運営権を売り払うのもいいでしょう。
…書いていて辛いのでこの辺りで切り上げます。
さて、我が国の教育は、上記のような状態になるべきでしょうか?
断じて、なるべきではありません。それは教育インフラの崩壊です。
(書いていて、「あれ?これはすでに実行されている気が…」という項目もありましたが。)
公共事業は赤字でなければならない
結局、前回出した結論をなぞることになります。
公共事業は赤字でなければならないのです。
「赤字を減らせ」
「ムダ遣いはやめろ」
こうした意見は一見、合理的に見えても、必ずしもそうではないのです。
公共事業を黒字に持っていこうとするのは、
①その恩恵を受ける私たちがそれ以上の対価を支払ったり、
②受けられるサービスを削り減らしたりしていくことを意味し、
③さらには得られたはずの国民の所得(公教育の例では、教員の人件費のこと)を減らす
そういう政策であるということを、私たち国民は、支え合う「市民性」の大切な知識として、認識しておかなければなりません。
今回もお読みいただき、ありがとうございました。