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にゅるり

にゅるり。
と、そいつは出てきた。
ずるり。でも。するり。でもなく。まさに。
にゅるり。
と、そいつは出てきた。
僕の胃の腑を出発して、食道を通り、口までたどり着き。
にゅるり。
そいつは出てくるなり、僕に向かってこう言った。

「お前が生きているうちに叶えられることなんて、何一つないさ」

僕は反射的にむっとして

「そんなこと、生きてみないとわからないじゃないか」

と言った。しかしすぐに「そうかもしれない」と思い直した。
「そうかもしれない」は僕の胸で次第に大きくなっていき、しまいには涙となって溢れ出した。
僕の涙の粒が零れ落ちる度にそいつは一つ、また一つと増えていく。

そうして僕の周りがそいつで一杯になったころ、僕はふと――何か「きっかけ」があったわけじゃない。本当に、ふと――気が付いた。

「そうだ、僕は何も願っていないじゃないか」

僕が呟くと、そいつはもういなかった。どこにも。
抜けるような青空だけが残った。鼻の奥がツンと痛んだ。

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竹原
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