愛のメール③
ラジオネーム:ピョコ次郎
好き好き好き好き好きっ好き♪
一休さん♪
一休さんは、とんちの名人で、皆の人気者。
そのあふれる知性は、あらゆる人を驚かせ、また魅了してきた。
しかし、それを快く思わない人物がいた。
足利義満だ。
「あの生意気な小僧をぎゃふんと言わせてやりたい」
最初は、そんな憎らしさから挑んだとんち勝負だった。
しかし、何度も一休と舌戦を交えていくうちに、義満は、自分の中に特別な感情が芽生えたことに気付いた。
好き好き好き好き好き、好き。
一休さん。
義満は日に日に抑えきれなくなっていく自分の気持ちと、どうしたって自分のものにならない一休へのもどかしさで板挟みになっていた。
ある日、義満は城の前にこんな立札を立てかけた。
「一休、入るべからず」
それは、義満の最後の、そして悲痛な決意だった。
その晩。
義満がもやもやと居心地の悪い夢にうなされていると、すーっとふすまの開く音が聞こえてきた。
その音に気付いて目を覚ますと、果たしてそこには一休の姿があった。
「い、一休!なぜここに……いや、そんなことより、城の前の立札を見なかったのか!」
義満は内心自分の心が躍っていることを悟られまいと、努めて厳格に言った。
「ああ、そのことなんだが」
対する一休はけろっとした様子だった。
「実は今日、あのクソ和尚と喧嘩してな。「お前は破門だ」なんて言いやがるから、「こんなクソ寺、こっちから出ていってやるよ!」って、飛び出してきたんだ」
突然の話に、義満は目を白黒させた。
「だから、今の俺はもう"一休"じゃあない。ただの、一人の男だよ。ただあんたを愛する……一人の男だ」
「い、いっきゅ……」
言いかけた義満の唇を、一休……いや、今や名もなき一人の男の唇がふさいだ。
その柔らかく暖かい感触に包まれ、義満はこう思うのだった。
……ああ、また一本取られてしまった。
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