コミュニティ放送 開局への散歩道☆彡⑨
コミュニティ放送 開局への散歩道☆彡
009〔放送区域〕
放送電波の出力は、空中線電力〔W〕、実効輻射電力〔W〕のように表します。(単位「W」(ワット))
しかし、このワット表示では、電波の到達する距離を簡単に換算できるものではありません。
送信所から発射された電波が、前回説明した指定電界の値を示す内側を「放送区域」といい、その外側で放送が聴こえる、法令規定の用語にはない「可聴域」(放送区域外受信、放送対象地域外受信、聴取可能区域受信等)という言葉についてもお話していきます。
① 空中線電力は、送信機の出力端で測定した高周波エネルギー(電磁波又は電波)の値〔W〕です。
② 送信機出力端から、通常、同軸ケーブルという電線(給電線)、接続コネクター、分配器等の装置を経て、空中線(アンテナ)へと電波が届けられます。
③ 送信機から送られた高周波エネルギー(電波)が、給電線(同軸ケーブル等)や接続コネクター、分配器等を通過する際、その高周波エネルギーが減衰(減少)する損出が発生します。
④ 空中線(アンテナ)には、いろいろな種類があります。
原則として、放送区域内となる当該市区町村境を超える電波の発射は認められていません。また、その他の潜在電界強度に基づく法令規制を満足させなければならないことを勘案して空中線を選択します。
空中線には、利得といって、③により供給された電波を、減衰・増加、俯角させるものがあります。
総務省は、開局する当該市区町村の指定電界の強度を基準に、申請書及びその添付書類に記載されている空中線の型式、空中線利得等の諸元から、実効輻射電力〔W〕を算出し、そこから得られる技術的な「放送区域」が描かれます。
単純に電界強度の値から決まってくる技術的な「放送区域」という概念に、総務大臣による「放送対象地域」という概念、すなわち、放送のサービスを行う当該市区町村及びその周辺を放送対象地域という概念の、2つの概念をもって監理することになっています。
したがって、すべての放送局は、個別審査により、空中線電力〔W〕、実効輻射電力〔W〕、行政上、商業上(開局する放送局の放送対象地域≒商圏)を勘案して、総務大臣が指定し、最終的には、免許という形で付与され、これを「放送区域」といいます。
〔例題〕
東京タワーから
FM送信機の空中線電力20〔W〕とし、
送信機があるところから空中線までの
給電線(同軸ケーブル)170〔m〕
1〔m〕あたりの損失を0.05〔dB〕
2分配器の損失は、3.5〔dB〕とし、
空中線利得0〔dB〕としたときの実効輻射電力は?
損失計算
(0.05〔dB〕X 170〔m〕)+ 3.5〔dB〕= 13.005〔dB〕
給電線損失 2分配器損失
空中線電力
20〔W〕は、150〔dB〕
総合利得計算
150〔dB〕- 13.005 〔dB〕+ 0〔dB〕 ≒ 137〔dB〕
空中線電力 損失 空中線の利得
実効輻射電力137〔dB〕は、約1〔W〕となります。
次に、これを基に、
無線局免許手続規則第7条第2項の規定に基づく
放送区域等を計算による電界強度に基づいて定める場合における
当該電界強度の算出の方法
(昭和35年 8月 9日 郵政省告示第640号
を使用して、放送区域を手計算で行っていました。
現在は、郵政省告示第640号(通称 告示640)に準拠した電波伝搬シミュレーションを使用して、技術的な放送区域の案を作成できます。
電波伝搬シミュレーションでの計算例
東京タワー(333m)から、水平偏波 無指向性
実効輻射電力1〔W〕で85.0MHzでの放送電波
都心ですから、指定電界強度が高い(雑音も多い)ので、赤点の中心から水色のエリア(74dB)が、放送区域の参考エリアとなります。
その後連続して、
ピンク色の部分は、ステレオホニック(48dB)で受信可能参考エリア、
赤色の部分は、モノラルフォニック(30dB)で受信可能参考エリア
となります。
また、一度、白色部分となり、赤色のエリアは、放送区域外での聴取可能参考エリアです。
放送区域を越えて当該放送を聴取できる範囲を、一般の方が「聴取可能区域」等といっており、逆に、放送区域内で法令規定により放送が聴こえない数値を示すところを「難聴地点」、「難聴区域」といっています。
単に空中線電力〔W〕の値が、電波の飛距離を単純に換算できるものではないことをご理解いただけたでしょうか。
また、受信される方の受信機及び使用するアンテナの仕様、環境等により、当然、受信できる、できないは、法令規定外です。
次回は、〔放送区域内の電波〕です。