2022年 一口1年目の新人YGGおじさんによる出資馬回顧録~トレブランシュ編~
はじめに
はじめまして、南ヴィグラスと申します。
本記事は、2022年にYGGオーナーズクラブ様にて
一口出資者としてのデビューをした私が、
この年の瀬に出資馬もとい愛馬の回顧をするというだけのものです。
いわゆる備忘録の延長ですので、同じ出資馬に出資している方や、
同じクラブ会員の方にかろうじて需要があるかどうかと思っております。
ですので、どうか肩の力を抜いて気楽に見ていただきたく思います。
私が出資した20年産の子は3頭いるのですが、
今回は表題にもあるとおり、
【トレブランシュ号】について振り返っていきたいと思います。
残る2頭については、年始に出せたらいいなと思いますが、
いかんせん遅筆かつ気分屋ですので、あまり期待はしないでください。
トレブランシュ
父:オルフェーヴル/母:トレサンセール(母父:Rip Van Winkle)
性別:牝
生年月日:2020年3月3日
生産:門別山際牧場
厩舎:稲垣幸雄厩舎(美浦・本年18勝)
募集額:1口11,000円(総額1,100万円)
戦績:2戦1勝[1-1-0-0](主な勝ち鞍:2歳未勝利)
クラス:1勝クラス
獲得賞金:800万円
~前置き~
晩成傾向の強いオルフェーヴル産駒。
母父サドラーズウェルズ系で、牝系も欧州要素たっぷり。
牝馬ということを差し引いても小さな馬体。
恥ずかしながら自分は、出資した時点では
「3歳未勝利まで気長に見てあげよう」と
2歳戦での勝ち上がりはまったく想定しておりませんでした。
それだけに、まさか新馬戦で2着に入り、
続く未勝利戦であっさり勝ち上がるとは、
出資時点では思いもよらぬ、嬉しすぎるサプライズでした。
そして、私にとっては、
一口出資者としての初勝利をプレゼントしてくれた孝行娘でもあります。まさか府中の芝が初勝利の舞台になるとは思っていませんでした。
~出資のキッカケ~
実は、一口を始めた時点で、
トレブランシュ号に出資するつもりはありませんでした。
一発の大物こそあれど、総じて苦戦が強いられているオルフェ産駒。
いくら「オルフェはダートで潰しが効く」とはいえ、
母方に集まる欧州血統に目をやると、
中央はおろか地方での好走も厳しそう…。
加えて1歳募集時点での馬体が既に小さく、
ここから急激に大きくなるようにも見えない。
当たれば大きそうな血統と思いつつも、
この時点では他の馬の方が魅力的に見え、
実際最初に申し込みをしたのは
ブリオレットの20(のちのバークエム)でした。
そんな評価を一変させたのが、YGGが上げた1本の調教動画。
そこには、
「坂路をなんかすっごいピョンピョン跳ねながら」
「結構いいタイムで駆け上がってくる」
「額にド派手な流星を背負った馬」
が映っていたのです。
地面に突き刺さるような足さばき。
圧倒的な躍動感。
かわいい顔にド派手な流星。
なんかロマンありそうな血統。推しているVtuberの出資馬
気が付くと、私はトレサンセールの20、
のちのトレブランシュ号の出資申し込みをしていました。
幸い、一口あたりの出資額が安かったというのもあり、
「もし走らなくても、いい勉強になる」くらいに思っていたのもあります。
…まぁ、その後ちゃっかり二口目を投入するのですが。
~デビュー前~
さて、こうして出資馬となったトレブランシュ号ですが、
気性もオルフェ産駒にしては穏やかで、坂路でもよく動くということで、
早め早めに稲垣厩舎への入厩の話が進んだ印象があります。
まずここが嬉しい誤算でした。
4月27日には北海道を発ち、
28日に美浦近郊の外厩である森本スティーブル美浦エリアさんに、
そして5月13日には稲垣厩舎へ入厩しました。
そして、稲垣調教師の
「あれ?もしかしてこの子ゲート上手いんじゃね?」
という見立てから、5月20日にゲート試験を受け、あっさり合格します。
え、もうちょっと苦労するもんじゃないの!?と思っていたので、
ここまでスムーズにいってしまうのも、また嬉しい誤算でした。
というか、思い返してみたら、
この時点であのロケットスタートの下地があったのですね…。
ゲート試験での走りから、
トモがやや弱く、ハミに頼ってしまうということで、
5月中旬~7月末までは外厩の森本スティーブル美浦エリアさんに出され、
馬体増加とトモの強化を図る修行編へ。
ここでしっかり乗り込んでもらい、体と走りを作ってもらったことが、
後の活躍に繋がったと言っても過言ではないと思っています。
森本スティーブル様、ありがとうございます。
そうして修行を終えたトレブランシュ号は8月2日に帰厩し、
当初は8月末か9月初めの新潟でのデビューを目論んでいました。
パワータイプに見えるものの、まずは芝から。
距離は、血統的には長いところを走りそうでしたが、
稲垣師曰く「走りの感じから短いほうがいいのでは」とのことで、
現状は短距離~マイル路線を視野。
「母父はマイラーだし、短い距離はアリ」と思っていたので、
プロと意見が合致したことにちょっとドヤっていた記憶があります…。
ただ「ダートはやめて」とひそかに念を送っておりました。
こうしてデビューに向けて調教を積んでいくのですが、
稲垣師の満足いく出来に仕上がり切らず、新潟デビューを回避。
結果、9月11日の中山芝1600mで初戦を迎えることとなったのでした…。
~デビュー戦~
9月11日(日)、中山第5R芝1600mにてデビュー。
稲垣師のツンデレコメントはありつつ、調教では併走馬2頭に先着するなど、
なかなかの動きを見せており、「もしかしてやってくれるのでは?」と
そこそこの期待感を持っていたと思います。
鞍上は津村明秀騎手。私の中ではカレンブーケドールの人でした。
そして枠番、枠番は…まさかの大外8枠15番…。
関西から遠征をした私は、「中山1600mで大外枠…オワタ…。」と
内心嘆いていたことを覚えています。
ちなみに単勝11.2倍の4番人気、思ったより人気してたのね…。
実は出資馬のデビューは地方で既に経験していたものの、
出資馬を現地で見るのは今回が初。
相当緊張していたのでしょう、ほとんど記憶がありません()
ただ、映像で振り返ると、
ロケットスタートを切ったトレブランシュが、
大外からそのままハナを奪い切ってレースの展開を作っていました。
若干ハイペース気味、先行馬に辛い展開を自ら作り、
4コーナーあたりで競りかけてきた番手の馬をすり潰して、
あとは中山の短い直線を逃げ切るだけ…!完璧…!
というところに、後ろからとんでもない勢いで伸びてくる馬が一頭。
トレブランシュ出資者のトラウマ、ダノンゴーイチです。
道中不利がありながら、最終直線で吹っ飛んできたゴーイチには
さすがに抵抗できず、2.5馬身をつけられての悔しい2着に終わりました。
とはいえ、3着馬には5馬身の差をつけ、後日各専門雑誌にも
「相手が強すぎた」と同情されるほど走りの内容はよく、
「もしかして、芝で勝ち上がっちゃうのでは…?」と
期待させるには十分すぎるデビュー戦でした。
余談ですが、この時の勝者ダノンゴーイチはその後年内出走なし、
入厩もしていないことから怪我で休養しているのではと言われております。
負けた悔しさこそあれど、あれほど強い勝ち方をされた馬が
2歳戦でどんな活躍をしたのか見てみたかった気持ちは当然あり、
早期の回復、ひいては3歳牡馬戦線での活躍を願うばかりです。悔しさを通り越して、若干ファンになりつつあります()
~頓挫~
デビュー戦を上々の内容で終えたこともあり、
次走への期待が高まるのは自然な事。
やや左にもたれる傾向があり、かつ一生懸命に走りすぎる面があるため、
「左回りで1400mがいいのではないか」という津村騎手の進言もあり、
10月8日の東京芝1400mを目指すことになります。
一旦馬房の入れ替えの関係で短期的に外厩に出されたものの、すぐに帰厩。
競馬に使ったことで気持ちがピリッとする点が出てきたものの、
おおむね問題なく次走へ…といった矢先、
10月5日の最終追い切り後に両前脚に違和感とのレポート…。
筋肉が張った状態で、歩様もおかしいということで、
10月6日時点で、大事をとって出走回避となりました。
そして、ここから稲垣師による怒涛の近況レポート更新が始まります。
具体的には、
10月9日経過報告(376文字)
→10月10日経過報告(249文字)
→10月12日経過報告(780文字)
→10月15日経過報告・回復(848文字)
→10月19日出走予定報告(350文字)
10日で5回、計2603文字、そのすべてがめちゃめちゃ内容が細かい。
「何が原因と思われるか」「そのため何を施したのか」
「その後の経過がどうか」「今後の予定はどうか」
これらを書いていただいたことで、
不安こそあれ、心中はかなり穏やかに過ごすことができたのを
覚えております。
ここあたりで、元々あった稲垣師への信頼が爆上がりし、
晴れて自身初の推し厩舎が出来たのでした。
こうして、頓挫こそあったものの、
無事回復した(と思われる)ことで次走への目途も立ち、
2走目は10月22日(土)東京第4R芝1400mと決定しました。
土曜日だったことも幸いして、
このレースも関西から遠征し現地で観ることができました。
~2走目、念願の初勝利~
迎えた10月22日(土)、枠は4枠6番と中々の枠。
鞍上は引き続き津村明秀騎手。
なんと、前走を評価されたのか、最終1番人気(3.6倍)!
強そうな相手は、夏の新馬戦1200mで2着のトーセンローリエと、
1200mの中山で3着もあるラウラーナあたり。
特にローリエは、道中不利がありながらの2着ということもあり、
かなり危険な存在であったと認識していました。
また、回復したとはいえ前脚に違和感があった経緯もあるため、
勝ち負けよりも、まずは無事完走してくれることを
祈る気持ちが強かったと思います。
レースは、またも抜群のスタートでハナをとったトレブランシュが
そのまま自分のペースで逃げる展開。
やはりややハイペース気味にラップを刻み、
それを追走した先団グループは府中の直線で壊滅します。
リードも十分、これはもしや…!
…が、長い長い府中の直線、差し馬が当然飛んできます。
道中後方寄りに控えていたトーセンローリエが、
豪脚を繰り出して一気に迫る!迫る!
長い府中の直線、堪えてくれ…堪えてくれ…と必死に願い、
口からは「津村!粘れ津村!津村!津村!!!!」という
きったねぇオッサンの声が出ます。
必死だったにせよ、
近くに居た方には本当に申し訳ないものを聞かせてしまいました…。
その恥も外聞も捨てた祈りが通じたのか、
いや、トレブランシュと津村騎手自身の力で、
迫るトーセンローリエを1 1/4馬身に抑えてゴール!
2走目で早くも初勝利、しかも府中の芝という夢にも思わなかった舞台で
勝ち上がりを決めてくれたのでした。
そして、これが私にとっても一口出資者として初の勝利。
既に、地方で8走していた出資馬が
一度も3着以内に来れなかったことを経験していたので、
「今年は初勝利厳しそうだな」と内心諦めていたのですが、
まさかこんなにも早く勝利をいただけるとは…!
これも夢にも思っていなかったことでした。
相当嬉しかったのか、
わざわざ関西のド田舎から東京に出てきたにも関わらず、
このレース以降何の馬券も買わずに場内を知人と
ふわふわした気持ちのまま漂い、
結局メインレースすら観ずに、観光もせず、関西に帰りました。
帰りの新幹線で、何度も何度もJRA-VANのレース映像を見返し、
ずっとニヤニヤしていたと思います…。
~今後の予定~
こうして見事2歳で勝ち上がりを決めたトレブランシュ号、
次走は12月の中京で行われるつわぶき賞(1400m)を視野に入れて
外厩に放牧されていたのですが、
思ったより馬体が増えてこないため輸送のダメージが出そうということと、
やはり一頓挫あったということもあり慎重に進めるべく、
年内全休が決まりました。
外厩でしっかり体を作り、年明けから始動する予定です。
~総括~
まず、「ここまで強いとは思わなかった」というのが第一の感想です。
調教の動きが非常に気に入って出資したのですが、
色々と不安要素もあったので、まさかここまでとは…と
素直に驚いています。
同時に、血統や馬体重等の数字も当然大事ですが、
実際に走るところを見るのがどれだけ大切かということも
この子に学ばせていただきました。
この子の経験をもとに、来年の21年生まれの子に出資しており、
本当に勉強させてもらっています…。
考えると、この子は最後まで満口になるどころか、
50%近く残口があったまま、入厩のため締め切られた記憶があります。
その子が、YGGの先陣を切ってこの世代の中央初勝利をあげるとは、
一口は難しくも面白いものだなと感じています。
また、稲垣師の熱意が伝わる長文レポートの件もそうなのですが、
厩舎の馬への取り組み、調教師さんの考え方みたいなものも、
細かくいただくレポートのおかけで知ることができました。
もちろんこれが全てではないことは理解していますが、
こういった水面下での苦労を文面で知れたことも、
一口に出資したからこそだと思っています。
なかなか馬を褒めない(どうやら他のクラブ馬もそんな感じ)、
とても慎重な先生ですが、だからこそ実直さを感じます。
今後も稲垣厩舎推しの一人として応援していきます。
(年間勝利数更新おめでとうございます!)
2戦続けて騎乗してくれた津村騎手も、
印象としては「カレンブーケドールで勝ちきれなかった」という
マイナスイメージが先行していたのですが、
天才肌の鞍上と、マイペースで逃げるトレブランシュとのコンビは
応援したくなるものがありました。
今後、どうなるかは神のみぞ知るところではありますが、
個人的には、彼と一緒に大きいところを狙いたい!という気持ちです。
もはやツムツムのファンです。愛してるよツムツム…。
そして、なによりもトレブランシュからは、
「出資馬が勝利する喜び」をもらいました。
先述したように、既にデビューしていた地方所属の出資馬は、
この時点で8戦して3着以内なしという
厳しい結果を突き付けられていたので、
その分この勝利は格別で、ただただ感動でした。
※のちにこの地方所属馬は他場へ移籍し2連勝します。その件は後々。
2歳戦を終え、
3歳クラシック戦線を前に続々と強豪馬が名乗りを上げています。
一段とレベルも上がり、既に阪神JFでは怪物リバティアイランドが
圧倒的な脚を見せて同世代の女傑たちをねじ伏せました。
中央の芝の短距離マイル路線という強豪ひしめく舞台ではありますが、
それでもトレブランシュならやれる!という強い気持ちをもって、
来年も1年、彼女の活躍を応援していきたいと思います。
以上、長文駄文ではございましたが、
最後までお読みいただいた方、ありがとうございました。
ちょっと調子に乗りすぎて文章が長くなりすぎましたし、
最後はガス欠気味になってしまいました。
次回があるならばボリュームはもう少し薄くしようかなと思います。
それでは。
余談
~母父Rip Van Winkle~
結果が出てからならなんとでも言えるのですが、
トレブランシュ号の母父はRip Van Winkle。
あのエイダン・オブライエン師をして
「彼のペースメーカーには、G1級のスプリンターが必要だ」
とまで言わせた快速馬ですので、
重たそうな血統に反して快速の短距離馬が出る素養は
十分にあったのかもしれません。
また、そんなRip Van Winkleの血統には、
欧州の名スプリンターであったストラヴィンスキーの血も入っています。
同じガリレオ系で快速マイラー、かつ短距離指向の強い血統が入っている
フランケル(こちらは母にダンチヒの血)と同じく、
Rip Van Winkleの産駒にも日本で活躍できる要素はあったのではないかと
つい妄想をしてしまいます。
~母トレサンセール~
母トレサンセールの子は現在3頭が競走馬として活躍していますが、
社台ファーム生産の一番仔サザンナイツ号(トーセンラー産駒)が
3勝クラスに勝ち上がるなど、
中央で勝ち上がり馬を2頭出す優秀な成績を収めています。
トレサンセールは母トレラピッドが海外で身籠った持込馬で、
名牝Allegrettaの4×4を持っていて、これもまた面白い。
21年はオルフェ産駒、22年はサトノダイヤモンド産駒が産まれており、
門別山際牧場さんの期待値の高さを感じます。
いずれも牡馬として生を受けておりますので、
この子達の未来も非常に楽しみにしておりますF代表。
~オルフェーヴル産駒~
オルフェーヴル産駒といえば、
この20年生まれの世代は中央に22頭しか登録されていません。
そして、現時点で勝ち上がった20年世代はたった2頭。
ラッキーライラックの全弟、シリンガバルガリス。
そして、トレブランシュ。
なかなか苦戦、というかデビューした子ですらまだ6頭という現状。
先日東京大賞典でオルフェーヴル産駒のウシュバテソーロが勝利し、
さらにホープフルSでは母父オルフェのドゥラエレーデが勝利。
ここからさらに評価を上げていくとはいえ、
谷間の世代である20年世代からも、オルフェの代表産駒と呼ばれる子が
出てきてほしいし、それがトレブランシュであればいいなぁと
期待をもって見守っていきたいなぁと思います。