見出し画像

夢組と叶え組で本をつくってみた話

『世界は夢組と叶え組でできている』という本を担当しました。

私がふだん編集しているのは、『起業のファイナンス』とか『統計学が最強の学問である』とか『ブロックチェーン・レボリューション』といった本なので、周りの人はけっこうびっくりしたみたいです。

カバーにかわいい柴犬がいるし、タイトルに「夢」とか入っているし。我ながら、明らかに毛色がちがう。でも、自分の中では今まで作ってきた本と同じくらい意義があると確信できるものになっています。

内容については著者のサクちゃんがnoteを書いてくれているので、自分は今回どうしてこんな魅力的な本をつくることができたのか? ということを書いておこうと思います。

 ーーー

そもそも、不思議がられることの多い企画のスタートについて。サクちゃんとのご縁は、数年前にある本の原稿を読んでもらえないかと私から連絡を取ったことからはじまりました。

その時はオンラインのやりとりだけで会えずじまいだったのですが、数か月後、あらためてサクちゃんから「会ってお話ししませんか?」とお声がけをいただきます。DMを辿ってみたらもう2年前のことで、光陰矢の如し。

「夢組と叶え組」のnoteは書かれた後のことで、もちろん読んでいました。編集者としても管理職としてもめちゃくちゃ参考になるな、と思っていたので、すぐに本を作ることに決めたのが今回の企画の始まりです。

しかし、いざテーマも決まり原稿を書いてもらう段階で気づいたのが、これは自分の手にはあまる企画なんじゃないかな、ということ。本を読んでもらえればわかるように、サクちゃんは本質的にはエッセイストで、コンセプトよりもそれが生まれる過程をつづる言葉に価値がある。何より女性ファンが多くて、これは自分の苦手分野だなと(というより、純粋に経験が少ない)。

そこで頼ったのが、フリーの編集者である徳瑠璃香さんでした。徳さんとは彼女が出版社で書籍編集をしていたときからの知り合いで(あと、妻の仲のいい友人で)、サクちゃんとの相性も良さそうだと思い声をかけたわけですが……結果として、この判断が自分のいちばんのファインプレーとなります。

タイトルも元記事のままにしようと決めたのも徳さんだし、デザイナーの芥陽子さん、イラストレーターの上路ナオコさんとのやりとりも基本的にはお任せしました。

何より、著者であるサクちゃんに伴走して完成にまで導くという、編集者としてもっとも重要な仕事を担ってもらえたのです。

 ーーー

じつは、徳さんと組むまで、編集者が複数いるのはあまりいいことがないんじゃないかと思っていたんですね。「船頭多くして船山に登る」ことになりがちだと。

でも徳さんとの協同編集は、本当にうまくいきました。その要因としては、もちろん彼女の能力の高さもありますが、まさに本書のテーマである「夢組と叶え組でチームを組んだ」ことが大きかった。

先日、サクちゃんと対談していただいたカツセマサヒコさんがツイートしてくれたように、普段は夢組の人でも、子育てが大変なときには叶え組になってしまうみたいなんですね。

まさに徳さんは子育てと仕事の両立に悩んでいたタイミングで、普段は夢組かもしれない彼女も叶え組になっていました。そして、自分はおそらく夢組サイドの人間。本に取り入れる視点のバランスを取る意味でも、このチームでよかったと思います。

そして、彼女の仕事ぶりを見て、改めて自分の強みや弱みを知ることになります。「ここは編集者としての長所だな」「これは自分には向いていない」と、ぼんやりと思っていたことを確信に変えることができました。『世界は夢組と叶え組でできている』の中でも、「(夢組と叶え組は)組み合わせてチームになるといい」とありますが、そのとおりだったわけです。

(カツセさんとサクちゃんも、まさに「夢組と叶え組の名コンビ」なので、こちらの対談もぜひ。)

数年前に加藤貞顕さんが飲みの場で「カッキー(柿内芳文)とか佐渡島さんと一緒に編集して、すごく編集力が上がったんだよ」と話していて、当時はそんなものかな? と思っていたんですが、徳さんとの仕事でついにそれを実感することができました。

というわけで、『世界は夢組と叶え組でできている』という本と、その制作の経験は、今後の自分の編集スタイルにも大きな影響を与えることになりそうです。

これからは、いろいろな編集者とも組んで仕事をしてみたいと思います。『世界は夢組と叶え組でできている』の最後にあるように、「自分のため」と「誰かのため」をくり返してすすむために。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?