風土ツーリズムのススメ
内山貴之
ほとんどの方ははじめまして、になります。内山貴之と申します。普段は南西諸島が専門の南西旅行開発という旅行会社でツアーの企画・実施をしつつ、島根県の離島海士町に余白探究集団という会社を作って古民家を改修したスペースの運営や、島の観光・発信のお手伝いをしています。
新型コロナの感染が拡がって以降、旅する側にも責任ある振る舞いが求められるようになりました。そうでなくても”SDGs”という言葉が飛び交い始めたご時世。観光が全面ストップする中、これからの旅の形や価値が世界中で問い直されています。
そんな中特に欧米を中心に、コロナ後の旅行の形態として”サステナブル・ツーリズム”が注目を集めています。特にCO2排出が大きい航空便を使うことには「飛び恥」と揶揄され、近距離移動はKLMなど航空会社自身が鉄道利用を促し提携する動きも始まっていました。
一方の国内の状況に目を転じると、自分自身離島が専門ということもありますが、環境面とは別に気になっていることがあります。それは、旅の目的地である地域がいつまでも旅行者を受け入れられるくらい元気であり続けられるだろうか?ということです。
その場所のその場所らしさというのは、とても繊細な組み合わせで保たれているものです。例えば集落のあのお店でしか買えないパンが出てくる朝食など、お店が1軒なくなるとたちまち損なわれてしまうその場所らしい暮らしの光景は、意外と多いのではないでしょうか。集落のお店がなくなってしまったら、島の町のスーパーで買ってくるパンになってしまって、そこにだけあった違いがなくなってしまう。
多様な目的地がなければ、旅はつまらなくなってしまいます。旅人を受け容れてくれる集落の暮らしが失われずに続いていくことが、旅の持続可能性に大事なのではと思っています。
間もなく奄美・沖縄が新しく世界自然遺産に認定されそうです。自然は、人間の暮らしから独立して存在しているわけではなく、そこに暮らす人の生活に影響を及ぼし、人の生活もまた自然に影響を与えています。土地の風土とはこのような相互作用全体を言い表す言葉で、この風土を住む人・訪れる人がともに大事なものとして認め、ともに味わうことがいつまでも続けられる旅につながっていくのではと考えています。
こんな考えから、海士町の勝手口「あまって」と島の生活文化を伝える「しまのま」というサイトを企画・運営しています。
自分の普段とは違う異日常に飛び込み味わう旅、風土ツーリズム。コロナが落ち着いたあとの次の旅でぜひトライしてみてください。
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内山貴之/学生の頃から国際協力に携わりたくてJICAへ就職。その後国際協力は仕事でなくライフワークで取り組むことにし、実家の南西旅行開発を継ぐ。昨年までバングラデシュで小学校を建設・運営。2017年に余白探究集団を創業。
南西旅行開発株式会社
https://www.south-west.co.jp/
株式会社余白探究集団
https://yohakutankyu.jp/
あまって
https://amatte.jp/
しまのま
https://shimanoma.jp/