オンライン MEET UP! レポート#26
こんにちは。
すっかり寒くなって参りましたね。
みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
11月のオンラインミートアップレポートは、インターンの山口可奈がお送りいたします。
第25回目は、「渋谷のひみつ基地で、何して遊ぶ?」ー「言葉の探検隊 入隊のお誘い」をテーマに清水麻衣さんと、田辺裕子さんをゲストに迎えてお話を伺いました。
一人目のゲストは「渋谷バレー」という多様性をテーマにしたスペースを運営されている清水麻衣さんです。
渋谷バレーとは、渋谷区のどこかの屋上にある住所非公開の大人のひみつ基地です。これまで渋谷区のスタートアップ支援事業や、渋谷QWSチャレンジ7期生事業に採択されて来ました。
清水麻衣さん自身も、渋谷生まれ渋谷育ち。大学を卒業し、報道番組やドキュメンタリー番組を作る映像制作会社に5年間勤めていました。現在は実家の不動産業に従事しています。
EDIT LOCAL LABORATORYに入ったきっかけは、影山さんの著書である「大人の作る秘密基地」に関する記事を読んだ影響からでした。記事にインスパイアされたことが、現在の渋谷バレーの運営に繋がっていきました。
文中に登場する「秘密基地とは『生きるための場』」という言葉が印象に残っているそうです
昨年の7月まで、屋上では「SHIBUYA valley’s talk」という多様性をテーマとしたトーク配信番組を放送していました。番組では、結婚制度に囚われないパートナシップの実践者を紹介したり、福祉とクリエイティブを掛け合わせてお仕事をされている方へのインタビューを配信してきました。
そして、今年の5月からは、動画配信ではなく、ひみつの交流スペースにシフトしました。
三密にならない「非密」、
場所非公開の「秘密」のふたつ
の「ひみつ」を掛け合わせて、「大人のひみつ基地」と呼んでいます。
大人の秘密基地では、ヨガや瞑想、植物を栽培してサンドウィッチパーティで収穫祭をしたり、ひみつの遊園地という親子向けのイベントや、キャンプやジャズセッションを行う等、新しいひみつの文化発信基地として活動しています。
これからは、新しいエンターテインメントの形を作るサービスや、
新しい文化芸術体験や活動家を支援するサービス、
新しい渋谷の観光(地域体験)をもたらすサービスを
渋谷のひみつ基地からもっと生み出していきたいと考えているそうです。
清水さんは、自分にとってのひみつ基地は「心の解放区」だと語ります。
金子兜太さんの著書で提唱される「定住漂泊者」という考え方では「とどめがたい漂泊心を、定住者こそバネにして創作のエネルギーに変えていく」という生き方を唱えています。清水さんは、定住漂泊者にこそ、ひみつ基地が必要なのではないかと考えているそうです。
秘密基地は「冒険心をかきたてる」冒険心をくすぐる企てをもたらしてくれます。
子供のころ、大人に隠れて企てていたようなひみつの気持ちを、大人になって実現させる楽しさを再び思い出させてくれるのです。
また、秘密基地では「ひみつの仲間」ができます。
ひみつの仲間と、唯一無二の共有体験を積み重ねることができ深い信頼関係を築くことで心の解放区のようなコミュニティが出来上がってきていくのです。
清水さんは、コロナで閉塞感がある時代だからこそ、このように心を解放できる場所が必要ではないかと考えています。これからの時代に、人と人とのつながりをさらに大切にしていきたい思いがとてもよく伝わってきました。
二人目のゲストは田辺裕子さん。「ラボラトリ文鳥」という研究所を運営されています。
「ラボラトリ文鳥」は、2020年1月に田辺さんともう一人の友人で設立され、現在は4人で運営しています。運営メンバーの専門分野は、演劇、言語、歴史、民俗などです。会社員をやりながら研究活動をしているひともいます。田辺さんは、大学院に籍を置きながら、財団が運営するアートギャラリーでお仕事をしているそうです。
「ラボラトリ文鳥」は、立ち上げ当初は上池袋のくすのき荘のメンバーとして活動をはじめました。キャンパスの中では同じ研究分野の人同士でしか話すことありませんが、「暮らしに根ざした研究活動」と模索したいと思い、学内だけで勉強会を行うのではなく、キャンパスの外の人とも勉強会をしたいと夢を描いて活動を始めたそうです。ひょんなことからその半年後には、くすのき荘からすぐ近くの北村荘という一軒家をシェアスペースとして運営することになっていました。
北村荘は、山田荘、くすのき荘の後に続く「かみいけ木賃文化ネットワーク」の3軒目になります。
北村荘は、別名「探求→探究する家」です。対話を通して、何かを探し求め深める活動を行うコミュニティづくりを行っています。生活の中で手足を動かして考えることをコンセプトとしており、対話型ワークショップ、DIY、地域研究などを展開しています。
活動をはじめて一年ですが、メンバーでゆっくりとDIYを進めた北村荘は、徐々に居心地の良い空間になってきているそうです。
DIYワークショップは、単純に「よしやるぞ!」といって始めるのではなく、「どうしたいか考えながら少しずつやってみる」ということにフォーカスを当てて企画しています。北村荘のどこでどんな風に過ごしたいかを、オノマトペを利用して表現し集計するなど、イメージを分かりやすく共有する工夫をしてきました。
また、庭づくりでは、家を飛び出して原宿や下北沢まで足を伸ばし、散策と対話を通してイメージを練りました。人間のための場所ではなく、植物や動物がゆったりできるスペースとして作り上げていく予定です。
EDIT LOCAL LACORATORYとコラボして、隔週で「英語でつぶやくラボ」というラボも行っています。日本語のツイートを参考に、分かりづらい日本語を簡単な日本語に言い換える「言いたいことダウン」を行い、伝わりやすい英語に直していくというものです。日本語を日本語に置き換えることで、自分の言葉や思考を振り返る機会にもなります。
ゆるいけれど、頭を使う時間として有意義な活動となっています。
田辺さんは、EDIT LOCAL LACORATORY に参加し始めた2019年ころをふりかえり、会員向けに書いたコラムについてもお話してくれました。
田辺さんには、義務感や生産性は保留にして、大切に言葉を探す場所が必要だと思い、そういう「ローカル」もあるのではないかという思いがあります。「こうあるべき」ではなく、別のやり方を探す探求の関係を少しでも増やしていくことが良いのではないか、という気持ちを大切にしているそうです。
探求途中の考えについて、箇条書きで言語化して下さいました。
・まだ理解できないことについて継続に対話する知的安心感
・「この人だったらこの話してもいいかな」「この場だったら自分を出しても大丈夫かな」
・言葉が通じること、あるいは通じないことを大切にする
・ネガティブなことをネガティブに固定しない
・ポジティブなこともポジティブに固定しない
・「言葉のカタストロフ」に備える、事前復興としての「演劇」
最後に、言葉の探検隊の誘いがありました。
活動軸としては
・探求/探究と対話のコミュニティ(シェアスペース・オンライン)
・学校現場で探究学習の実践(都立高校、熊本県・甲佐町ほか)
・歴史と想像の町歩き(東京・上池袋ほか)
といったものが挙げられます。
気になる方は、ぜひ参加してみてはいかがでしょうか。
今回は、ゆっくり人と対話ができる新しいコミュニティの場について、とても有意義なお話を沢山して頂きました。コロナ禍で希薄になってしまった人と人、地域と人などのつながりを再生し、より生きやすい人が増えていくようなコミュニティを、これからより多くの人に届けることができたら、と強く思います。様々な形の「人が安心できる場所」について、深く考える良い機会になりました。
それでは、今回のレポートはここまでで終わりにしようと思います。
インターンの山口でした。ありがとうございました。
文=山口 可奈