オンライン MEET UP!レポート#28
こんにちは!インターンの佐藤つぐみです。
1月のオンラインMEET UP!のレポートをお送りいたします。
第28回のテーマは「島根県の作り手と使い手をつなぐ役割・戦略PRの役割」。
ゲストは島根県松江市の「出雲かんべの里」でクラフトショップ「いろは舎」を立ち上げ、運営・バイヤー・プロデューサーとして活動されている川本珠子さんと、雑誌・書籍の出版や編集者・クリエイター育成を行うメディアから転職し、現在は都内のPR会社でアーティストコレクティブなどのPRに関わっている角本栞さんです。
1人目のゲストは川本珠子さん。もともと東京で10数年グラフィックデザイナーとして活動されており、現在は地域おこし協力隊として島根県松江市に移住されています。
地域おこし協力隊着任のきっかけは「しまコトアカデミー」
地域おこし協力隊に着任するきっかけとなったのは、3年前に行われた「しまコトアカデミー」。都市部在住者と島根県を結び、島根県や地域に対する自分の関わり方を見つける講座です。
しまコトアカデミーで島根県江津市の窯元・嶋田窯や、島根県雲南市のものづくりの現場を訪ねるツアー・名工探訪の活動に関わり、島根県を好きになりました。
もともと、工芸やいつの時代にも長く愛されるものが好きだったそう。
一方で、日本の優れたもの、優れた技術はなくなりつつあります。そのことに対する危機感を持ってはいるものの、自分が関わるタイミングはいつなのか。
グラフィックデザイナーとして10数年活動したタイミングで、自分のスキルを活かして工芸の分野にアプローチするため協力隊に応募し、着任されました。
いま取り組んでいることは「いろは舎」の運営と松江工芸の情報発信
現在取り組んでいることは、セレクトショップ「いろは舎」の運営です。
いろは舎はNPOが運営する、松江市の指定管理施設「出雲かんべの里」の一角にあります。
協力隊着任直後に任されたいろは舎でしたが、商品を置くスペースはあっても、商品は何もないというところからのスタートでした。
そこから交渉を重ね、現在では30人ほどの作家さんがいろは舎に作品を置いています。
出張販売や松江工芸全体の情報発信にも力を入れています。
昨年は、島根県指定有形文化財である興雲閣(こううんかく)のクリスマスイベントで出張販売をしました。
松江工芸、CRANUMA(くらぬま、クラフトの魅力にはまる=沼にはまる)として、FacebookやInstagramで情報発信をしています。
これから取り組んでいくことは集客、活動支援、メディアの立ち上げ
これから取り組んでいきたいことは、かんべの里への集客、作家さんの活動支援、メディアの立ち上げ。
かんべの里の現状の課題は集客です。
かんべの里は松江市から車で15分ほどかかります。徒歩で行くには難しく、心理的・物理的距離があります。
そこで、親子世代をメインターゲットとし、1日で周辺の森、工芸、歴史のアクティビティを楽しめるパッケージを作ります。
作家さんの活動を支援するために、工芸の材料である養蚕、三椏(みつまた)、綿花を守るプロジェクトを進めます。
これら材料の生産者減少も深刻な課題ということもあり、作家さん、生産農家、お客さんの相互にメリットが生まれる仕組みを作ろうとしています。
現在、Webマガジンの立ち上げの最中。
記事を掲載するだけではなく、松江市の作家さんの作品をECサイトで購入することができる仕組みを整える。
さらに、松江市をはじめ地方ではWebよりもアナログが強いことを踏まえ、フリーペーパーを作り、それに広告を載せて収入を得る計画を立てています。
行動に移して、複数の業界のプロに
自分が思いつくアイディアはもうすでに人がやっています。しかし、行動に移す人は一握りしかいません。
川本さんは今の松江工芸の分野で、深堀りして行動しているのは自分だけだということを強みにしたいとおっしゃっていました。
1つのプロフェッショナルになるのではなく、複数の業界の跨いで知識のある人になりたい。
東京でのグラフィックデザイナーの活動では、上には上がいること、いつか自分に仕事が来なくなったらどうしようという不安から来る息苦しさを感じていたそうです。
松江市に来て、元々生業としていたデザインと小売りの世界、情報発信の世界に踏み込むことができ、仕事に対する向き合い方の選択肢が増えました。
東京では、日々切磋琢磨している人たちが生き残っていくように感じています。
一方で、地方では、収入は少ないが緩やかに生活することができます。
経験がない人でも挑戦しやすい環境があるところが、地方の魅力だとも言えます。しかし、地方では分業制では働けず、マルチに仕事をしなければならないのでその難しさは感じています。
2人目のゲストは角本栞さん。以前お勤めのメディア編集者育成の講座を長年担当されていました。
掲げている看板を離れてもコンテンツが広まる仕組みの重要性を感じる
編集者やライターになりたい方だけではなく、一般の企業に勤められている方にも編集のスキルを求められるようになってきています。
講座に参加された方のなかには、企業の広報の方などもいらっしゃいました。企業としてストーリーを発信することの重要さを感じます。
プロジェクトとして、イベントやアワードを開催しました。イベントや講座の過程や裏側を発信するにも興味がありました。
そういった活動のなかで、メディアを離れてもメディアの価値を感じるような企画を作ること、雑誌を知らなくてもコンテンツに触れる仕組み作りの重要性を感じてきたそう。
モノの広め方の変化、PR会社の変化
現在のPR会社では、情報の価値の発掘→発信→拡散までが領域。従来のPRは、テレビやネットニュースに出て話題になり、それが広がりブームになるイメージがありました。
しかし現在はメディアの多様化、デジタルが普及し、ニュースリリースを出したり記者会見をすることだけがPRではありません。
現在のPRにおいて、メディア露出はその一部。SNSやオウンドメディアを活用するなど、様々な要素から成り立っていると思います。
新聞や雑誌、テレビなどのマスメディアもそうですが、モノ1つとヒト1人、1対1のコミュニケーションをするのが、現在のPRです。広告ではなく、お金をかけずにできる。使わない手はありません。
重要なのはモノやコトの本質的な価値を磨くこと
たとえば、メルカリの読むレジ袋。
自社のストーリーを公開したい企業が増えているなか、メルカリはレジ袋が有料になったタイミングでレジ袋に小説を書く企画を実施。伊坂幸太郎さん、吉本ばななさんなどの小説家と「モノ×物語」をテーマにコラボ。
本来使った後に捨てられるものに価値を付けた事例は様々なメディアに取り上げられていました。今はアーティストコレクティブのPRに関わることも多く、企業や地域に眠るクリエイティブな活動を世の中に広く知ってもらいたいです。
次回もお楽しみに!
インターンの佐藤でした。
文=佐藤つぐみ