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センチメンタル夏至
昼間の熱のこもった庭のかえるたちが、賑々しく、けれど何とも涼しげに鳴き交わす6月の夜。
原宏之が他界した夏至の日が再び巡ってきた。
朝に夕に思い出しては、鼻がツンと、胸がぎゅっとなり、おかしみ溢れるエピソードの数々を懐かしんではクスッと笑みがこぼれて……
そんなことをくり返しているうちに3年も経ってしまっただなんて、ありきたりだけど夢のようだなと思う。
彼が愛猫のへいちゃんとともに眠る場所に、いつものように手を置いて話しかける。
(たいていは、けんが相変わらず食いしん坊で、お風呂ぎらいでね……とか話している 笑)
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彼の大好物で、お土産にすると決まって上機嫌だった豆大福をたくさん求めて、家族と食べた。
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どうにも力の入らない、こんな毎日でいいのだろうかとしょっちゅう落ち込み、立ちすくみながらも
これほど悲しくて、会いたいよといつまでも思える人が伴侶であったことの幸せに温められている。
「人を笑わせたり、喜ばせたりするのが大好きなところ、それが君のほんとうにいいところ」
そう言い続けてくれた声に、生かされているなと思う。
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一緒にいた時にはさほど話題にしなかったし敢えてじっくり話し合う習慣もなかったような、音楽や文学や、古の誰かの人生を通して、不思議と響き合っているように感じられることがある。単に、彼を通して知ることのできた世界を今さらながらそろりそろりひとり歩きしている気分なのだろうけれど。
もっと話したかったな。教えてほしかったのになと思いながら、積み木を積むように、自分の本棚📚を少しずつ作ってゆけたらいいな。
原の旅立ちの日を忘れずに、送られてくるいくつもの優しいお便りに、ありがたいなぁとじーーんとして、心で手を合わせています。
私の長年の「推し」である井浦新さんが、鬱蒼とした美しい森の写真を添えて、Instagram に書いていた。
明日は夏至かぁ
晴れても雨でも太陽の軌道を意識して自然に感謝して
季節の分かれ目を寿ぎながら過ごしたい
どんな天気であっても、この夏至の日を過ぎると少しだけ心が軽くなる。
去年は思いもよらないやり方で(ほんとうに🫢)「元気に島に行ってるよ」と知らせてきたことを思い出し、思わずほっこりした。
そんな夏至の朝何気なく手に取った、うみがめの生と、大きな大きな生命を詠った管さんの詩が素晴らしい。
波打ち際で足元の砂が攫われてゆくように、ひりひりする心を優しく撫でる。
全部が、そしてもちろん全体としてこそ素晴らしいのですけれど、特に大好きなところを引かせてください。
しまこ 管啓次郎
〜 途中略 〜
いわずと知れた浦島伝説の、これはひとつの異聞です、
言い知れぬ帰郷のさびしさに終わる嶼子(しまこ)の話を、これ以上
語るのはやめましょう、終わりはあなたに
まかせるとして、覚えておきたいのは
海亀、転じてもっとも優美な美女の、
あでやかで色めいた踊り、水中の、
その美しさはたとえ一瞬でも、
三百年後にはじまる永劫の孤独をもって
贖うに足る、嶼子もたしかにそう思ったのです、
みずから進んで嬉々として騙されたのです、
しまこよ、しまこよ、そうでしょう?
〜 中略 〜
このように海亀は一部は大地からなっており
そのために産卵の時期には島に帰るのだ
(ずっと海で生活することはできない)
海亀はその本性により使者、海と陸をむすぶ
それは生きた乗り物(小舟)でもある、恋人たちを運ぶ
怒らせると怖い、敵をせんめつする
ときにはそのまま姿を変えて、島として生きはじめる
生命と鉱物が果たす同型性
こうして
ホヌに守られて波間に浮かぶとき
私たちは太古とおなじ時間を経験する
島々へと私たちが分散するまえの時だ
海亀はその本性により死者の魂
長いときにわたる多くのたましいの集合
ただしその死者とは人間に留まらない
数えることのできない巨大な魂に守られて
私たちは新しく生きる
海亀の子のように
おびただしく生まれ、
死に、
また生きる
しまこ
お帰りなさい
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一日の終わり。
Answer me, my love… とジョニ・ミッチェルを口遊み走っていたら、大きな大きな虹🌈✨
思わず車を停めた。
また一年、いつも散歩した君の大きな背中を追いかけるように、君を心に、生きてみるよ。