チャットGPTを活用した「伝わる」記事づくり[後編] ヒトがこれから問われる力
こんにちは。エディマート代表の鬼頭です。
AIを活用した小説が国内の文学賞を受賞したり、AI生成の画像が世界的な写真展で賞を取ったりするなど、今AIはクリエイティブ業界に大きなインパクトを与えています。
そんななかチャットGPTは、クリエイターの誰もが気軽にふれられるAIとして、これからの付き合い方を思案している人も多いことでしょう。
前編では、「伝わる」コンテンツづくりを得意とする当社が、ライティングにチャットGPIを活用できるか検証しました。
後編では、ヒトである私たちの力の入れどころと、AIの特性をふまえたチャットGPTの活用法についてまとめてみます。
1.AIの弱点「真偽不明」に対するヒトの力の入れどころ
新聞や情報誌、企業のオフィシャルHPなどのコンテンツを手掛ける当社が、チャットGPTをテスト的に使って真っ先に感じたのが、「真偽不明でそのまま世に出せない」ということ。
この弱点から見えてきた、ヒトが力を入れるべき2つの力を紹介します。
◯検証力
「検証」とは、実際に調べて証拠だてること、正しいかどうかをさまざまな角度から検討すること。
エディマートのコンテンツづくりにおいても欠かせない工程です。調べ書きなら正しい情報源にあたり、さらに複数のソースを照らし合わせて事実か確認。そもそもソースが弱い場合は、専門家を監修につけて正確性とともに権威性を高めることも。また最終工程では、その仕事にまったくかかわっていない第三者の目で校正・校閲を実施します。
ライティングというと、構成力やワードチョイスなど「センス」の部分で評価されがちですが、これからは必ず、正確性を担保するための検証力が問われることでしょう。
◯状況観察力
AIには「学習」の工程が必要です。チャットGPTの公式サイトに、「2021年以降の世界や出来事に関する知識は限られている」と書かれているように(2023年5月現在)、インプットがあってはじめて、AIにとっての「今」が更新されます。
その点ヒトは、自分の意志で「今」を更新することができます。だからこそ、常に社会のトレンドにアンテナを立てておくのは必要不可欠。もっと言えば、昨日のトレンドを追いかけていては遅く、リアルタイムで世の中をウォッチするぐらいの姿勢が求められていると感じます。
場の空気を読むことも、AIにはできません。「読者と作者が同じ空気感を共有できる」ことも、優れた文章に欠かせない要素です。積極的にコミュニケーションをとったり、体験したりすることで、空気を読む力を磨いてみてはいかがでしょうか。
2.AIの弱点「心に響かない」に対するヒトの力の入れどころ
それっぽいことを美しくまとめるものの、真実は不明。ヒトが書いたようでどこか違う不気味さ。なぜか心に響かない──チャットGPTが生成した文章に対して、私はこんな感想を持ちました。
「伝わる」コンテンツを大切にしている当社として、心に響かない文章は大問題です。
このことをふまえると、今あらためてヒトには下記が問われています。
◯エモーション
ヒト(受け手)は無意識に、創作物の向こうにいるヒト(作り手)を感じ取っています。チャットGPTの文章がどこか不気味な理由の一つが、創作物の向こうにヒトがいないから。
当社のオフィシャルHPにはこのように謳っています。
過度なエモーションは不要です。ほどよくエモーションが加わった文章は、人間味や熱量がそこはかとなく感じられ、受け手の心を動かします。
エモーションの源泉はコミュニケーションです。積極的にヒトと交流し、人間味や熱量を感じ取り、文章に加えていきましょう。
ちなみに、チャットGPTに「情熱的に伝えるコピー」とオーダーしたら、文末に「!」がついただけの文章が生成されました(笑)。
◯エスプリやウィット
マーケティングでも使われる「ツァイガルニク効果」というものがあります。完成や完結した物事より、不完全や未完結の物事のほうがヒトの心に残るという心理現象です。
この現象に照らし合わせると、チャットGPTの文章が心に響かないのは、“ある意味“完全だからでしょう。
相手が変われば「嫌い」が好きの表現になったり、「いらない」が欲しいの意味になったりと、ヒトはやっかいな生きものです。
あえてズラしたり、裏をかいたり。文章にエスプリやウィットを利かせながら心に響かせるテクニックは、しばらくはヒトの専売特許になりそうです。
3.チャットGPTをライティングで使うとしたら
「世の中に出す文章としては」使えないチャットGPT。裏を返せば、「世に出す前の素材として」は使えそうです。
アイデアラッシュには、これほど優秀なパートナーはいません。たとえば「介護の本の特集案」をオーダーしたら、5つのアイデアを即時に返してくれました。
数多く、スピーディーにアイデアを出すことが得意な一方で、プライオリティをつけるのは苦手なよう。
やはり、あくまでも「案」「仮説」ととらえ、ヒトの検証力で補っていくべきでしょう。
チャットGPTが生成する文章が「心に響かない」なら、心に響く必要のない仕事をさせるのも手です。
たとえばカタログのベースフォーマットの作成など。試しにチャットGPTに、「飲食店を紹介する記事の構成」と入れたら、
と返してきました。
あとはこちらを雛形に、ヒトの手で、正確な情報とエモーショナルな感想を入れていけばOK。AIのAIらしい使い方ではないでしょうか。
アイデアラッシュにしても、ベースフォーマットの作成にしても、必ずヒトの手で仕上げてください。そのまま世の中にリリースするのは危険です。
4.後編のまとめ
いかがでしょうか。後編では、ヒトである私たちのライティングの力の入れどころと、AIの特性をふまえた活用法をまとめてみました。
ライティングにおいてもAIは無関心でいられない時代になりました。大切なのは、恐れるのではなく、特性を理解して便利に使うこと。優秀なパートナーとして、作業の効率化をはかりながら、ヒトが磨くべきポイントに向き合っていきましょう。
また、ここで挙げたAIの弱点は、おそらくすぐに改善されるのではないでしょうか。チャットGPTの文章が、不気味の谷を越える日も遠くはありません。
パートナーでありながら、ライバルでもあるAI。その動向は常に注視しておおきたいですね。