読売新聞#20240923

 記憶「紙が有効」研究も 

   デジタル操作「認知負荷」高く


 学習の定着には、デジタルよりも紙を使った方が有効だとする研究データがある。専門家は「まずはデジタルの長所、短所を検証することが必要だ」と指摘している。
 東京大などの研究チームは、日常的なスケジュール管理を再現する実験を実施。被験者を3グループに分け、①紙の手帳にペンで書く②タブレット型端末に専用ペンで書く③スマートフォンに入力する——の3つを比較した。その結果、紙の手帳にスケジュールを書き留めた方が、電子機器を使う時よりも短時間で記憶できることがわかった。手帳に書き込んだグループの脳の状態を見ると、言語、視覚、記憶に関わる領域の血液増え、活動量増えていた。
 研究チームの酒井邦嘉・東大教授(言語脳科学)は「紙の本は(情報が載っている)位置関係など、記憶の手がかりが豊富にあるが、デジタル画面では限定的だ。学習効果の根拠がないままデジタル活用の議論が進めば、学力低下を招きかねない」と危惧する。
 群馬大の柴田博仁教授(認知科学)によると、子どもにとってデジタル機器の操作は、思考を中断させる「認知負荷」が高くなる傾向が見られるという。柴田教授は「デジタル教科書のデメリットを含めた検証が足りておらず、デジタルだけに偏るのは時期尚早だ」としている。(福元洋平)

21年3~4月に文科省が募集したデジタル教科書に関する意見
・(デジタル教科書に)学習効果が上がるという根拠がない。
・視力や姿勢など健康面への影響が懸念される。
など

日本私立小学校連合会が挙げた懸念
① 考える力を十分に養えるのか?
② 動画や音声で子どもたちが体験したつもりになり、子どもの学びや発達の妨げとならないか?
③ 健康面に問題がないか?


<デジタル教科書のメリット・デメリット その1>

メリット】
・「主体的・対話的で深い学び」が実践できる
・配慮が必要な子どもたちが学びやすくなる
・印刷コストの削減
・教科書の改訂サイクルの短縮
デメリット】
・教員のICTスキルやデジタル教科書の指導力向上が急務
・学校や家庭の通信環境整備が必要
・子どもの健康面へ配慮が必要


<デジタル教科書のメリット・デメリット その2>

【メリット】
・画面を拡大できる
・教科書・マップ・ふせんにペン・マーカーで線を引いたり、考えを書き込んだりできる
・教科書に書き込んだ内容を保存・表示できる
・音声読み上げ機能で詩の朗読や、英語の発音を聞ける
・画面上でコンパス・分度器などのツールを使える
・教科書に関連した動画やアニメーションを閲覧できる 
など
【デメリット】
・使用中に学習者用コンピュータの故障や不具合が生じる可能性がある
対策:予備用の学習者用コンピュータを準備する
・児童・生徒が授業と関係のない内容を閲覧して授業中の集中を欠く可能性がある
対策:学習者用デジタル教科書を使用していないときの扱い方について指導を行う
・視力低下や眼精疲労など、児童・生徒の健康面に影響が出る可能性がある
対策:姿勢に関する指導を行うほか、学校医と連携して児童・生徒の状況確認を行う


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